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夜の出来事
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目の前で焚き火の火がパチパチと音を立てている。プリシラは暗やみの中にポツンと燃えている焚き火の火を綺麗だと思った。
空を見上げれば満点の星空が輝いていた。プリシラは無意識にひざの上のタップの背中を撫でながらつぶやいた。
「綺麗ねぇ」
『夜空の星がか?そんな食えねぇもの見たってしょうがねぇだろ』
タップはプリシラのひざの上でおおあくびをしながら言った。
「もう、タップったら食べる事ばっかりなんだから」
プリシラはタップの無関心に怒ったわけではない。タップとのたわいもない言葉のかけあいを楽しんでいるのだ。
その日プリシラとタップは、配達の仕事で遠出をした。無事に受取人に荷物を届けた帰りだった。日はとっぷりと暮れてしまったので、今夜は森で野宿をする。
夕食はマージが作ってくれたきのこと野菜がたっぷり入ったスープとパンを、タップが隠しの魔法で保存してくれていたので、プリシラは温かい夕食を食べる事ができた。
タップの夕食は、気に入ってしまったりんごだ。タップが出してくれた毛布にくるまり、プリシラは満ち足りた食後を過ごしていた。
うっそうとした森で一夜を過ごすなど、普通の人間だったら恐怖でしかないだろう。森の獣に襲われるかもしれない、よからぬやからに危害をくわえられるかもしれない。
だがプリシラはちっとも怖くなかった。なぜなら、腕の中に抱いている相棒のタップは強大な魔力を持つ霊獣だ。どんな危険がやってきても、必ず助けてくれるだろう。
プリシラがそろそろ休もうかとタップと相談していた頃、ガサリと草音がした。直後にドヤドヤとガラの悪そうな三人の男たちがプリシラの前に現れた。
「何て綺麗なじょうちゃんだ!」
一番背の高い男が、プリシラをなめ回すように見て言った。
「これは高く売れるぞ」
「もうけた」
真ん中の背丈の男と、背の低い男が相づちをうつ。どうやら男たちは、この森を根城にしている山賊のようだ。プリシラを捕まえて売り払おうとしているらしい。
プリシラは目をパチパチさせながら男たちに質問した。
「あのぉ、貴方たちは私をどこかに売ろうとしているんですか?」
「そうだよ、おじょうちゃん。俺たちに会ってしまったのが運のつきだ」
背の高い男がニヤニヤと笑いながら答えた。プリシラは疑問に思いながら、さらに質問した。
「私は私自身のものなんですよ?貴方たちが私の人生をどうこうするのはおかしくないですか?」
「いいや、おじょうちゃん。俺たちはおじょうちゃんを好きにしていいんだ。何故なら俺たちはおじょうちゃんよりも強いからね」
そのような考え方もあるのか。プリシラはううむとうなってから、ひざの上で大あくびをしているタップにお願いした。
「ねぇ、タップ。あの山賊さんたちをこらしめてくれない?」
『こらしめる?ボコボコにして殺せと言う事だな?』
プリシラはタップの過激な言動にしばしぼうぜんとしてから、慌てて訂正した。
「ちょ、ちょっと待ってタップ。殺さなくていいわ。ただ少しおどかして、もう悪い事をしないようになってほしいの」
タップはプリシラとは目を合わせてくれず、目の前の三人の山賊をにらみながら言った。
『こいつらはプリシラを売ると言った。それだけで万死にあたいするんだよ!こんなヤツらはこらしめるだけじゃだめだ、生きていれば必ず悪い事をする。この場で殺しておくのが世の中のためだ』
タップの厳しい考えに、プリシラはあんぐりと口を開けて固まった。
空を見上げれば満点の星空が輝いていた。プリシラは無意識にひざの上のタップの背中を撫でながらつぶやいた。
「綺麗ねぇ」
『夜空の星がか?そんな食えねぇもの見たってしょうがねぇだろ』
タップはプリシラのひざの上でおおあくびをしながら言った。
「もう、タップったら食べる事ばっかりなんだから」
プリシラはタップの無関心に怒ったわけではない。タップとのたわいもない言葉のかけあいを楽しんでいるのだ。
その日プリシラとタップは、配達の仕事で遠出をした。無事に受取人に荷物を届けた帰りだった。日はとっぷりと暮れてしまったので、今夜は森で野宿をする。
夕食はマージが作ってくれたきのこと野菜がたっぷり入ったスープとパンを、タップが隠しの魔法で保存してくれていたので、プリシラは温かい夕食を食べる事ができた。
タップの夕食は、気に入ってしまったりんごだ。タップが出してくれた毛布にくるまり、プリシラは満ち足りた食後を過ごしていた。
うっそうとした森で一夜を過ごすなど、普通の人間だったら恐怖でしかないだろう。森の獣に襲われるかもしれない、よからぬやからに危害をくわえられるかもしれない。
だがプリシラはちっとも怖くなかった。なぜなら、腕の中に抱いている相棒のタップは強大な魔力を持つ霊獣だ。どんな危険がやってきても、必ず助けてくれるだろう。
プリシラがそろそろ休もうかとタップと相談していた頃、ガサリと草音がした。直後にドヤドヤとガラの悪そうな三人の男たちがプリシラの前に現れた。
「何て綺麗なじょうちゃんだ!」
一番背の高い男が、プリシラをなめ回すように見て言った。
「これは高く売れるぞ」
「もうけた」
真ん中の背丈の男と、背の低い男が相づちをうつ。どうやら男たちは、この森を根城にしている山賊のようだ。プリシラを捕まえて売り払おうとしているらしい。
プリシラは目をパチパチさせながら男たちに質問した。
「あのぉ、貴方たちは私をどこかに売ろうとしているんですか?」
「そうだよ、おじょうちゃん。俺たちに会ってしまったのが運のつきだ」
背の高い男がニヤニヤと笑いながら答えた。プリシラは疑問に思いながら、さらに質問した。
「私は私自身のものなんですよ?貴方たちが私の人生をどうこうするのはおかしくないですか?」
「いいや、おじょうちゃん。俺たちはおじょうちゃんを好きにしていいんだ。何故なら俺たちはおじょうちゃんよりも強いからね」
そのような考え方もあるのか。プリシラはううむとうなってから、ひざの上で大あくびをしているタップにお願いした。
「ねぇ、タップ。あの山賊さんたちをこらしめてくれない?」
『こらしめる?ボコボコにして殺せと言う事だな?』
プリシラはタップの過激な言動にしばしぼうぜんとしてから、慌てて訂正した。
「ちょ、ちょっと待ってタップ。殺さなくていいわ。ただ少しおどかして、もう悪い事をしないようになってほしいの」
タップはプリシラとは目を合わせてくれず、目の前の三人の山賊をにらみながら言った。
『こいつらはプリシラを売ると言った。それだけで万死にあたいするんだよ!こんなヤツらはこらしめるだけじゃだめだ、生きていれば必ず悪い事をする。この場で殺しておくのが世の中のためだ』
タップの厳しい考えに、プリシラはあんぐりと口を開けて固まった。
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