最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

盛平

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リベリオの苦悩5

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 イヴァンはリベリオの事を煙たがり、手紙で要件を伝えるからすぐに帰れとおいかえそうとした。それをダニエラが止めて、お茶に招待してくれた。リベリオはようやく父が下宿している家に入れてもらえた。

 ダニエラはかいがいしく紅茶を淹れてくれ、クッキーも出してくれた。とても美味しそうなクッキーと、形がいびつで黒く焦げているクッキーだ。

 リベリオが綺麗なクッキーを手に取ろうとすると、すかさず父が制した。

「リベリオ、こっちのクッキーを食べろ」
「嫌ですよ。形が変だし、焦げてるし」

 親子のやり取りを、ダニエラはクスクス笑いながら言った。

「このクッキーはイヴァンさまが焼いてくれたのですよ?」
「ほら見なさい。危うく毒物を食べるところでした。この危険物は父上が食べてください。俺はダニエラさんのクッキーを食べます」
「何だと?!リベリオ!」

 リベリオと父の低レベルなケンカを見て、ダニエラは大笑いした。

 中々父に会いに来た理由を言えないリベリオに、ダニエラは気さくに話しかけてくれた。ついにプリシラの相談をすると、父は渋い顔で言った。

「リベリオ、お前はプリシラの事を何もわかっていない。プリシラは爵位が高い低いで人の見方を変えるような女性ではない」

 父の言葉にリベリオはホッとした直後、父が厳しい顔で言葉を続けた。

「だがな、リベリオ。プリシラはお前のような男は好きではないと思うぞ?」
「!。以前にも言ったではないですか、父上!俺はこれまでの態度を改めて、プリシラだけを思う、と」
「リベリオ、お前は何も理解していない。今のお前は、過去のお前の行いによってできているのだぞ?過去のお前は、自堕落な女ったらしだった。プリシラがその事を知ったらどう思うか考えるのだな。プリシラに愛を告白するのはその後だ」

 父はそれだけ言うとリベリオを家から追い出してしまった。リベリオは仕方なく空を飛んで帰る事にした。

 父の言葉は当たっているだけ、胸に応えた。父は伯爵という重い責務を長年続けていただけあって、人を見る目は確かだ。

 プリシラという女性は、きっと爵位の高さで人を見ないというのは当たっているのだろう。だが、プリシラがリベリオの過去を知ってどう思うだろうか。

 客観的に物事を考えてみよう。リベリオに愛を告白する女が現れたとする。その女は尻軽で男にだらしない女だ。その女が、もうこれまでの事は改める。これからは貴方だけを愛するから結婚してくれと言ってきた。

 無理だ。そんな女、とても信用できない。リベリオはプリシラに同じ事をしようとしているのだ。

 プリシラへの告白は、プリシラのリベリオへの信頼回復から始めなければいけないだろう。プリシラが、リベリオを信頼できる人間だと理解してくれるまで。
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