殺人鬼から逃げ切ったら超能力が目覚めた件〜ファイナルガールズの逆襲

エイミーの特訓4

　エイミーは猛ダッシュでアレックスに向かって走った。アレックスは後ろ手に縛られているとは思えない美しい動きでエイミーにハイキックを放った。

　エイミーは身体を低くしてアレックスのハイキックを避けると、彼女の懐に入り首すじをかかえて転倒させようとした。

　だがアレックスは片足で立っているというのに、まるで微動だにせず、あげている足でエイミーの胴にミドルキックを入れた。
　
　エイミーは横に吹っ飛んでうずくまった。レイチェルはたまらずエイミーに駆け寄ろうとするが、キティに止められる。

「止めちゃダメだよ、レイチェル。エイミーはね、真剣なんだから」

　レイチェルは仕方なくあげた腰をもう一度落ち着ける。

　エイミーはヨロヨロと立ち上がるが、心なしか呼吸が浅く、ヒュッヒュッと短い呼吸を繰り返している。レイチェルが不安になってキティに聞くと、キティは視線をエイミーに向けながらつぶやくように言った。

「エイミーは肋骨にヒビが入ったみたい。だから呼吸がうまくできないんだ」
「そんな！早く戦いをやめさせなきゃ！」
「ダメだよ、レイチェル。エイミーがこれから戦う相手は殺人鬼だよ？ケガしたから攻撃をやめてくれる相手じゃないんだよ」

　キティの厳しい言葉に、レイチェルは泣き出したくなった。レイチェルが両手を握りしめながらエイミーを見ると、彼女はしっかりと立って、アレックスと大事していた。

「エイミー、もうおしまい？」
「いいえ。続けてください」

　エイミーは先ほどよりもかんまんな動きでアレックスに向かって行った。アレックスはまるでダンスでも踊っているかのように、エイミーに向けて右足のけりを繰り出した。

　エイミーはふらふらになりながら、アレックスのけりを避けた。エイミーはアレックスにしがみついてけりを出させないようにしようとしているようだ。

　アレックスは片足のまま、ピョンとエイミーから下がり、ジャンプして右足と左足を入れ替えたと同時に、左足でエイミーの側頭部にけりをいれた。

　エイミーが吹っ飛ばされて地面に叩きつけられる直前、レイチェルはたまらず念動力を使った。

　エイミーは空中でフワリと停止した。レイチェルはエイミーに走り寄って彼女の顔を見ると、鼻血が出て血だらけだった。

「エイミー！もうやめて！すごいケガしてる」

　エイミーはレイチェルをにらんでから、ペッとつばを吐いた。つばは血に染まっている。

「レイチェルは口をはさまないで。私は強くなりたいの、自分の事を守れるくらい。でなけりゃ、すぐに殺されてしまう。それとも、なあに？レイチェルが私の事をずっと守ってくれるとでもいうの？できないでしょ？ならおとなしく見てて」

　エイミーと四六時中一緒にいて守る。とても魅力的な案だが、現実的に不可能だ。エイミーにだってプライベートな時間は必要だ。

　レイチェルがぐるぐる考えていると、エイミーはゆっくりと立ち上がってアレックスに向かって歩いて行った。