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追跡者2
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これは怒りだ。響はこの男に対して激しい怒りを感じているのだ。響は屋根をけると男に飛びかかった。男は最低限の身のこなしで避けた。
響はがむしゃらに、こぶしやけりを男に繰り出す。男はそれも紙一重で避ける。男は戦い慣れていた。響は人間の時も、吸血鬼になった今も、ケンカなどした事がなかった。
自分の不甲斐なさを痛感して、日夜ジュリアに格闘の稽古をつけてもらっていたので、少しは男に対抗できるかと思ったが、まだまだのようだ。
だが響にチャンスがおとずれた。男は防御いっぺんとうで響に攻撃しては来なかった。謝りたいと言ったのは本心だったのかもしれない。
男は響の攻撃を避け続けている間に、屋根のはしに移動してしまい、屋根から足をふみはずしてしまった。男は真っ逆さまに歩道に落ち、あおむけに倒れた。
響は地面に降りると、男の胸を足で踏みつけて叫んだ。
「どうして俺を襲ったんだ?!」
「お前の事を、俺と同類だと思ったからだよ。同じご主人に吸血鬼にされたと思ったの。だから俺の猟場にいられたら嫌だからおどかそうと思ったんだよ。悪かったってば」
響は頭が混乱した。この男は響と同じ元人間だったのだ。ジュリア以外にも人間を吸血鬼にする事ができる吸血鬼が存在するのだ。
響は吸血鬼になりたてで、吸血鬼の現状がどうなっているのか全く知らなかった。この男のいうご主人とジュリアは関係があるのだろうか。友好的なのか、敵対しているのか。ジュリアにとって安全なのか。
響は吸血鬼になりたてのひよっこだ。ジュリアに庇護される存在だ。だがそれに甘んじていたいとは思っていない。響はジュリアの役に立つ存在になりたいのだ。
響は厳しい声で男に言った。
「おい、お前のご主人はジュリアに危害を加えようとしているのか?」
「ご主人さまの考えている事なんて俺にはわかんねぇよ。まぁ、あんな美人だし?興味はあるんじゃねぇの?」
「興味、だと?」
響は警戒した。この男も、背後にいる吸血鬼も。響は男の右手を掴むと、勢いよく引っ張った。男が痛みに叫び声をあげる。
「イッテェ!何すんだテメェ!腕がもげるだろうが!」
「これは警告だ。お前も、ご主人とやらも、ジュリアに近づいてみろ。殺すぞ」
響は話しながらも男の手を引っ張り続けた。ブチブチと嫌な音がして、男の肩口から血がほとばしった。男はかなぎり声をあげる。響は男の手を本気でもぎ取ろうとしていた。
吸血鬼は腕をもいでも、またくっつける事ができるはずだからだ。響がそう言うと、男は泣きながら怒って叫んだ。
「ふざけんな!純血の吸血鬼でもなけりゃ、腕をもがれたら出血多量で死んじまう!」
男の叫びに響はギクリとして動きを止めた。それまで感じていた激しい怒りが消えていた。
響はうろたえながら言った。
「本当か?吸血鬼でも死ぬのか?」
「あったり前だろ?!純血の吸血鬼は再生可能だが、俺たち元人間は吸血鬼の模造品だ!大ケガすれば死ぬ!だから同族同士での争いもご法度なんだよ。どっちか死ぬから」
「ジュリアは、首がもげてもしばらく首を固定していればくっつくと言ってた。だから俺、てっきり」
「・・・。お前、あの美人の吸血鬼からどれだけ血をもらった?」
「?。どれだけ?わからない。満足するまで血を吸ったような気がする」
「それは驚きだ。お前のご主人は、本気でお前と永遠の時を生きようとしているのかもしれねぇな」
響はがむしゃらに、こぶしやけりを男に繰り出す。男はそれも紙一重で避ける。男は戦い慣れていた。響は人間の時も、吸血鬼になった今も、ケンカなどした事がなかった。
自分の不甲斐なさを痛感して、日夜ジュリアに格闘の稽古をつけてもらっていたので、少しは男に対抗できるかと思ったが、まだまだのようだ。
だが響にチャンスがおとずれた。男は防御いっぺんとうで響に攻撃しては来なかった。謝りたいと言ったのは本心だったのかもしれない。
男は響の攻撃を避け続けている間に、屋根のはしに移動してしまい、屋根から足をふみはずしてしまった。男は真っ逆さまに歩道に落ち、あおむけに倒れた。
響は地面に降りると、男の胸を足で踏みつけて叫んだ。
「どうして俺を襲ったんだ?!」
「お前の事を、俺と同類だと思ったからだよ。同じご主人に吸血鬼にされたと思ったの。だから俺の猟場にいられたら嫌だからおどかそうと思ったんだよ。悪かったってば」
響は頭が混乱した。この男は響と同じ元人間だったのだ。ジュリア以外にも人間を吸血鬼にする事ができる吸血鬼が存在するのだ。
響は吸血鬼になりたてで、吸血鬼の現状がどうなっているのか全く知らなかった。この男のいうご主人とジュリアは関係があるのだろうか。友好的なのか、敵対しているのか。ジュリアにとって安全なのか。
響は吸血鬼になりたてのひよっこだ。ジュリアに庇護される存在だ。だがそれに甘んじていたいとは思っていない。響はジュリアの役に立つ存在になりたいのだ。
響は厳しい声で男に言った。
「おい、お前のご主人はジュリアに危害を加えようとしているのか?」
「ご主人さまの考えている事なんて俺にはわかんねぇよ。まぁ、あんな美人だし?興味はあるんじゃねぇの?」
「興味、だと?」
響は警戒した。この男も、背後にいる吸血鬼も。響は男の右手を掴むと、勢いよく引っ張った。男が痛みに叫び声をあげる。
「イッテェ!何すんだテメェ!腕がもげるだろうが!」
「これは警告だ。お前も、ご主人とやらも、ジュリアに近づいてみろ。殺すぞ」
響は話しながらも男の手を引っ張り続けた。ブチブチと嫌な音がして、男の肩口から血がほとばしった。男はかなぎり声をあげる。響は男の手を本気でもぎ取ろうとしていた。
吸血鬼は腕をもいでも、またくっつける事ができるはずだからだ。響がそう言うと、男は泣きながら怒って叫んだ。
「ふざけんな!純血の吸血鬼でもなけりゃ、腕をもがれたら出血多量で死んじまう!」
男の叫びに響はギクリとして動きを止めた。それまで感じていた激しい怒りが消えていた。
響はうろたえながら言った。
「本当か?吸血鬼でも死ぬのか?」
「あったり前だろ?!純血の吸血鬼は再生可能だが、俺たち元人間は吸血鬼の模造品だ!大ケガすれば死ぬ!だから同族同士での争いもご法度なんだよ。どっちか死ぬから」
「ジュリアは、首がもげてもしばらく首を固定していればくっつくと言ってた。だから俺、てっきり」
「・・・。お前、あの美人の吸血鬼からどれだけ血をもらった?」
「?。どれだけ?わからない。満足するまで血を吸ったような気がする」
「それは驚きだ。お前のご主人は、本気でお前と永遠の時を生きようとしているのかもしれねぇな」
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