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追跡者

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 響が夜間の土木作業の仕事を終えて、家に帰ろうとしていると、誰かにつけられている事に気づいた。

 響の後をつけている誰かは、響がものすごい速さで走ってもしっかりとついて来ていた。吸血鬼である響についてこられる者という事は、相手も吸血鬼という事だろう。

 以前にも響は吸血鬼に襲われた事がある。その時はジュリアが助けに来てくれたが、今回は家から相当離れた場所だ。すぐにジュリアに助けてもらう事はできない。自分で何とかしなければいけない。

 響は地面をけると、民家の屋根の上に登った。そこから屋根の上を飛び跳ねて行く。後をつけている人物もそれにならう。

 響は月明かりに照らされた屋根の上に着地すると、しっかりと相手を引きつけてから振り向いて叫んだ。

「俺をつけているのは誰だ!」

 相手は驚いたような顔をした。この顔に見覚えがあった。響がつとめていたコンビニを襲った吸血鬼だ。響は相手をにらんで言った。

「また俺を襲いに来たのか?」

 男はガラの悪そうな顔から、案外人懐っこい笑みを浮かべて答えた。

「違げぇよ!この間は悪かったなって言おうとしたんだよ」
「悪かったですむか!お前が店をめちゃくちゃにしたから、あのコンビニは潰れたんだぞ?!」

 本当はジュリアが店内をめちゃくちゃに壊してしまったのだが、この男が襲ってこなければあんな事にはならなかったのだ。響の怒りの矛先はどうしてもこの男に向かってしまう。

 男は悪びれた様子で言った。

「そいつはすまなかったなぁ。でもよぉ、その時は悪い選択だったと思っても、ずっと後になってからあの選択は正しかったんだって思う日も来るかもしれねぇじゃねぇか」

 響の脳裏にオーナーの寂しそうな顔が浮かぶ。もう潮時だったんだ。そう言ってオーナーは寂しそうに笑った。響は頭に血がのぼり、カアッと身体が熱くなった。
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