殺人鬼から逃げ切ったら超能力が目覚めた件〜ファイナルガールズの逆襲

レイチェルの衝撃

　キティがようやく落ち着いたのは、ニワトリ男が黒い消し炭になった頃だった。

　アレックスは抱きしめていたキティをエイミーにあずけると、レイチェルの元にやって来た。

「レイチェル、戻ってきてくれて良かった」

　アレックスはそういうとレイチェルを強く抱きしめた。レイチェルは悲鳴をあげたいほど身体が痛かったが、アレックスを抱きしめ返した。

　アレックスの言葉の意味を理解していたからだ。レイチェルはさっきまでバケモノになりかけていた。

　こちら側に戻って来れたレイチェルは自分という存在をはっきり理解した。ニワトリ男をはじめとする殺人鬼たちは元人間だったのだ。

　そしてレイチェルたちと同じように覚醒者だった。だが人間とバケモノとの均衡を違えてバケモノになってしまったのだ。

　レイチェルもバケモノになるところだったが、エイミーのおかげて人間側に戻ってくる事かできたのだ。

　落ち着いたキティは、レイチェルの身体を元通りに戻してくれた。

「レイチェル、元の美人に戻ったよ？お帰り、レイチェル」
「ただいま。キティ」

　レイチェルはキティを抱き上げて抱きしめた。

　レイチェルたちはクタクタになりながらアパートに帰った。順番にシャワーを浴びた。本来ならば今夜はエイミーとキティが夕飯を作ってくれる予定だったが、それはおあずけになった。

　レイチェルたちは空腹だったが、それ以上に疲労困ぱいだった。アレックスはキティとエイミーをにらみながら厳しい声で言った。

「キティ、エイミー。今日はもう遅いから言わないけど、明日みっちりお説教するからね？」

　キティとエイミーは真っ青な顔でうなずいた。

　レイチェルはエイミーと部屋のベッドに入りながらなぐさめるように言った。

「大丈夫だよエイミー。アレックスはエイミーとキティの事を心配してるからお説教するんだよ？」
「う、うん。それはわかってるんだけど、やっぱり私が悪いんだわ。私がキティに厳しくしていれば、あんな事にならなかったんだわ」

　エイミーは後悔しているのだ。レイチェルがバケモノになりかけたきっかけを作ってしまった事を。

　レイチェルは話題をかえなければとあせり、ある事を思い出した。

「そういえばエイミー。あの時私にキスしたでしょ？」

　それまで落ち込んでいたエイミーがガバリとレイチェルを振り返った。エイミーの顔は真っ赤だった。