上 下
83 / 145

レイチェルとエイミー4

しおりを挟む
 リンダたちからエイミーを助け出した事があって以来、レイチェルとエイミーの距離はぐんと近づいた。

 エイミーは次第にレイチェルになつき、笑顔を見せてくれるようになった。

 その愛らしさといったら。まるで懐いてくれなかった可愛らしい小動物が、やっとレイチェルの手に頬を擦り寄せてくれたようなものだ。

 レイチェルはエイミーと友達になれた事が嬉しくて、常にエイミーと一緒にいた。エイミーと離れている時は、バーガーショップのアルバイトをしている時くらいだった。

「もう、レイチェルったら。さっきからエイミーって子の話しばっかりね」

 親友のケィティがお皿を洗いながらぼやくように言った。ケィティはレイチェルがエレメンタリースクールにいた頃からの親友だ。

 ケィティの誘いでレイチェルもバーガーショップでアルバイトする事になったのだ。

 レイチェルはケィティから受け取ったお皿を食器乾燥機に入れながら答えた。

「だってぇ。これまでずっと懐いてくれなかったエイミーがやっと心を開いてくれたんだよ。控えめに笑った笑顔が、もう可愛くって!」
「もう、レイチェルったら。まるでエイミーに恋してるみたいね?」
「こ、恋?!そんなわけないでしょ?!エイミーは女の子よ!エイミーは本当に可愛いんだから!ケィティだってエイミーに会ったらきっと好きになるわ」

 ケィティの言葉にレイチェルはギクリとした。まるで心の奥底にカギをかけてしまっておいたモノを開けられたような感覚だった。

 レイチェルはエイミーに恋などしていない。これは純粋な友情だ。レイチェルは少しだけ、自分のエイミーへの気持ちを傷つけられたような気持ちになった。

 ケィティは困った妹を見る姉のような顔になって苦笑しながら言った。

「はいはい、そういう事にしといてあげる」
「あっ、信じてないな!それに、私気になる男の子がいるんだから!」
「えっ?!それ初耳。ちょっと、誰なのよ、レイチェル。白状しなさい」

 ケィティは途端に目を輝かせてレイチェルにつめよった。ケィティにとっては、可愛い女友達の話しより、恋のお話の方がよっぽど興味があるのだ。

 レイチェルは引っ込みがつかなくなり、ほんの少しだけ好感を持っていた同級生の名前をあげた。

「ケィティ。ここだけの事にしておいてよ?私の事を気遣って、この子に話しかけたりなんて絶対にしないでね?」
「わかってるわよぉ。レイチェル、早く早く」
「その、ラグビー部のマイケル」
「キャァ!マイケルに声かけてみなよ!レイチェル。絶対マイケルだって悪い気はしないって」
「ちょっと!本当に、少しだけ気になってるだけだからね」
「わかった、わかった」

 顔を真っ赤にしたレイチェルを、ケィティはニヤニヤ顔で眺めた。そこで店長の苦笑混じりの声がかかる。

「さぁ、女の子たち。恋の話しに花を咲かせるのは青春だが、口以上に手を動かしてくれるかな?」
「「はぁい、店長」」

 レイチェルとケィティはペロッと舌を出して笑いあった。

 その後レイチェルはケィティにエイミーを紹介した。ケィティはエイミーの可愛さにメロメロになってしまい、レイチェルとケィティとエイミーは、まるでずっと昔から友達だったように親友になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

これ友達から聞いた話なんだけど──

家紋武範
ホラー
 オムニバスホラー短編集です。ゾッとする話、意味怖、人怖などの詰め合わせ。  読みやすいように千文字以下を目指しておりますが、たまに長いのがあるかもしれません。  (*^^*)  タイトルは雰囲気です。誰かから聞いた話ではありません。私の作ったフィクションとなってます。たまにファンタジーものや、中世ものもあります。

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

女ハッカーのコードネームは @takashi

一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか? その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。 守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。

処理中です...