殺人鬼から逃げ切ったら超能力が目覚めた件〜ファイナルガールズの逆襲

怒りのレイチェル2

　辺りはどんどん暗くなっていく。エイミーからのメッセージは、一言助けてだけだった。一体エイミーたちはどんな危機にみまわれているのだろうか。

　銃を持った悪い人間に捕まってしまったのだろうか。それならばそこまで心配する事はないだろう。エイミーは銃弾の方向を予測できるし、キティは銃に撃たれた傷も瞬時に治せる。

　だからそんな事ではエイミーはレイチェルに助けを呼ばない。エイミーたちはもっと危険な事に巻き込まれているのだ。

　例えば、殺人鬼に襲われる。レイチェルは自身の考えにブルリと身体を震わせた。

　大丈夫、大丈夫。もう何度目かもわからない言葉を心の中でつぶやく。そうでもしないと不安で泣き出しそうになってしまうからだ。

　レイチェルは地上を見下ろす。そろそろエイミーたちのいる場所にさしかかつている。ここは大きな公園があり、子供たちが遊べる遊具も備えつけられている。

　おおかたキティにせがまれて遅くまで遊んでいたのだろう。レイチェルは目的地を定めると、一気に急降下した。落下速度に加えて念動力で速度を早める。地上までの時間がもどかしかった。

　レイチェルの視線の先にアスレチックジムなどの遊具が見えてきた。その先に人がいる。一人は大柄、その側に小柄な人物。少し離れて小さな人物。

　大柄な人物は夜目にもわかる奇妙なニワトリマスクをかぶっている。殺人鬼だ。今まさに殺人鬼に切りつけられかけているのは、エイミーだ。

　レイチェルは間に合ったと思う安心感と同時に、腹の底から怒りがわいた。上空から、ありったけの念動力を使ってニワトリ男の動きを止めた。

　前に倒れ込んでいるエイミーをかばうように仁王立ちになると、念動力でニワトリ男を吹っ飛ばした。

「私のエイミーに何すんのよ！」

　ニワトリ男はトラックに跳ね飛ばされたような勢いで飛んでいった。レイチェルは急いでエイミーを振り返って、彼女の安全を確認した。

「エイミー！大丈夫？！」
「あ、ありがとう。レイチェル」

　どうやらエイミーは無事のようだ。レイチェルはホウッと息をはいてエイミーを強く抱きしめた。　

　視線をキティに向けると、キティがこちらに走ってきている。レイチェルがキティに念動力をかけると、彼女はイタズラ好きの妖精のようにフワリとレイチェルの腕の中におさまった。

「レイチェルお帰り！」
「ただいまキティ」
「レイチェル、今日の夕飯」

　キティの指差した場所に目を向けると、エイミーの黄色いショッピングバッグが落ちていた。

　レイチェルはショッピングバッグに念動力をかけると、黄色いバッグはフワフワと飛んできて、キティの手の中に落ちた。

「今日はね、ミートソースを作るんだよ？」
「それは楽しみね。でもその前にニワトリ男を倒さなくちゃね！」

　レイチェルはエイミーとキティを抱き上げたまま、奇声をあげながらかけよって来るニワトリ男をにらんだ。

　ちょうどその時、キティの携帯電話に着信が入った。アレックスからだ。キティが電話をとると、アレックスは車ですぐそこまで来ているという。

　レイチェルはエイミーとキティを抱き上げたまま、ニワトリ男が自分たちを見失わないように空を飛んだ。