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プリシラの変化

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 タップはゆっくりと夜空を飛んでいる。姉のエスメラルダが拠点にしている城下町の宿屋まで送っていくためだ。

 ゆっくり飛んでくれているのは、プリシラとエスメラルダが会話できるようにだろう。今日のタップは本当にご機嫌だ。プリシラは苦笑しながら言った。

「タップ、今日は本当にご機嫌ね?ベルニのお父さまとお母さまをやりこめたのがそんなに嬉しかったの?」
『それもあるけどよ。それだけじゃねぇんだ。プリシラ最近、自分は出来損ないだって言わねぇ。イジワルな母親にすごまれた時だって堂々としてた。俺はそれがすごく嬉しい』
「タップ」

 プリシラは思わず目頭が熱くなった。タップはプリシラが自分の事を出来損ないというと、とても怒っていたのだ。俺の選んだ契約者は出来損ないなんかじゃない、と。タップはいつもプリシラの事をすごい奴だと言ってくれていたのだ。
  
 プリシラはポロポロと涙を流した。それを見たエスメラルダが驚いて言った。

「プリシラ、どうしたの?!毛玉にイジワルな事言われたの?!」
「違うの、お姉ちゃん。タップがね、私が最近、自分の事を出来損ないって言わないから嬉しいって言ってくれたの」
「まぁ!プリシラ!またそんな事言って!私の妹が出来損ないなわけないじゃない!」
「うん、うん。ありがとう、お姉ちゃん、タップ。二人はいつも言ってくれてたのにね」

 姉のエスメラルダと契約霊獣のタップは事あるごとに、プリシラは出来損ないなんかじゃない。素晴らしい存在なのだと言ってくれていた。だがプリシラが幼い頃両親から言われた、お前は出来損ないだ、という言葉の呪縛に、ずっとがんじがらめになっていたのだ。

 マージ運送会社に入り仕事をして、プリシラの気持ちに変化が起きた。プリシラは自分に対して自信を持つ事ができたのだ。プリシラは涙をハラハラ流しながら言った。

「お姉ちゃん、タップ。私ね、タップと一緒に働き出してから思ったの。私とタップが荷物を運ぶと、お客さんが笑顔になってくれるの。私はお客さんを笑顔にできた、お客さんを幸せにできたって思えるようになった。私は出来損ないなんかじゃない、私はいらない人間なんかじゃない。私は人を笑顔にできる、この世界に必要な存在なんだって思えるようになったの」

 エスメラルダはハッとした顔になり、泣きそうな笑顔になりながら言った。

「ええ、そうよプリシラ。貴女はこの世になくてはならない、たった一人の存在なのよ」
「当然でしょ?私はお姉ちゃんの妹だもの!」

 プリシラとエスメラルダはケラケラと笑った。タップが宿屋までもう少しだと言った。

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