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作戦準備

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 エスメラルダの空間魔法で、無理矢理この場に連れて来られたチコとサラは顔をこわばらせていた。

 無理もない、エスメラルダが怖い顔で彼女たちをにらんでいたからだ。

「あ、あの、お姉さん。私たち、何かしましたか?」
「私たち、誓ってプリシラに悪い事なんてしてませんよ?」

 チコとサラはエスメラルダの真意を探るように質問する。エスメラルダは彼女たちの不安などには気づかず、ズケズケとものを言った。

「いい事、チコとどチビ。サラと毛むくじゃら。これから貴女たちには私の作戦に参加してもらうわ」

 どチビと毛むくじゃらとは、チコの契約精霊プッチと、サラの契約霊獣ティアの事だ。どうもエスメラルダは名前を覚える事が苦手で、あだ名で呼ぶ事が多い。たいがいが相手にとって悪口になっている。

『ちょっと!どチビって私の事?!失礼ね!私は好きでこの見た目でいるの!』
『毛むくじゃらって私の事?!ヒドイ!サラも何とか言ってよ!』

 プッチとティアは抗議していたが、チコとサラは感動の眼差しでエスメラルダを見ていた。

「お、お姉さんが、私の名前、チコって呼んでくれた。いつもそこつ者かうっかり者って呼ばれるのに!」
「私も、いつも弱虫かビビリって呼ばれるのに。サラって呼んでくれた!」

 プリシラはチコとサラに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。チコとサラは小さな頃から、エスメラルダにどうかつまがいのお願いをされていた。プリシラの事を頼むわよ。プリシラに何かあったら、その時はわかっているでしょうね。

 チコとサラは、いつも震えながらうなずいていた。今思い出しても、二人はよくプリシラの友達でいてくれたものだ。プリシラはあらためてチコとサラに感謝した。

 エスメラルダは指揮官よろしく、プリシラたちの目の前に立った。プリシラとタップの横にはチコとプッチ、サラとティア、ドリス、ネリオ。そして捕虜のドワーフがいた。皆神妙にエスメラルダを見つめている。

「いい事?これから私たちは、ドワーフとエルフの連合軍と戦うわ。相手は森の民。よって土魔法を使う。そうよね?ドワーフ」

 エスメラルダはドワーフに質問した。すかさずタップがドワーフに通訳する。ドワーフはうなずいて答えた。

〔ああ、わしらドワーフも、エルフも基本的に土魔法だ。わしは宝石を作り出す鉱物魔法しか使えんが、仲間は鉄の武器を作り出したり、植物攻撃魔法を使ったりする者もいる〕

 タップの言葉をプリシラがエスメラルダに伝える。エスメラルダは一つうなずいてから、よく通る声で言った。

「チコ、どチビは植物魔法で相手軍を撹乱。サラ、毛むくじゃらは火魔法で相手軍を包囲。だけど、できるだけ火のコントロールには気をつけて。私が風魔法と水魔法で、火が森に燃え移らないようにするわ。プリシラと毛玉は相手軍からの攻撃を防御。弱虫騎士、アンタはウィード国軍の指揮をする事。兵士たちの持つ武器は木製の剣にしなさい。ドワーフとエルフをケガなく拘束する事。つり目、アンタは、兵士たちを鼓舞しなさい。馬に乗って先頭を走るの。一番敵の攻撃を受けやすいから死なないように!そしてドワーフ。貴方はこれからドワーフとエルフの軍に書状を届けてほしいの。話し合いを受け入れてくれればいいけど、もし受け入れられなければ、明朝戦いを開始するわ!」

 エスメラルダは一気に説明を終えた。プリシラたちは大きな声で了解のむねを伝えた。

 
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