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大きな壁

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 リベリオは黒衣の魔女の次なる攻撃に備え、風防御ドームを解除しないまま彼女に質問した。

「黒衣の魔女よ、何故貴女は俺を攻撃するのですか?」
「この間の社交界、妹のエスコートをありがとう。でももう結構よ、妹にこれ以上関わらないで」

 社交界。妹。エスコート。リベリオは頭の中をフル回転させた。リベリオがエスコートしたのは大好きで仕方ないプリシラだ。目の前の恐ろしい魔女が、天使のようなプリシラの姉だというのか。

 リベリオはハッとした。そういえば、自分の事をあまり話さないプリシラが、姉がいると言っていた。美人で優しい自慢の姉なのだそうだ。

 確かに黒衣の魔女は、そんじょそこらでお目にかかれないほどの美女だ。だが何とも禍々しい美しさなのだ。

 そういえば三年ほど前、社交界である令嬢が話題になった。初めて社交界に参加する令嬢は慣例により、純白のドレスを身につける。だがそれを嫌がって、真っ黒なドレスを着て参加した令嬢がいた。

 その令嬢はまれに見るほど美しく、周りの好奇の目をものともしなほど凛としていたという。その令嬢の名はベルニ子爵家のエスメラルダ。

 これでつながった。どうやらリベリオは、プリシラの姉エスメラルダによく思われていないらしい。

 リベリオは何とか汚名を返上したかった。これから義姉になるかもしれない女性だからだ。

「ああ、プリシラのお姉さまですね。初めまして、俺はリベリオといいます」
「ええ、知っているわ。貴方は相当な女ったらしだって言うじゃない。妹には相応しくないわ。私の攻撃魔法でこの世から消えるか、妹の前から消えるか選びなさい?」

 どうやら会話の余地は無さそうだ。リベリオは張りついた笑顔を引っ込めて、厳しい顔で答えた。

「どちらもお断りします。俺はプリシラを愛しています」

 プリシラには言えなかった言葉が、悪魔のような表情の姉にはスルリと言えた。プリシラの姉は、ニヤリと笑って言った。

「そう、なら仕方ないわ。この世から消えなさい」

 エスメラルダは右手の人差し指を突き出して、手で拳銃の形を作った。指先に小さな火魔法が灯るのが見えた。次の瞬間、リベリオの風防御ドームにぶち当たった。

 リベリオの背中にヒヤリと冷たい汗が流れた。どうやらリベリオの魔法は、エスメラルダの攻撃魔法を防ぐ事ができたようだ。

 安心したのも束の間。エスメラルダは何度も指先から火魔法を発射した。その攻撃の正確さは、針一本たがわず、同じ箇所に当たっていた。

 このままでは風防御ドームが破壊されてしまう。リベリオはブルリと身体を震わせた。

 

 
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