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エスメラルダの気持ち

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 辺りは一面焼け野原になっていた。エスメラルダは焼けこげた臭いにへきえきしながら辺りを見回した。

 エスメラルダの長い漆黒の髪は灰でゴワゴワになっている。早く仕事を完了させて、熱い風呂に入りたかった。

 エスメラルダは現在、冒険者の依頼の真っ最中だ。依頼内容は大規模盗賊団のせん滅だ。エスメラルダが依頼を受けようとした時、冒険者協会の受付は驚いて止めた。

 巨大な盗賊団をエスメラルダ一人でせん滅するなど無茶だ、と。エスメラルダは一言、問題ないと言ってこの依頼を受けた。

 エスメラルダはまず王都で盗賊行為を行なっている連中を、片っ端から捕まえて、巨大盗賊団の情報を集めた。

 規模はどのくらいか、統領は誰なのか。捕まえた盗賊たちは、同じ穴のムジナだけあって、おおよその情報を持っていた。

 これらの情報を元に、エスメラルダは盗賊団のアジトを探し出した。盗賊団の根城は、王都からだいぶ離れた森の中にあった。アジトである建物はボロボロの洋館で、敵の襲撃を警戒して、大きながけの下に作られていた。

 エスメラルダは風飛行魔法で空を飛びながら、盗賊団のアジトを観察していた。定期的にガラの悪い連中が出入りしている。

 観察の結果、盗賊団たちは数個のグループになって行動しているようだった。グループにはリーダーがいて、そのグループを指示していた。リーダーの頂点にいる男が盗賊団の統領だった。

 よく訓練され、組織的に動く事のできる盗賊団だった。

 エスメラルダは度々空間移動魔法を使い、盗賊団の同行を探っていた。盗賊団は一人も逃してはならない、全員捕まえて騎士団に突き出さなければいけないからだ。

 エスメラルダは長期間の観察により、ある法則を見つけた。それは盗賊団が仕事をする時期だ。盗賊団は、新月に大規模な盗賊行為をするのだ。何故なら新月は闇夜、盗賊団が仕事をする格好の期間なのだ。反対に満月の時期には仕事はせずに、盗賊団全員がアジトにいる事がわかった。

 エスメラルダは行動を開始した。満月の夜、エスメラルダは盗賊団のアジトの上にいた。風浮遊魔法でアジトを観察していると、どうやら盗賊たちはぐっすりと眠っているようだった。

 エスメラルダはたくさんの火魔法を出現させると、アジトの屋根に火を放った。木造の家屋はメラメラと燃えだし、異変に気づいた盗賊たちが、わらわらとアリのようにアジトから出てきた。

 エスメラルダは地面に着地すると、土植物魔法を発動させた。地面からツタがニョキニョキと生え出し、逃げまどう盗賊たちをぐるぐる巻きにしていった。

 植物ツタ魔法を逃れた盗賊たちは往生際が悪く、森に逃げこもうとしていた。エスメラルダは火魔法を発生させると、逃げる盗賊たちの目の前に投げつけた。
 
 盗賊たちが立ち往生しているうちに、しっかりと植物ツタ魔法で拘束した。

 盗賊たちは何が起こったのかわからないらしく、口々に悲鳴をあげていた。エスメラルダはその場にいる盗賊たちに大声で言った。

「この盗賊団の統領、並びにリーダーは名乗り出なさい。これから貴方たち全員を騎士団に連行します!」

 盗賊たちは突然現れたエスメラルダにののしりの声を浴びせた。

「ふざけんなこのアマ!縄をほどきやがれ!」
「このアマ!ただでは殺さねぇぞ!殺してくれって言うまでいたぶってやる!」

 エスメラルダは盗賊たちの低俗な言葉に閉口した。みせしめに何人か盗賊を殺してしまおうかと思った。その時妹の言葉が頭をよぎった。

 どんなに悪い人間でも、気持ちが変わる時がくるかもしれない。

 妹のプリシラは、どんな悪人にも必ず善意の心があると信じているのだ。プリシラの無邪気であどけない考えに、エスメラルダは苦笑した。



 

 
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