63 / 82
エグモントの過去2
しおりを挟む
しばらく経った頃、エグモントは自身の領地の森の散策をしていた。鳥たちは美しい声をおしげもなく披露していた。エグモントはその中にもっとも美しい声を耳にした。それは人間の声だった。
エグモントは不思議に思い、声のする方に足を進めた。そこには人間の娘がいた。美しい娘だった。娘はエグモントが突然現れた事に驚いたようだったが、次の瞬間は花が咲いたように微笑んで言った。
「お久しぶりです。伯爵さま」
その娘は、エリーゼだった。エグモントはしどろもどろになりながらエリーゼに言った。
「大きくなったな」
「はい、もう十六ですもの」
「そうか、」
それきり会話は終わってしまった。エグモントは苦し紛れに口を開いた。
「エリーゼ、先ほど歌を歌っていたな?」
「はい」
「もう一度、歌ってはくれまいか?」
エリーゼは微笑んでうなずいた。エグモントはエリーゼの美しい歌に魅了された。エグモントはまたここに来て歌を歌ってくれと願った。エリーゼはしょうだくしてくれた。
それからというものエグモントはエリーゼと会う事が楽しくて仕方なかった。しばらくして自分はエリーゼに恋をしている事に気づいた。
高貴な吸血鬼である自分が、食料である人間に恋をするなどあってはならないと否定したが、胸の高鳴りはひどくなる一方だった。
あまりの胸苦しさにエグモントはついにエリーゼに白状した。お前が好きだ、と。エリーゼは微笑んで答えた。私も同じ気持ちです、と。
エリーゼはエグモントの事を好いてくれていたのだ。エグモントはその場で片ひざをついて彼女に求婚した。エリーゼは微笑んでうなずいてくれた。
エグモントは自分は吸血鬼であって人間ではない事。エグモントとエリーゼが共に暮らすには、エリーゼが吸血鬼にならなければいけない事を伝えた。エリーゼは了承してくれた。
その時のエグモントは世界一の幸せ者だった。だから考えが思いいたらなかったのだ。人間が吸血鬼になるとはどういう事か。
エリーゼの両親は、エグモントとエリーゼの結婚をとても喜んでくれた。エグモントとエリーゼはとても幸せに暮らした。エリーゼは吸血鬼になり、三ヶ月にいっぺん人間の血を吸わなければいけなかった。
エグモントが側に付き添い、問題なく吸血する事ができた。エグモントは思った。この幸せが永遠に続くのだと。
最初にエリーゼの異変に気づいたのは、彼女の父親の死がきっかけだった。最愛の父親を失い、エリーゼはふさぎこんでしまった。エグモントは必死に彼女を慰めた。エリーゼは少しづつ元気を取り戻すかに見えた。
だがその直後、エリーゼの母親が夫の介護疲れから床にふせってしまい、その後亡くなってしまったのだ。
エグモントは不思議に思い、声のする方に足を進めた。そこには人間の娘がいた。美しい娘だった。娘はエグモントが突然現れた事に驚いたようだったが、次の瞬間は花が咲いたように微笑んで言った。
「お久しぶりです。伯爵さま」
その娘は、エリーゼだった。エグモントはしどろもどろになりながらエリーゼに言った。
「大きくなったな」
「はい、もう十六ですもの」
「そうか、」
それきり会話は終わってしまった。エグモントは苦し紛れに口を開いた。
「エリーゼ、先ほど歌を歌っていたな?」
「はい」
「もう一度、歌ってはくれまいか?」
エリーゼは微笑んでうなずいた。エグモントはエリーゼの美しい歌に魅了された。エグモントはまたここに来て歌を歌ってくれと願った。エリーゼはしょうだくしてくれた。
それからというものエグモントはエリーゼと会う事が楽しくて仕方なかった。しばらくして自分はエリーゼに恋をしている事に気づいた。
高貴な吸血鬼である自分が、食料である人間に恋をするなどあってはならないと否定したが、胸の高鳴りはひどくなる一方だった。
あまりの胸苦しさにエグモントはついにエリーゼに白状した。お前が好きだ、と。エリーゼは微笑んで答えた。私も同じ気持ちです、と。
エリーゼはエグモントの事を好いてくれていたのだ。エグモントはその場で片ひざをついて彼女に求婚した。エリーゼは微笑んでうなずいてくれた。
エグモントは自分は吸血鬼であって人間ではない事。エグモントとエリーゼが共に暮らすには、エリーゼが吸血鬼にならなければいけない事を伝えた。エリーゼは了承してくれた。
その時のエグモントは世界一の幸せ者だった。だから考えが思いいたらなかったのだ。人間が吸血鬼になるとはどういう事か。
エリーゼの両親は、エグモントとエリーゼの結婚をとても喜んでくれた。エグモントとエリーゼはとても幸せに暮らした。エリーゼは吸血鬼になり、三ヶ月にいっぺん人間の血を吸わなければいけなかった。
エグモントが側に付き添い、問題なく吸血する事ができた。エグモントは思った。この幸せが永遠に続くのだと。
最初にエリーゼの異変に気づいたのは、彼女の父親の死がきっかけだった。最愛の父親を失い、エリーゼはふさぎこんでしまった。エグモントは必死に彼女を慰めた。エリーゼは少しづつ元気を取り戻すかに見えた。
だがその直後、エリーゼの母親が夫の介護疲れから床にふせってしまい、その後亡くなってしまったのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる