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悲しい現実

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 レイチェルたちは結局、偶然通りかかった親切なトラック運転手に出会い、荷物が置いてある荷台に乗せてもらった。

 レイチェルたちは夕方頃にやっと目指すロッジがある山のふもとにたどり着いた。これまではトラックに乗せてもらったが、これからは山道を登らなければいけない。

 レイチェルはキティから、中々能力を使うお許しがでなかった。レイチェルは落下したジープを停止させようとして、脳に強いストレスがかかってしまった。強いストレスがかかったまま念動力を使い続ければ、レイチェルはまたもや限界を超えてしまう。

 つまりキティはレイチェルのバケモノ化を心配しているのだ。レイチェル自身も、もう二度とバケモノになどなりたくない。

 レイチェルは仕方なくアレックスにおぶられたまま山を登り続けた。小さなキティは、エイミーがおぶって登った。

 レイチェルたちは無言で山を登った。数回の休憩をはさんだのち、月がのぼり山が闇に飲み込まれた頃、ついにロッジにたどり着いた。

 レイチェルはアレックスの背中から降りて、キティの診断をうけた。キティはレイチェルの頭から小さな手をはなしてから言った。

「うん。これなら念動力を使って大丈夫だよ」
「ありがとう、キティ。アレックスもありがとう」

 アレックスはうなずいてから答えた。

「今のところ、ロッジは静かだわ。私たちは間に合ったのよ」

 レイチェルたちが安心して微笑んだ瞬間。ロッジから激しい悲鳴が聞こえた。

 窓から誰かが飛び出し走ってくる。若い男女。女性の方はロッジの所有者の娘であるメアリだ。

 レイチェルたちはにわかに青ざめた。すでにライオン男はロッジの中に侵入していたのだ。

「ちくしょう!」

 アレックスは激しく舌打ちをしてかけだした。レイチェルも彼女に続く。走りざま、エイミーたちに声をかけた。

「エイミー、キティ!メアリさんたちを安全なところへ!」
「わかったわ!気をつけて、レイチェル」

 レイチェルは軽く右腕をあげて返した。窓からは痩せた男がヨタヨタと出てきた。その後を、巨大なライオン男が全速力で追いかけてくる。

 痩せた男はけつまずいて倒れた。ライオン男は手に持った斧を振り上げた。レイチェルは自身の身体に念動力をかけて、フワリと痩せた男の前に立ちはだかった。

 レイチェルは念動力をライオン男にかけて動きを止めた。ライオン男はレイチェルの念動力の拘束を嫌がって、何とか念動力から逃げようする。

 その抵抗の力たるや、まるで巨大なトラックにぶつかられたような威力だった。

 レイチェルは何とかライオン男の力を封じ続けながら、痩せた男に逃げるように言おうとした。ちょうどその時、エイミーが痩せた男を保護しに来ていた。

 レイチェルはホッとした。これでライオン男に集中できる。

 
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