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キャシーの最後の言葉3

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「キャシーはさ、俺とメアリの恋のキューピッドだからな」

 マッドの言葉を聞いたメアリが不思議そうに恋人を見た。

「あら、マッド。キャシーの車が壊れた時、私たちが道路で困っていたら、バイクに乗った貴方が偶然通りかかって修理してくれて、それで私たち知り合ったんじゃない」

 メアリとマッドの馴れ初めは、カールもそう聞いていた。マッドは指で頬をかきながら言った。

「いいや、メアリ。俺はそれよりも前に君と会ってたんだぜ?俺ってさ、結構モテるんだよ。だから学校のダンスパーティの時、氷の女王を落としてやるって宣言してたんだ」

 氷の女王、メアリのあだ名だ。メアリは、彼女の金持ちの父親にあやかろうと、たくさんの友人希望者が群がってきていた。メアリはそんな連中をうとましがって、キャシー以外の人間を寄せつけなかった。

「俺メアリにダンスを申し込んだ。俺が女の子の肩を抱けば、すぐに女の子はうっとりしてしまう。メアリもきっとそうなると思ったんだ。だけど俺がメアリからもらったのは平手打ちだった。君は、馴れ馴れしく触らないでと怒っていた。それで俺は君にまいってしまったんだ。寝ても覚めてもメアリの事が頭に浮かんで離れなかった。だけどメアリはキャシー以外の人間を側に近づけない。思い余った俺は、キャシーに頼み込んだ。キャシーからメアリに俺を紹介してもらえないかって」

 メアリは恋人の告白を驚いた表情て聞いていた。マッドはメアリに愛おしげな視線を向けながら話しを続けた。

「そうしたら、キャシーはすごいおっかない顔をして言ったんだ。もしメアリと遊びで付き合おうなんて考えたら、私は貴方をぜったいに許さないって。いつも笑顔のキャシーからは想像もできないくらい怖い顔だった。俺は覚悟を持った上でメアリが好きだとうったえたんだ。そうしたら、キャシーは笑顔になって提案してくれたんだ。道路で車を停めるから、その時に声をかけろって」
  
 カールはマッドの話しを驚きの思いで聞いていた。カールの知っているキャシーはおっとりとしているお嬢さんだったが、友人のために画策を企てる事もあるのだなと思った。マッドはキャシーとの秘密を打ち明けた事が決まり悪かったのから、しどろもどろに言葉を続けた。

「だから、俺が言いたいのはなぁ。俺にとってキャシーはちょっとおっかない存在だけど。キャシーが大切に思っているメアリとカールは、天使に守られているんだぜ?今後の人生勝ったも同然じゃねぇか」

 メアリはポロポロ涙を流しながら、うんうんとうなずいた。

 カールはおそまきながら就職活動をして、小さなスーパーに勤務する事が決まった。

 カールはこれからも小説を書き続ける事にした。これまでのつまらない哲学小説など捨てて。

 カールは恋愛小説を書いている。カールのようなろくでなしのクズ男が、天使のような女の子と出会って恋に落ちる話しだ。

 この小説が世に出ようと出なかろうとカールには関係ない。カールはこの小説を書き上げたら、一目散にキャシーの墓前に報告に行こうと考えている。心から君を愛していると伝えに。
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