殺人鬼から逃げ切ったら超能力が目覚めた件〜ファイナルガールズの逆襲

エイミーの特訓

　エイミーの特訓は、身体作りから始まった。エイミーはそれまで三ヶ月間以上も冷凍されていたのだ。エイミーの身体はやせ細り、固まっていた。

　レイチェルが学校に行っている間、エイミーは長い時間をかけて身体中のストレッチをし、無理をしない程度の筋肉トレーニングを行っていた。

　レイチェルが学校から戻ると、エイミーは疲れの色が濃い笑顔で出迎えてくれた。
　
　レイチェルはエイミーが心配で仕方なかった。アレックスに、エイミーの特訓はゆっくり時間をかけてもらえないかと進言したが、アレックスは困った顔で答えた。

「エイミーが聞かないのよ、早く戦えるようになりたいって。この家にいさえすれば、私とキティがいて守ってあげられるから心配ないと言っているんだけどね」

　どうやら無茶なトレーニングはエイミーの意志らしい。レイチェルは夜、一緒のベッドで眠る時にエイミーに声をかけた。

「ねぇ、エイミー。早く身体作りをするのは大事だけど、急にやりすぎたら後がもたないわ？私なんかアレックスのしごきに、毎回吐いてたもの。これからいくらでも厳しくなるんだから、最初の身体作りはゆっくり時間をかけたらどうかしら？」

　レイチェルの苦言に、エイミーは茶色の大きな瞳をクリクリさせて答えた。

「大丈夫よ、レイチェル。私、色々な事考えちゃって。だから身体を動かしていた方がいいの。それにね、身体が疲れたら、キティに治癒をしてもらうの。そうしたら次の日はまた動けるようになるのよ？」
「そうね、何も考えたくない時は、頭を空っぽにするのに、身体を動かすのはいい事ね。でもキティの治癒は生物の再生能力を底上げしているだけにすぎないの。キティに頼りすぎてはダメよ？」
「はぁい、ママ」

　エイミーはおどけたように返事してレイチェルにすり寄った。その仕草が可愛くて、レイチェルはエイミーを抱きしめながらキツイ声で言った。

「何よ、ママって。私とエイミーは同い年じゃない」
「あはは。だってレイチェル、最近私に口うるさくしすぎなんだもの」

　エイミーの返事に、レイチェルはググッと息を飲んだ。図星だったからだ。レイチェルはエイミーの事が心配で心配で仕方ないのだ。

　レイチェルは羊男に襲われた後、怖くて怖くて何度も叫び声をあげて泣いていた。その度にアレックスとキティが側に来て、レイチェルを気遣ってくれた。

　エイミーも夜中にうなされる事がある。そんな時、レイチェルはすぐに彼女を起こして、汗を拭いたり水を飲ませたりとかいがいしく世話をしていた。

　その時のエイミーは、まるで小さな子供のようにたよりなげなのだ。レイチェルはエイミーから、自分が感じた恐怖を取り除いてあげたくて仕方ないのだ。

　エイミーからすればレイチェルの行動はとても過保護にうつるのだろう。