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メアリ

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 レイチェルがリビングに来た事に気づいたアレックスが血走った目でレイチェルを見て言った。

「レイチェル。おはよう」
「・・・。おはよう、アレックス。昨日も一睡もしていないのね?」
「エイミーが見つけてくれた情報から早く被害者を特定しないとね。メアリという子は社長である父親の後継者と目されているようなの。メアリは地元メディアへの露出もしているようね。メアリは美人だし、いい広告塔になっているようだわ」

 アレックスはものすごいタイピングでパソコンの画面を変えていく。その間アレックスは何かに憑かれたようにペラペラとしゃべりつづける。

「メアリのSNS、関連ブログに全て目を通したんだけど、自分の不利になるようなプライベート情報はあげていなかったわね。だけど、地元のインタビュー記事がヒットしたの。インタビュアーがメアリのプライベートを皆が知りたがっているというと、メアリは今度の休日は友人たちとすごすと言っていたわ」

 どうやらメアリたち被害者はまだ凶行に巻き込まれていないようだ。レイチェルがホッとしていると、アレックスはレイチェルがいないもののように話し続けている。

「メアリの父親の会社の保有資産を調べてみたら、何個かのロッジやペンションがあるのがわかったわ。近々に一つのロッジに清掃業者が入っている。ライオン男に襲われる場所は、このロッジとみて間違いないわ!」

 アレックスはそれだけ言うと、ばたりとソファに倒れ込んで眠ってしまった。レイチェルはアレックスに毛布をかけながら、一抹の不安を感じた。

 いつも沈着冷静なアレックスが、ライオン男が関わる時だけおかしくなってしまうのだ。

 レイチェルたちは金曜日の夕方にメアリの父親の所有するロッジに向かった。このまま車を走らせれば、土曜日の夕方にはロッジに到着する予定だった。

 エイミーが予知夢で視た光景の窓の外は真っ暗だったので、被害者たちがライオン男に襲われるのは、おそらく夜だろう。

 夕方にロッジに到着すれば、メアリたち被害者は全員助けられる。レイチェルたちは勢いこんでロッジに向かった。

 だがここでアクシデントが起こった。後部座席に座っていたエイミーが申し訳なさそうに運転手のアレックスに言った。

「あ、あの、アレックス。この車、もうすぐエンストする」

 エイミーは自分自身に起こるすぐ先の未来が視える。アレックスは慌てて大きなジープを道路わきに停車させた。その直後、エンジンが完全にストップした。



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