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初仕事
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プリシラとタップは、マージとトビーの研修を受け、ついに初仕事をする事になった。
この依頼は直接マージ運送会社に持ち込まれたものだった。プリシラとタップが受け持つ仕事は、遠く離れた村に住む老婆から品物を受け取ってくる事だった。
「じゃあタップ、お願いね?」
『よし!任せとけ!』
プリシラの腕の中のタップは、地面に降りるとムクムク大きくなった。プリシラが牛のように大きくなったタップの背中に乗ると、大空に飛び立った。
地上で手を振ってくれているマージとトビーがみるみる小さくなる。タップは大空を飛ぶ事が嬉しいのか、ものすごい速さで空をかけていく。プリシラはタップの長いモフモフの毛をたづながわりにしてしがみついていた。
『この辺じゃねぇか?プリシラ』
タップの声に、プリシラはしがみついていた背中から顔をあげた。眼下には山深い森があり、小さな集落があった。プリシラはポシェットから地図を取り出し、確認をする。
「そうね、ここがタジの村のようね」
本当の事をいうと、プリシラはこの村が本当に目的地かどうか確信が持てなかった。タジの村はこの方向だとタップに示した後、タップがものすごい速さで飛んでくれたので、プリシラは方向も確認せずにひたすらタップにしがみついているだけだったからだ。
プリシラはタップにお願いして、村に降りてもらった。元の大きさに戻ったタップを抱き上げると、ちょうどよく畑仕事を終えた村人に行き会った。
村の名を聞くと、タジの村で間違いなく、プリシラはホッと胸をなでおろした。親切な村人は、プリシラがたずねるべき家も教えてくれた。
プリシラはタップを抱っこしながら教えられた道を歩いた。村のはしに、小さくてやや傾いた木造の家に行き当たった。プリシラは緊張しながらドアを叩く。
はぁいと声がした後、だいぶ経ってからドアが開いた。そこには小柄な老婆が杖をついて立っていた。プリシラは笑顔で口を開いた。
「マージ運送会社から来ました、プリシラと申します。ご依頼の品を受け取りに来ました」
「まぁ、ありがとうね。さぁ、中に入ってくださいな」
老婆はニコニコ笑いながらプリシラとタップを部屋に招き入れた。老婆は足が悪いのか、一歩一歩杖をつきながら歩いている。
室内はこじんまりとしているが、ところどころにあるレースのテーブルクロスや、ベッドカバーが華やかだった。プリシラは思わず感嘆の声をあげた。
「なんて素敵なレースなんでしょう?」
「恥ずかしいわ。このレースは私が編んだの」
老婆ははにかみながら答えた。プリシラは手を叩いてレースの素晴らしさを褒めた。老婆は笑いながら礼を言うと、テーブルに置いてある包みを指差した。
「運んでもらいたい物はこれなの」
プリシラは中身の質問をした。壊れやすい物ならば慎重に運ばなければいけないからだ。老婆はニコニコ笑いながら答えた。
「中身はね、私が編んだ花嫁のレースなの。孫娘がね、結婚式をあげるの」
「まぁ、おめでとうございます」
プリシラは頭の片すみで依頼書を思い出していた。どうりで期日必着と明記されているわけだと思った。そこでプリシラはハッとして老婆に言った。
「あの、お孫さんの結婚式におばあさんは参列されないんですか?」
さしでがましいとは思ったが、どうしても気になってしまったのだ。老婆は苦笑しながら答えた。
「ええ、孫の結婚式に出られたらどんなに素晴らしいでしょう。だけど私のこの足では、到底王都の城下町へは行けないわ」
プリシラはぼう然とした。可愛い孫娘の晴れの日を共にお祝いできないなんて、どんなにつらいだろう。プリシラは思わず叫んでいた。
「おばあさん!レースと一緒におばあさんも配達させてください!」
この依頼は直接マージ運送会社に持ち込まれたものだった。プリシラとタップが受け持つ仕事は、遠く離れた村に住む老婆から品物を受け取ってくる事だった。
「じゃあタップ、お願いね?」
『よし!任せとけ!』
プリシラの腕の中のタップは、地面に降りるとムクムク大きくなった。プリシラが牛のように大きくなったタップの背中に乗ると、大空に飛び立った。
地上で手を振ってくれているマージとトビーがみるみる小さくなる。タップは大空を飛ぶ事が嬉しいのか、ものすごい速さで空をかけていく。プリシラはタップの長いモフモフの毛をたづながわりにしてしがみついていた。
『この辺じゃねぇか?プリシラ』
タップの声に、プリシラはしがみついていた背中から顔をあげた。眼下には山深い森があり、小さな集落があった。プリシラはポシェットから地図を取り出し、確認をする。
「そうね、ここがタジの村のようね」
本当の事をいうと、プリシラはこの村が本当に目的地かどうか確信が持てなかった。タジの村はこの方向だとタップに示した後、タップがものすごい速さで飛んでくれたので、プリシラは方向も確認せずにひたすらタップにしがみついているだけだったからだ。
プリシラはタップにお願いして、村に降りてもらった。元の大きさに戻ったタップを抱き上げると、ちょうどよく畑仕事を終えた村人に行き会った。
村の名を聞くと、タジの村で間違いなく、プリシラはホッと胸をなでおろした。親切な村人は、プリシラがたずねるべき家も教えてくれた。
プリシラはタップを抱っこしながら教えられた道を歩いた。村のはしに、小さくてやや傾いた木造の家に行き当たった。プリシラは緊張しながらドアを叩く。
はぁいと声がした後、だいぶ経ってからドアが開いた。そこには小柄な老婆が杖をついて立っていた。プリシラは笑顔で口を開いた。
「マージ運送会社から来ました、プリシラと申します。ご依頼の品を受け取りに来ました」
「まぁ、ありがとうね。さぁ、中に入ってくださいな」
老婆はニコニコ笑いながらプリシラとタップを部屋に招き入れた。老婆は足が悪いのか、一歩一歩杖をつきながら歩いている。
室内はこじんまりとしているが、ところどころにあるレースのテーブルクロスや、ベッドカバーが華やかだった。プリシラは思わず感嘆の声をあげた。
「なんて素敵なレースなんでしょう?」
「恥ずかしいわ。このレースは私が編んだの」
老婆ははにかみながら答えた。プリシラは手を叩いてレースの素晴らしさを褒めた。老婆は笑いながら礼を言うと、テーブルに置いてある包みを指差した。
「運んでもらいたい物はこれなの」
プリシラは中身の質問をした。壊れやすい物ならば慎重に運ばなければいけないからだ。老婆はニコニコ笑いながら答えた。
「中身はね、私が編んだ花嫁のレースなの。孫娘がね、結婚式をあげるの」
「まぁ、おめでとうございます」
プリシラは頭の片すみで依頼書を思い出していた。どうりで期日必着と明記されているわけだと思った。そこでプリシラはハッとして老婆に言った。
「あの、お孫さんの結婚式におばあさんは参列されないんですか?」
さしでがましいとは思ったが、どうしても気になってしまったのだ。老婆は苦笑しながら答えた。
「ええ、孫の結婚式に出られたらどんなに素晴らしいでしょう。だけど私のこの足では、到底王都の城下町へは行けないわ」
プリシラはぼう然とした。可愛い孫娘の晴れの日を共にお祝いできないなんて、どんなにつらいだろう。プリシラは思わず叫んでいた。
「おばあさん!レースと一緒におばあさんも配達させてください!」
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