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アレックスの怒り

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 レイチェルが朝に目を覚ますと、すでにエイミーはベッドにいなかった。もう起きているようだ。レイチェルが身支度をしてリビングに行くと、家人たちが全員そろっていた。

 アレックスはソファに座り、足をくんでふんぞりかえっている。エイミーとキティは床に座り神妙な顔つきだ。

 どうやらおしおきの真っ最中なようだ。テーブルにはコーンフレークの箱と牛乳が用意されていた。きっとレイチェルの朝食だろう。これを食べてさっさと学校に行けというのだ。

 レイチェルは雰囲気の悪いリビングでモソモソと朝食を食べた。

「それじゃあ、エイミーは夜遅くなっているという事に気づいていて、キティの遊びをやめさせなかったのね?」

 アレックスは低い声でエイミーみ確認した。エイミーはビクリと身体を震わせてから答えた。

「はい。キティが公園でとても楽しそうに遊んでいたので、ついつい時間が長くなってしまいました」
「エイミー。私が貴女とキティに外出を許したのは、夕方までに必ず家に帰るという約束の元に許可を出したのよ?これは契約違反になるんじゃない?」
「はい、その通りです。どんな罰もお受けします」
「ええ、考えておくわ。次にキティ」

 アレックスの矛先が自分に向いたのを悟ったキティはギクッと大きく身体を震わせた。アレックスは地をはうような低い声で言った。

「キティ。貴女は、エイミーが優しいからといって、いつもわがままを言っているわね?」
「・・・。ちょっとだけだよ、」

 バンッ。キティが震えながら答えると、アレックスが立ち上がってテーブル
を強く叩いた。レイチェルの食べていたコーンフレークの皿がグラリと揺れた。

「キティ!確かに年齢はエイミーの方が上かもしれない!だけどね、エイミーはまだ殺人鬼との戦いに慣れていないのよ?!それをキティは危険にさらしたの!」
「・・・。ご、ごめんなさぁい」

 アレックスの剣幕に、ついにキティは泣き出した。レイチェルは、キティが可哀想で、アレックスとの間に入ってとりなしてやりたい気持ちもあったが、アレックスの顔を見て諦めた。

アレックスの目に涙が浮かんでいたからだ。アレックスは強い女性だ。レイチェルたちのリーダーだ。レイチェルはアレックスの指示に忠実に従う決意だ。

 だがアレックスだとて女性だ。娘のように可愛がっているキティが、自分のいない時に殺人鬼に襲われたのだ。どんなに心配しただろう。

 レイチェルのように、不安にかられながら車を走らせていたに違いない。キティだけではない、エイミーの事もレイチェルの事も、アレックスは妹のように大切にしてくれる。

 殺人鬼に襲われる日常でなければ、アレックスはとてもあたたかくて優しい女性のはずだ。

 レイチェルは横目でアレックスたちのやり取りを見ながら、流しで皿を洗い学校へ向かった。
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