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社長令嬢メアリ
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メアリは豪華な自室でレイチェルたちを迎えてくれた。かたわらには恋人のマッド。
テーブルにはティーセットが用意され、メアリは温かい紅茶を淹れてくれた。レイチェルがティーカップを持ち上げると、華やかなダージリンの香りがした。
キティは紅茶そっちのけでお茶うけのクッキーをむさぼり食べている。アレックスは顔をしかめてお行儀が悪いとたしなめる。完全な母子だ。
アレックスはキティの頬のクッキーくずを取ってやった後、真面目な顔になって切り出した。
「メアリさん、マッドさん。私たちは必ずライオン男を殺して、お友達のキャシーさんのかたきを討ちます。私たちに協力をしていただけまけんか?」
「はい、私たちにできる事なら」
メアリはき然とした態度で答えた。アレックスはうなずいてから言った。
「まずはメアリさんとマッドさんは、ライオン男を殺すまで、決して夕方から夜にかけて外出しないと約束してください」
それについてはメアリたちは承諾してくれた。メアリとマッドは、キャシーの葬式に出席する以外の外出はする予定はないという事だった。
メアリは父親の仕事を手伝っているため、室内でのデスクワークが多いそうだ。マッドも大学を卒業したら、メアリの会社で一から社員として働くらしい。二人は将来一緒になる誓いを立てているようだ。
アレックスは納得してから言葉を続けた。
「では本題に入ります。私はあなた方のお友達のカールさんに、ライオン男を誘き出すためのおとりになってもらおうと考えています」
それまで穏やかだったメアリが、スクッと立ち上がって言い放った。
「そういうお考えでしたらお断りさせていただきます。カールは私たちの大切な友人です。カールを危険にさらす事などできません」
アレックスは穏やかに微笑んでから答えた。
「ではメアリさん。これからマッドさんとカールさんと三人でずっとこの屋敷にこもっているとでもいうのですか?」
メアリはグッと顔をこわばらせた。となりに座って、それまで黙っていたマッドが口を開いた。
「なぁ、俺はカールを一人にしておくべきじゃないと思う。あいつは、付き合いの短い俺が見ても、メンタルの弱い人間だ。それに、依存していた恋人のキャシーもいない。俺はカールをここに呼んで一緒にいてやった方がいいと思う」
マッドの意見に、メアリはホッと微笑んだ。マッドはメアリの手に自分の手を重ねながらためらいがちに言った。
「それにさ、あんた。カールに拳銃なんて渡したろ?もしカールが自暴自棄になって、その、自殺とかしたらどうしてくれるんだよ?」
マッドは避難めいた目でアレックスを見た。メアリの身体がギクリと震える。
アレックスは涼しい顔で答えた。
「カールさんは初見の私から見ても、気持ちの弱い人間だと思います。そんな人に撃てる拳銃を渡すと思いますか?あの拳銃のマガジンには弾は入っていません。あの拳銃は、カールさんの心のささえになればと渡した物です」
「心のささえ?」
マッドはホッと息を吐いてからアレックスにたずねた。アレックスは一つうなずいてから答える。
「ええ。カールさんが、キャシーさんの敵を討とうと、自ら夜の外に出た場合。彼の行動の動機づけになると思ったからです」
レイチェルはよく言うわと思いながらアレックスの話しを聞いていた。アレックスは、銃など一度も持った事のないレイチェルに拳銃を手渡して、すぐに撃てと急かしたのだ。
レイチェルはアレックスの策士ぶりに疲れた笑いを浮かべた。
テーブルにはティーセットが用意され、メアリは温かい紅茶を淹れてくれた。レイチェルがティーカップを持ち上げると、華やかなダージリンの香りがした。
キティは紅茶そっちのけでお茶うけのクッキーをむさぼり食べている。アレックスは顔をしかめてお行儀が悪いとたしなめる。完全な母子だ。
アレックスはキティの頬のクッキーくずを取ってやった後、真面目な顔になって切り出した。
「メアリさん、マッドさん。私たちは必ずライオン男を殺して、お友達のキャシーさんのかたきを討ちます。私たちに協力をしていただけまけんか?」
「はい、私たちにできる事なら」
メアリはき然とした態度で答えた。アレックスはうなずいてから言った。
「まずはメアリさんとマッドさんは、ライオン男を殺すまで、決して夕方から夜にかけて外出しないと約束してください」
それについてはメアリたちは承諾してくれた。メアリとマッドは、キャシーの葬式に出席する以外の外出はする予定はないという事だった。
メアリは父親の仕事を手伝っているため、室内でのデスクワークが多いそうだ。マッドも大学を卒業したら、メアリの会社で一から社員として働くらしい。二人は将来一緒になる誓いを立てているようだ。
アレックスは納得してから言葉を続けた。
「では本題に入ります。私はあなた方のお友達のカールさんに、ライオン男を誘き出すためのおとりになってもらおうと考えています」
それまで穏やかだったメアリが、スクッと立ち上がって言い放った。
「そういうお考えでしたらお断りさせていただきます。カールは私たちの大切な友人です。カールを危険にさらす事などできません」
アレックスは穏やかに微笑んでから答えた。
「ではメアリさん。これからマッドさんとカールさんと三人でずっとこの屋敷にこもっているとでもいうのですか?」
メアリはグッと顔をこわばらせた。となりに座って、それまで黙っていたマッドが口を開いた。
「なぁ、俺はカールを一人にしておくべきじゃないと思う。あいつは、付き合いの短い俺が見ても、メンタルの弱い人間だ。それに、依存していた恋人のキャシーもいない。俺はカールをここに呼んで一緒にいてやった方がいいと思う」
マッドの意見に、メアリはホッと微笑んだ。マッドはメアリの手に自分の手を重ねながらためらいがちに言った。
「それにさ、あんた。カールに拳銃なんて渡したろ?もしカールが自暴自棄になって、その、自殺とかしたらどうしてくれるんだよ?」
マッドは避難めいた目でアレックスを見た。メアリの身体がギクリと震える。
アレックスは涼しい顔で答えた。
「カールさんは初見の私から見ても、気持ちの弱い人間だと思います。そんな人に撃てる拳銃を渡すと思いますか?あの拳銃のマガジンには弾は入っていません。あの拳銃は、カールさんの心のささえになればと渡した物です」
「心のささえ?」
マッドはホッと息を吐いてからアレックスにたずねた。アレックスは一つうなずいてから答える。
「ええ。カールさんが、キャシーさんの敵を討とうと、自ら夜の外に出た場合。彼の行動の動機づけになると思ったからです」
レイチェルはよく言うわと思いながらアレックスの話しを聞いていた。アレックスは、銃など一度も持った事のないレイチェルに拳銃を手渡して、すぐに撃てと急かしたのだ。
レイチェルはアレックスの策士ぶりに疲れた笑いを浮かべた。
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