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デート

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 ついに響は目標金額を貯める事に成功した。食費を切りつめ、土木作業の仕事をめいいっぱいいれて作った金だ。

 響はジュリアに服を買いに行こうと言ったが、彼女は顔をしかめた。無駄使いをするなというのだ。彼女はとてもつつましやかで倹約家だった。

 だが響は強行にジュリアを外に連れ出した。夜以外で外に出歩くのは久しぶりだった。響はジュリアと共に、電車に乗って都心に行った。そこは平日にもかかわらず、人でごった返していた。

 響はジュリアとはぐれないように、彼女の手をつないだ。ジュリアは不思議そうに響を見上げてから可愛らしく微笑んだ。そこで響は、はたと気づいた。女の子と手をつないで街中を歩く。これはデートではないか。

 響は生まれて初めてデートをした。ジュリアとの関係は、主人と使用人でしかないが、周りから見れば響とジュリアは恋人同士に見えるかもしれない。

 響は浮き立つ気持ちで、ジュリアを若い娘が好む服飾店に連れて行った。店の女性店員は、ジュリアの美しさを褒め、沢山の服を見せてくれた。どの服もジュリアに似合っていた。

 響はジュリアに気に入ったものはないかと聞くが、彼女は困った顔をして、チラリと値札を響に見せた。響はあごが外れそうなくらい驚いた。0の数が間違っているのかと思うほどに値段が高かった。

 ジュリアはぼう然としている響の手を引っ張り、にこやかに店を出た。響はジュリアに謝った。

「ごめん、ジュリア。女の人の服があんなに高いなんて知らなかったんだ」
「いいわよ。響の気持ちが嬉しいんだもの。ねぇ、別な店に行きましょう?」

 そう言ってジュリアが響を連れて来た店は、響も知っている安価で人気の総合衣料品店だった。

 ジュリアは嬉しそうに青いワンピースを試着した。ジュリアにとてもよく似合っていた。ジュリアは他にもスカートやシャツ、下着なども購入した。金額すべて含めても、先ほどの服一着より安かった。

 響は心に誓った。もっと稼いだら、今度こそジュリアにいい服を買おうと。

 ジュリアは試着したワンピースが気に入ったようで、そのまま着て行く事にした。

 道ゆく店を外からウィンドーショッピングしようとすると。ガラスには響しか映っていなかった。ジュリアは吸血鬼だからガラスや鏡には映らないのだ。

 響は周りの人間に、この事を知られてはいないか不安になって、辺りをキョロキョロした。ジュリアは苦笑しながら言った。

「大丈夫よ、響。皆自分の事に忙しくって、他人なんかみてやしないわ」

 響が道ゆく人を見ると、確かに皆急ぐように歩いている。響とジュリアに注目している人間はいなかった。
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