殺人鬼から逃げ切ったら超能力が目覚めた件〜ファイナルガールズの逆襲

エイミーとキティの危機2

「そんな事できるわけないでしょ？！」

　エイミーは驚きのあまり、大声で叫んだ。妹のように可愛いキティを殺人鬼に向かって投げろだなどと、死んだってできない。

「あたしとエイミーじゃ戦えない！アレックスとレイチェルが来るまであたしたちが確実に生き残る選択をするの。あたしはニワトリ男に切り刻まれたって平気。だけど、あたしとエイミーが同時に切り刻まれたら、エイミーの治癒が遅れてしまうかもしれない。それなら、あたしがおとりになって、エイミーの逃げる時間を稼いだ方が、あたしたちが生き残る確率があがるの！」

　キティの言う通りかもしれない。エイミーは羊男以外の殺人鬼に遭遇するのが初めてだ。キティの方が殺人鬼に対応し慣れている。キティの状況判断の方が正しい。

　だが、エイミーはキティの言う通りにする事はできなかった。頭では理解していても、心が納得しなかった。

　ナイフを高々と振り上げたニワトリ男と、キティを抱えたエイミーとの距離がグングン近づいて来る。

　後一歩ニワトリ男が踏み込めば小柄なエイミーの背中は無惨に斬り裂かれる。その時、エイミーは勢い良く肩に担いでいたキティを前方に放り投げた。

　キティの顔がびっくりした表情になる。その顔が年相応に幼くて、エイミーは少し笑った。

　キティならば、高いところから落ちても、きっとケガを治癒できるだろう。エイミーはキティが落下するであろう場所から、右に方向を変えて全速力で走った。

　エイミーの脳裏には、何度も自分のあわれな末路が映し出される。このままではナイフを脳天に突き刺される。少し身体をひねればどうだろう。だめだ、肋骨ごと心臓を斬り裂かれる。

　これならどうだろう。エイミーは左側に身体を傾けた。するとエイミーの一秒後の未来は、右肩を斬り裂かれるものになった。

　これならば一撃を受けても、キティの治癒で助かる事ができそうだ。エイミーは次に来るであろう激痛に備えて目を強くつむった。

　その直後、エイミーを守るように、空から天使が舞い降りてきた。遅れて、天使は待ち望んでいたレイチェルだという事に気づいた。

「私のエイミーに何すんのよ！」

　前につんのめって倒れてエイミーが後ろを振り向くと、長い髪をはためかせたレイチェルの後ろ姿が目に飛び込んだ。

　エイミーはホッと息をはいた。全身がブルブルと震え、ゆっくりと生きている事を実感した。

　そしてレイチェルの言葉、私のエイミーの部分に頬が熱くなった。