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怪物

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 日菜子は自宅へ帰るなりパソコンの前に座った。検索エンジンに、怪物、影、映らない。と入れる。すると検索結果が出た。

 吸血鬼。

 日菜子は吸血鬼についてさらに調べた。吸血鬼の苦手なものも列挙されていた。十字架、にんにく、聖水、杭。

 日菜子はできる限りの物を集める事にした。ゴシック調のロザリオのネックレス。スーパーの野菜売り場で生ニンニク。聖水が何だかわからなかったので、とりあえずミネラルウォーターのペットボトルを購入した。杭はお店になかったので、アイスピックにした。

 先ずは響に彼女の事を暴露しなければ。日菜子はバイト先に行くと、無理矢理休憩時間を響とあわせて、響の耳元でささやいた。

「響くん、私見たちゃったんです。響くんの彼女さん、バケモノなんですよ」

 日菜子の衝撃の告白に、響は苦笑するだけだった。響は自分の彼女が人外の者である事に気づいているのだ。

 響は苦笑しながら、人差し指を口元に当てて日菜子に言った。

「日菜子ちゃん。この事は黙っていてくれる?」

 響の困った笑顔がカッコ良すぎて、日菜子は思わず、はいと答えてしまった。

 日菜子は作戦を変更した。どうやら響はバケモノの吸血鬼に魅入られてしまっているようだ。もはや響は日菜子が助けなければならない。

 日菜子は従業員用のトイレに行くふりをして、店長室に忍びこんだ。店長の机から、響の履歴書を盗み見て、住所をスマートフォンのカメラで写す。自分が悪い事をしている自覚はまったくなかった。

 日菜子はまるで、吸血鬼ドラキュラに魅入られた妻ミナを助けるジョナサンの気分だった。



 
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