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リベリオ
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プリシラはデムーロ伯爵家の屋敷の中を、迷いながら外へ出ようと歩いていた。
「何て美しい人なんだ。貴女に魅了されてしまった哀れな男にどうか名前を教えていただけませんか?」
長い廊下を、タップを抱っこして歩いていたプリシラに、まわりくどい文句で話しかける者がいた。
辺りにはプリシラ以外人はいない。おそらく美しい人とはプリシラの事なのだろう。プリシラは、自分の容姿が美しいなどと到底思えなかった。
プリシラには絶世の美女である姉のエスメラルダがいるのだ。姉の美しさに、プリシラは足元にもおよばないと考えていた。
プリシラが仕方なく声のした方に振り向くと、目がチカチカする男が立っていた。
明るい金髪に青い瞳のハンサムな男性だ。きっとイケメン好きのチコが見たら大興奮なのだろうが、プリシラは外見の良さは特にどうでも良かった。人に大切なものは、誠実さだと信じているからだ。
プリシラは仕方なく自己紹介をした。
「マージ運送会社がらまいりました。プリシラと申します」
「プリシラ、美しい名前だ。ああ、父上の愛人に花を届けている。今日はいつもの生意気なクソガキではないのですね?」
クソガキとはトビーの事だろう。プリシラは先輩のトビーを悪く言われてカチンときた。プリシラが怒った事がわかったのだろう。男は慌てたように言い訳した。
「勘違いしないでください、プリシラ。俺は貴女たちの仕事を応援しているのですよ?」
プリシラはそこでこの男が誰なのか気になった。デムーロ伯爵がダニエラに花を贈っている事を知っている者はそれほどいないはずだ。プリシラの探るような視線に気づいた男は、自己紹介をしていない事を思い出したのか、笑顔になって口を開いた。
「申し遅れました。俺はデムーロ伯爵の子息リベリオといいます」
目の前の男リベリオはデムーロ伯爵の息子だったのだ。リベリオは軽く右手を振ると、手にピンクのバラを持っていた。隠しの魔法を解除して、バラの花を出現させたのだ。
リベリオはうやうやしくプリシラにバラの花を差し出した。プリシラはタップを小脇にかかえ、軽く会釈をして右手で花を受け取った。
デムーロ伯爵の言葉通りリベリオは優秀な魔法使いなのだろう。プリシラはピンクのバラから視線をリベリオに移した。
「リベリオさま、質問する事をお許し頂けますか?」
リベリオは優雅な仕草でうなずいた。プリシラは覚悟を決めて、疑問に思っていた質問をした。
「リベリオさまはお父上が、お母上ではない他の女性に花を贈る事をどう思っていらっしゃるんですか?」
「どう思うだって?俺は早く父上とその女性が一緒になる事を望んでいるよ。見ていてまどろっこしくてしょうがないから」
リベリオの発言に、プリシラはポカンとしていると、リベリオは自身の説明不足に気づいたようで、言葉をやわらげて付け足した。
「俺の母は、俺が小さい頃に亡くなっている。だから父上は母上に気兼ねする必要は全く無いんだ」
プリシラはそれまでのモヤモヤが晴れていくのを感じた。デムーロ伯爵は誠実にダニエラを愛しているのだ。
「何て美しい人なんだ。貴女に魅了されてしまった哀れな男にどうか名前を教えていただけませんか?」
長い廊下を、タップを抱っこして歩いていたプリシラに、まわりくどい文句で話しかける者がいた。
辺りにはプリシラ以外人はいない。おそらく美しい人とはプリシラの事なのだろう。プリシラは、自分の容姿が美しいなどと到底思えなかった。
プリシラには絶世の美女である姉のエスメラルダがいるのだ。姉の美しさに、プリシラは足元にもおよばないと考えていた。
プリシラが仕方なく声のした方に振り向くと、目がチカチカする男が立っていた。
明るい金髪に青い瞳のハンサムな男性だ。きっとイケメン好きのチコが見たら大興奮なのだろうが、プリシラは外見の良さは特にどうでも良かった。人に大切なものは、誠実さだと信じているからだ。
プリシラは仕方なく自己紹介をした。
「マージ運送会社がらまいりました。プリシラと申します」
「プリシラ、美しい名前だ。ああ、父上の愛人に花を届けている。今日はいつもの生意気なクソガキではないのですね?」
クソガキとはトビーの事だろう。プリシラは先輩のトビーを悪く言われてカチンときた。プリシラが怒った事がわかったのだろう。男は慌てたように言い訳した。
「勘違いしないでください、プリシラ。俺は貴女たちの仕事を応援しているのですよ?」
プリシラはそこでこの男が誰なのか気になった。デムーロ伯爵がダニエラに花を贈っている事を知っている者はそれほどいないはずだ。プリシラの探るような視線に気づいた男は、自己紹介をしていない事を思い出したのか、笑顔になって口を開いた。
「申し遅れました。俺はデムーロ伯爵の子息リベリオといいます」
目の前の男リベリオはデムーロ伯爵の息子だったのだ。リベリオは軽く右手を振ると、手にピンクのバラを持っていた。隠しの魔法を解除して、バラの花を出現させたのだ。
リベリオはうやうやしくプリシラにバラの花を差し出した。プリシラはタップを小脇にかかえ、軽く会釈をして右手で花を受け取った。
デムーロ伯爵の言葉通りリベリオは優秀な魔法使いなのだろう。プリシラはピンクのバラから視線をリベリオに移した。
「リベリオさま、質問する事をお許し頂けますか?」
リベリオは優雅な仕草でうなずいた。プリシラは覚悟を決めて、疑問に思っていた質問をした。
「リベリオさまはお父上が、お母上ではない他の女性に花を贈る事をどう思っていらっしゃるんですか?」
「どう思うだって?俺は早く父上とその女性が一緒になる事を望んでいるよ。見ていてまどろっこしくてしょうがないから」
リベリオの発言に、プリシラはポカンとしていると、リベリオは自身の説明不足に気づいたようで、言葉をやわらげて付け足した。
「俺の母は、俺が小さい頃に亡くなっている。だから父上は母上に気兼ねする必要は全く無いんだ」
プリシラはそれまでのモヤモヤが晴れていくのを感じた。デムーロ伯爵は誠実にダニエラを愛しているのだ。
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