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マージ運送会社の危機2

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 マージを拘束している男は、少しちゅうちょするようなそぶりを見せてから、トビーを見つめた。トビーは男が交換条件を飲むとふんだようで、ゆっくりとマージたちに向かって歩き出した。

「やめた方がいいよ。この子は風のエレメント使いだ。私と代わった途端、アンタは吹っ飛ばされるよ?」

 何とマージは、トビーの作戦を敵に話してしまったのだ。トビーは叔母の言葉に思わず怒りの声をあげた。

「マージおばちゃん!何言ってんだよ!」
「トビー。私は大丈夫だから。早くお客さんの荷物を届けに行きなさい」
「こんな奴客じゃねぇ!マージおばちゃんをいじめる悪い奴だ!」

 トビーは今にも泣き出しそうな顔で叔母であるマージをにらんだ。マージは慈愛のこもった微笑みを浮かべて答えた。

「トビー。私は貴方たちを信じている。さぁ、行って来なさい」

 トビーは悔しそうにくちびるを噛んだ。この状況では男の指示に従うしかない。男はプリシラたちが荷物を運ぶのに同意したと見て、プリシラに何かを投げてよこした。プリシラがキャッチすると、紙で包んだ小石だった。

 小石を包んだ紙には、ウィード国のはしにある、海に面した街の住所が記されていた。この荷物を外国にでも輸出するのだろうか。プリシラはいぶかりながらも、男に向かってうなずいた。

「この荷物を港に持って行って、一番早く港から出発する船に乗せろ。荷物の受け取り表が、この女との交換条件だ。さぁ、さっさと行け!」

 プリシラはなおもマージの側に行こうとするトビーの腕を引っ張って外に出た。プリシラは浮遊魔法で木箱をゆっくりと持ち上げた。

 タップは地面に降りると心得たように大きくなってくれた。プリシラはトビーと自分にも浮遊魔法をかけて、タップの背中に乗った。トビーが一番前で、次に木箱、プリシラは木箱を落とさないように足ではさんだ。

 プリシラたちの準備が整ったのを感じ取ったタップは大空に飛び立った。

 プリシラは空を飛びながら必死に考えた。あの男はマージを人質にとってまで、この荷物をウィード国の外に出したいのだろうか。しかも船の行き先はどこでもいいような口ぶりだった。

 船の荷物係も、あて先不明の荷物など困ってしまうだろう。プリシラたちだって受取人が誰かもわからないから、荷物が自分で行き先を言うしかない。プリシラは浮遊魔法で木箱を浮かせた時、ある違和感を感じた。

 プリシラは配達屋の仕事をして、たくさんの荷物を浮遊魔法で持ち上げた。だからわかってしまうのだ。荷物の中身が何なのかという事を。衣類はかさばるが軽く、書物はみっしり詰まっているから重い。

 先ほど持ち上げた木箱の中身は、箱に対して中身はそれほど詰まっていないのに重かった。しかもわずかだが動いたのだ。

 おそらく木箱の中身は人間なのだろう。あの男はどうしても木箱の中の人物を、ウィード国外に逃したいのだ。

 しかし何故男も一緒に来ないのだろうか。男もマージも一緒に、プリシラたちと来ればいいではないか。それなのに男はマージと会社に残った。何かわけがあるのかもしれない。
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