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限界
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カールの精神は完全に崩壊した。カールは食事をする事もなく、ただただ日々を過ごしていた。かたわらにはキャシーの幻覚。
彼女は優しい笑顔でカールに微笑みかけ、カールを誘うのだ。
ねぇ、カール。私一人じゃさみしいわ。貴方も早く来てちょうだいな。
ああ、それがいい。そうしよう。カールは懐かしい彼女にわらいかけ、戸棚から拳銃とマガジンを取り出した。
死んでキャシーのところに行こう。だがその前に、彼女を殺したライオンマスクの男に一矢むくいてやりたい。
カールはフラフラとアパートから出て行った。今が夕方なのか夜中なのか、カールにはよくわからなかった。
カールはさびしい歩道を歩きながら、ひたすらキャシーに謝罪の言葉をつぶやいていた。
「ごめんよ、キャシー。君を助けられなくて。君は俺に助けを求めていたのに。俺は君の手を取って、一緒に死ぬべきだったんだ。ああ、そうじゃない。俺は君をかばって死ぬべきだったんだ。君は誰からも愛される天使のような女の子だった。俺が君をかばって死ねば、メアリや君の家族は喜ぶだろう。俺は生き恥をさらさず、最後に褒められたかもしれない。カール、よくやった。役立たずの嫌われ者のお前が死んで、愛されているキャシーが助かったって・・・」
カールはブツブツとひとり言を続けながら泣いていた。ここ数日風呂にも入っていないので、口ひげは伸び放題。他人が見れば気がふれていると思われるようないでたちだ。
カールはフラフラと歩き続けながら、誰かに後をつけられているような気分にかられた。最初は気のせいかとも思ったが、コツコツとカールの靴音に重なるように、もう一つの靴音がするのだ。
カールは恐ろしくなってかけ足になった。すると後ろの靴音も早くなる。やはり背後の人物はカールを追いかけて来ているのだ。
カールは悲鳴をあげながら走り続けた。ここ数日の不摂生な生活のためか、カールの肺はすぐに悲鳴をあげ、すぐに走る事ができなかった。
ついにカールはけつまずいて道路に倒れた。恐る恐る後ろを振り向くと、そこには予想していた通りのライオンマスクの男が斧をたずさえて立っていた。
カールはどこにそんな力があったのかと自分で驚くくらいの大声で叫んでいた。これからカールは殺されるのだ。キャシーが殺されたように。
そこまで考えて、カールは突然激しい怒りにかられた。
自分はここで殺されるだろう。だがただでは殺されない。キャシーが感じた恐怖を少しでも奴にわからせてやる。
カールはズボンの後ろにねじこんでいた拳銃を構えた。
彼女は優しい笑顔でカールに微笑みかけ、カールを誘うのだ。
ねぇ、カール。私一人じゃさみしいわ。貴方も早く来てちょうだいな。
ああ、それがいい。そうしよう。カールは懐かしい彼女にわらいかけ、戸棚から拳銃とマガジンを取り出した。
死んでキャシーのところに行こう。だがその前に、彼女を殺したライオンマスクの男に一矢むくいてやりたい。
カールはフラフラとアパートから出て行った。今が夕方なのか夜中なのか、カールにはよくわからなかった。
カールはさびしい歩道を歩きながら、ひたすらキャシーに謝罪の言葉をつぶやいていた。
「ごめんよ、キャシー。君を助けられなくて。君は俺に助けを求めていたのに。俺は君の手を取って、一緒に死ぬべきだったんだ。ああ、そうじゃない。俺は君をかばって死ぬべきだったんだ。君は誰からも愛される天使のような女の子だった。俺が君をかばって死ねば、メアリや君の家族は喜ぶだろう。俺は生き恥をさらさず、最後に褒められたかもしれない。カール、よくやった。役立たずの嫌われ者のお前が死んで、愛されているキャシーが助かったって・・・」
カールはブツブツとひとり言を続けながら泣いていた。ここ数日風呂にも入っていないので、口ひげは伸び放題。他人が見れば気がふれていると思われるようないでたちだ。
カールはフラフラと歩き続けながら、誰かに後をつけられているような気分にかられた。最初は気のせいかとも思ったが、コツコツとカールの靴音に重なるように、もう一つの靴音がするのだ。
カールは恐ろしくなってかけ足になった。すると後ろの靴音も早くなる。やはり背後の人物はカールを追いかけて来ているのだ。
カールは悲鳴をあげながら走り続けた。ここ数日の不摂生な生活のためか、カールの肺はすぐに悲鳴をあげ、すぐに走る事ができなかった。
ついにカールはけつまずいて道路に倒れた。恐る恐る後ろを振り向くと、そこには予想していた通りのライオンマスクの男が斧をたずさえて立っていた。
カールはどこにそんな力があったのかと自分で驚くくらいの大声で叫んでいた。これからカールは殺されるのだ。キャシーが殺されたように。
そこまで考えて、カールは突然激しい怒りにかられた。
自分はここで殺されるだろう。だがただでは殺されない。キャシーが感じた恐怖を少しでも奴にわからせてやる。
カールはズボンの後ろにねじこんでいた拳銃を構えた。
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