25 / 175
エスメラルダの気持ち3
しおりを挟む
エスメラルダはある決心をした。プリシラに試練を与えようと考えたのだ。幼いプリシラは、エスメラルダがいなくなる事をとても恐れていた。
いつもは決してワガママを言わないプリシラが、エスメラルダに魔法学校に行かないでと願ったのだ。
エスメラルダは覚悟を決めて言った。プリシラは風魔法の特訓をしなければならない、と。エスメラルダがいなくなれば、プリシラは心のよりどころを失うだろう。だが弱いままではいけない、プリシラは強くならなければならないのだ。エスメラルダは、プリシラは優秀な風のエレメント使いになると確信していた。
事実プリシラの風魔法は、エスメラルダの風魔法よりも秀でていた。素直なプリシラは、エスメラルダに風魔法の特訓をすると約束してくれた。
エスメラルダが屋敷を去る時、思い余ってメイド頭にこん願した。どうかプリシラが困った時、助けになってほしいと。エスメラルダは自身が貴族である事に誇りを持っていた。そのため平民である使用人たちとは一線を画していた。
そんなエスメラルダが、使用人に願い事をするなど、虫のよい話だ。エスメラルダはメイド頭にけいべつされるかもしれないと思い、目をつむって彼女の返事を待った。
メイド頭はしゃがみこんでエスメラルダの視線に合わせてから口を開いた。
「もちろんでございます、エスメラルダお嬢さま。プリシラお嬢さまのような心優しい方をないがしろにするなど、いくらご主人さまと奥さまでもあってはならない事です。よくぞ今までプリシラお嬢さまをお守りくださいました。プリシラお嬢さまの事はわたくしどもにお任せください」
エスメラルダは驚いてしまった。プリシラには助けてくれる人々がたくさんいたのだ。
プリシラは使用人に対しても分けへだてなく優しかった。エスメラルダはそんなプリシラをあまり良く思っていなかった。まだ子供だから仕方ないが、大きくなったら貴族として、使用人との接し方を変えさせなければいけないと考えていた。
だがプリシラの優しさと行動は、使用人たちを味方につける結果となったのだ。
エスメラルダは魔法学校の在学時代、メイド頭から何度も手紙をもらった。屋敷内でのプリシラの様子を知らせてもらうためだ。
プリシラとも手紙のやり取りはしていたが、手紙の中でのプリシラは、自分は元気でやっているので心配しないでくれという文言ばかりだった。
メイド頭はプリシラが言わない事、言えない事をエスメラルダに書き記してくれた。エスメラルダはプリシラの境遇を知り、それとなくアドバイスをおくるのが常だった。
ある時とんでもない内容の手紙がメイド頭から送られてきた。プリシラが十三歳になったら、山奥の修道院に入れるというのだ。
修道院に送られてしまえば、プリシラは死ぬまで自由がなくなってしまう。エスメラルダはかねてより考えていた事を実行にうつした。
エスメラルダは、プリシラの事を召喚士養成学校に入れようと考えていた。召喚士とは、自身の魔力が弱くても、精霊や霊獣と契約して、強大な魔力を操る事ができるようになるのだ。
召喚士になるには、学校で五年間の勉強をし、国家試験に受からなければいけない。学校に通えば誰でも召喚士になれるわけではない。召喚士になるための一番の素質は、心が綺麗である事なのだ。
精霊や霊獣は高貴な存在だ。心の汚い人間は大嫌いだが、心の綺麗な人間には好意を持ってくれる。
エスメラルダの妹であるプリシラは、姉のひいき目を抜きにしても心が綺麗だった。きっと召喚士になる事ができるだろう。
エスメラルダは両親を説き伏せ、最後の親としての責任を果たさせ、プリシラを召喚士養成学校に入学させた。
いつもは決してワガママを言わないプリシラが、エスメラルダに魔法学校に行かないでと願ったのだ。
エスメラルダは覚悟を決めて言った。プリシラは風魔法の特訓をしなければならない、と。エスメラルダがいなくなれば、プリシラは心のよりどころを失うだろう。だが弱いままではいけない、プリシラは強くならなければならないのだ。エスメラルダは、プリシラは優秀な風のエレメント使いになると確信していた。
事実プリシラの風魔法は、エスメラルダの風魔法よりも秀でていた。素直なプリシラは、エスメラルダに風魔法の特訓をすると約束してくれた。
エスメラルダが屋敷を去る時、思い余ってメイド頭にこん願した。どうかプリシラが困った時、助けになってほしいと。エスメラルダは自身が貴族である事に誇りを持っていた。そのため平民である使用人たちとは一線を画していた。
そんなエスメラルダが、使用人に願い事をするなど、虫のよい話だ。エスメラルダはメイド頭にけいべつされるかもしれないと思い、目をつむって彼女の返事を待った。
メイド頭はしゃがみこんでエスメラルダの視線に合わせてから口を開いた。
「もちろんでございます、エスメラルダお嬢さま。プリシラお嬢さまのような心優しい方をないがしろにするなど、いくらご主人さまと奥さまでもあってはならない事です。よくぞ今までプリシラお嬢さまをお守りくださいました。プリシラお嬢さまの事はわたくしどもにお任せください」
エスメラルダは驚いてしまった。プリシラには助けてくれる人々がたくさんいたのだ。
プリシラは使用人に対しても分けへだてなく優しかった。エスメラルダはそんなプリシラをあまり良く思っていなかった。まだ子供だから仕方ないが、大きくなったら貴族として、使用人との接し方を変えさせなければいけないと考えていた。
だがプリシラの優しさと行動は、使用人たちを味方につける結果となったのだ。
エスメラルダは魔法学校の在学時代、メイド頭から何度も手紙をもらった。屋敷内でのプリシラの様子を知らせてもらうためだ。
プリシラとも手紙のやり取りはしていたが、手紙の中でのプリシラは、自分は元気でやっているので心配しないでくれという文言ばかりだった。
メイド頭はプリシラが言わない事、言えない事をエスメラルダに書き記してくれた。エスメラルダはプリシラの境遇を知り、それとなくアドバイスをおくるのが常だった。
ある時とんでもない内容の手紙がメイド頭から送られてきた。プリシラが十三歳になったら、山奥の修道院に入れるというのだ。
修道院に送られてしまえば、プリシラは死ぬまで自由がなくなってしまう。エスメラルダはかねてより考えていた事を実行にうつした。
エスメラルダは、プリシラの事を召喚士養成学校に入れようと考えていた。召喚士とは、自身の魔力が弱くても、精霊や霊獣と契約して、強大な魔力を操る事ができるようになるのだ。
召喚士になるには、学校で五年間の勉強をし、国家試験に受からなければいけない。学校に通えば誰でも召喚士になれるわけではない。召喚士になるための一番の素質は、心が綺麗である事なのだ。
精霊や霊獣は高貴な存在だ。心の汚い人間は大嫌いだが、心の綺麗な人間には好意を持ってくれる。
エスメラルダの妹であるプリシラは、姉のひいき目を抜きにしても心が綺麗だった。きっと召喚士になる事ができるだろう。
エスメラルダは両親を説き伏せ、最後の親としての責任を果たさせ、プリシラを召喚士養成学校に入学させた。
0
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる