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響と隆成

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 響は隆成の記憶が戻って、ジュリアに大きな負い目がある事を思い出した。響は前世の隆成だった頃、ジュリアとある約束をした。

 それは家業の酒造が軌道に乗ったら、ジュリアの眷属となり永遠に彼女と共に生きるという約束だ。もちろん響は約束を守るつもりだった。家業の発展に心血を注ぎ、親戚から男の子を養子にもらい、跡取りとして大切に育てた。

 息子が成人し、家業を任せられるくらいまで成長したのを見極めて、ジュリアの眷属になろうとしたその時、響は鏡に映る自分を見てがく然とした。

 響の顔はシワだらけで、髪も白くなっていた。響は老人になっていたのだ。そこで響にある不安がもたげた。

 ジュリアは響がどんな姿でもいいと言ってくれたが、老人の姿ではいずれ愛想を尽かされてしまうのではないか。ジュリアを信じ愛そうとする反面、その考えは恐怖だった。

 もし響が吸血鬼になり、その後ジュリアと別れるような事があれば、年老いた老人の響はどんなに寂しく惨めだろう。

 そこで響はジュリアとの約束を先延ばしにする事にした。自分は死んでから必ず生まれ変わってジュリアの元に現れる。その時にこそジュリアの眷属にしてほしいと。

 ジュリアは泣きながら了承してくれた。これはとてもずるい提案だった。もし響が生まれ変わる前に、ジュリアに新たな伴侶がいれば、ジュリアは生まれ変わった響を眷属にはしないだろうと考えたのだ。生まれ変わった響は、ジュリアの事を思い出さないまま人間として生きて死んでいくだろうと。

 だがジュリアは、響の事を百年も探し続けてくれたのだ。外国人であるジュリアが、日本で暮らすのはどんなに大変だった事だろう。

 響は自分の事ばかり考えて、ジュリアの事をまるで考えいなかったのだ。響は誓った。もう二度とジュリアから離れないと。響が生きているかぎり。

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