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奇妙な客

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 プリシラとタップは草深い森の中にいた。客からの依頼の品を受け取るためだ。

 客は魔法使いから魔法薬を受け取って来てほしいと言っていた。これは元々トビーがやっていた仕事だったが、トビーは別な仕事が忙しいので、代わりにプリシラとタップがうけおったのだ。

 プリシラは今にも壊れそうな一軒家のドアを不安げに叩いた。しばらくして、中から長いヒゲの老人が現れた。魔法使いだ。魔法使いはプリシラを見て首をかしげた。

「今日はトビーじゃないんだな?」
「は、はい!マージ運送会社からまいりました。プリシラと申します。こっちは相棒のタップです」

 魔法使いは興味なさそうにうなずいてから、あごをしゃくった。中に入れというのだ。

 室内は異様な匂いであふれていた。タップはピイッと悲鳴をあげると、飛んで外に逃げてしまった。プリシラは鼻をつまみたいのを必死でこらえながら言った。

「お客さまの薬を受け取りに来ました」

 魔法使いの老人はフウッと深いため息をしながら答えた。

「この間、客から手紙をもらった。病人にはこの薬は効かないようなので、別な薬を処方してほしいと。じゃがな、わしはもうできるかぎりの治療薬を作った。今度のものが効かなければ、わしにはもう薬は作れん。客にそう伝えてくれんか?」
「・・・。はい」
「それとな、トビーにすまないと伝えてくれ。あの子は、客の依頼に答えようと、必死にわしのところにやって来た。だが良い結果は出せなかった」
「はい、伝えます」

 プリシラは深くうなずいてから、魔法薬の入ったビンをしっかりと受け取った。

 プリシラはタップの背中に乗って、一路王都に戻った。魔法使いから受け取った薬を、依頼人の客に届けるのだ。

 プリシラが今から向かう客も、トビーのお得意さんらしい。トビーは客の要望に一生懸命応えていたようで、客がよく効く魔法薬が欲しいといえば、トビーは文字通り飛び回って、腕のいい魔法使いを探して回った。

 魔法使いは今回で五人目なのだそうだ。トビーはまた魔法薬の調合ができる魔法使いを探さなければいけない。

 プリシラはふと、姉のエスメラルダを思った。姉ならばすごい魔法薬を作ってはくれまいか。プリシラは思い直して、かぶりをふった。エスメラルダは優秀な魔女だが、それは魔法を使う事においてだ。それ以外は不要として、魔法薬の類いは勉強していないと言っていた。

 そうこうしているうちに、プリシラは大きな屋敷の門の前に到着した。プリシラはトビーから聞いていた住所の場所にやって来て、大量の冷や汗をかいていた。

 この屋敷は、もしやパルヴィス公爵の屋敷ではないだろうか。パルヴィス公爵といえば、ウィード国王の親戚筋にあたる。そんな身分の方が、なぜトビーに仕事を依頼したのだろうか。プリシラは考えすぎてめまいがした。

 
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