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エスメラルダ待機中

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 エスメラルダはまんじりともせず、妹であるプリシラの帰りを待っていた。

 プリシラは仕事に行っている。つり目女の父親に手紙を届けに行っているのだ。

 本当ならばエスメラルダも一緒に行きたかった。だがプリシラは大丈夫だから待っていてと言ったのだ。

 妹にそう言われては待っているしかない。プリシラの持った書状を国王が聞き入れて、この森から国王軍が撤退すればそれでよし。もし撤退しなければ、その時はエスメラルダが城に殴り込みに行けばいいだけの話だ。

「その顔、何かよからぬ事を考えているな?」

 エスメラルダは声をかけられた方に振り向くと、ドリスが眉根をよせて立っていた。エスメラルダは、偉そうなドリスが好きではなかったので邪険な顔になった。

「考えてないわよ、そんな事。プリシラはやると言ったやる子よ?つり目はプリシラが戻るまで大人しく待っていなさい」

 エスメラルダは、心の中ではプリシラが心配で仕方ないのに、口から出る言葉はプリシラの事を信じているのだ。

 事実プリシラのおかげでドワーフとエルフの連合軍は和解交渉に応じたのだ。エスメラルダは不思議だった。プリシラが命がけで助けたドワーフの気持ちが変わったのは理解できる。だが、弟の復讐に燃えていたエルフのリーダーは、どうして気持ちが変わったのだろうか。

 エスメラルダは、プリシラが契約霊獣の毛玉と一緒に、エルフのリーダーの側まで行く事が心配だった。もしかしたらエルフがプリシラに危害をおよぼすかもしれないと思ったからだ。

 エスメラルダがプリシラの側に行こうとするのを、生意気にもチコとサラに止められたのだ。お姉さんが行くと、話しがややこしくなりそうだから、ここにいてくださいと言われた。

 しばらくしてプリシラが目を赤くしながら戻って来た。エルフに泣かされたのかと思い、エルフに鉄ついを食らわせてやろうと思ったが、プリシラは目に涙を浮かべて笑顔で言ったのだ。和解が成立した、と。

 エスメラルダがぼんやりとプリシラの事を考えていると、ドリスが顔をしかめて言った。どうやらまだいたらしい。

「エスメラルダ。お前は変わっているな?わたくしがウィード国の女王と聞いても、まったく態度が変わらない。わたくしが女王だと知ったとたん、チコは手揉みでわたくしにすり寄り、サラは顔を真っ青にさせて謝ったというのに」
「チコはそこつ者で、サラはビビリだからよ。私は王族が嫌いなの。特に貴女の曽祖父がね」
「?。ひいおじいさまが?何故だ?」
「貴女の曽祖父があんな事言ったから、妹のプリシラは捨てられたのよ」

 口に出すのもいまいましい。先先代のウィード国王が王族と貴族に向けて言ったのだ。国民の上に立つ者は、魔力に秀でていなければならない。それを満たさない者は国民の上に立つ資格がない。

 そのくだらない言葉を、エスメラルダとプリシラの両親はまに受けて、風のエレメントだけしか契約できなかったプリシラを捨てたのだ。

 エスメラルダは思い出したら腹の底が煮えくりかえりそうだった。涙ながらに自分を見捨てないでと叫ぶプリシラの幼い姿が脳裏に浮かぶ。

「何だと?プリシラの両親は、そんなバカげた言葉をまに受けてプリシラを捨てたというのか?なんと愚かな」
 
 お前たち王族が言い出した事だろう。エスメラルダはギロリとドリスをにらむと、彼女はふんっと鼻を鳴らして言った。

「ひいおじいさまが言ったのは、そういう意味ではない。ひいおじいさまは、国民の上に立つ者は日々努力をおこたるな、と言いたかったのだ。ひいおじいさまは魔力に優れていたからな。だから若い頃から魔法の修行に精進し、国民のために自らの魔法を使ったのだ。だがわたくしのお父さまは魔力が少なかった。手のひらに小さな火を灯すくらいの火魔法しか使えない。わたくしなどは、まるっきし魔力はない。だから身体中にジャラジャラと魔法具の宝飾品をつけているのだ。魔法などその者が持っている個性にすぎぬ。プリシラの両親に言ってやれ。プリシラは立派な奴だと」

 ぬけぬけと言うドリスにエスメラルダはついにキレた。

「そういう事はもっと早く言いなさい!貴女たち王族の妄言を誤解した貴族がバカげた理由で子供を捨てるのよ?!公の場でしっかり訂正しなさい!」

 エスメラルダは怒っていた。小さな頃からのうっぷんが吹き出したのだ。エスメラルダは燃えるような怒りの眼差しでドリスをにらんだ。ドリスは怯えもせず、真剣な表情で言った。

「あいわかった。わたくしが生きていれば、必ずお父さまに進言しよう」

 
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