上 下
72 / 145

エイミーの気持ち5

しおりを挟む
 エイミーはレイチェルとの思い出をゆっくり思い出していた。レイチェルと友達になってからのエイミーの学校生活は一変した。

 エイミーがリンダに嫌がらせをされても、いつもレイチェルが守ってくれるようになった。

 クラスの違うレイチェルの友達のケィティとも友達になれた。ケィティはフワフワの巻き毛の可愛い女の子で、とてもいい子だった。

 エイミーはレイチェルとケィティと一緒にバーガーショップでアルバイトもした。

 楽しい学校生活が卒業まで続き、レイチェルとケィティとの友情は、卒業してからもずっと続くと信じて疑わなかった。

 だが現実は奇妙で残酷だ。エイミーは殺人鬼の手によって一度死に、再び蘇った。

 エイミーという人間は死んでいるので、エイミーとしては二度とケィティと会えなくなった。

 大好きな友達のケィティに二度と会えなくなるのは寂しい。だけどエイミーは大切なレイチェルを守る事ができたのだ。エイミーはそれだけで満足だった。

 レイチェルは、エイミーがレイチェルをかばった事を怒っていた。エイミーを失って、レイチェルがどんなに辛かったかという事をこんこんと説教された。

 勿論エイミーはレイチェルの気持ちなんてわからない。エイミーは自分の気持ちだけで精一杯だったからだ。

 ただ大好きなレイチェルを守れれば自分は死んだってかまわないと思っていたからだ。この考えは、とても自分勝手だ。だがエイミーは自分の命とレイチェルの命を天秤にかければ、レイチェルの命の方がはるかに重いのだ。

 エイミーは羊男に追いかけられている時、自分に不思議な力が備わった事にすぐに気づいた。

 エイミーの脳裏に鮮やかな映像が浮かぶのだ。エイミーはそれが未来の映像だという事を本能的に理解していた。エイミーが行動を起こすたびに、未来は少しづつ変化した。

 だからレイチェルが羊男にナイフで刺された映像を見た時、エイミーの行動でレイチェルが助かるのだと確信していた。

 エイミーは何の迷いもなくレイチェルの身代わりになった。レイチェルは悲壮な表情でエイミーを見つめた。

 走って。深々とナイフを刺されたエイミーには、一言しか言葉を発する事ができなかった。

 レイチェルは弾かれたようにきびすを返して走り出した。これでいい。エイミーはホッと息をはいた。

 エイミーが死ぬ寸前、ビジョンを視た。朝日にあたるレイチェルの姿だ。レイチェルは殺人鬼の魔の手から逃れられたのだ。エイミーは安心して目を閉じた。

 エイミーはレイチェルの仲間のキティによって蘇った。今再びレイチェルの側にいられるのだ。

 エイミーは気持ちよさそうに眠るレイチェルに話しかけた。

「レイチェル。私が貴女を守ろうとすると、貴女は怒るかもしれない。だけど許して?私は自分の事よりも、レイチェルの事が大事なんだもの」

 エイミーは神に懺悔を言い終えたように、晴れやかな気持ちで眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

女ハッカーのコードネームは @takashi

一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか? その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。 守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

これ友達から聞いた話なんだけど──

家紋武範
ホラー
 オムニバスホラー短編集です。ゾッとする話、意味怖、人怖などの詰め合わせ。  読みやすいように千文字以下を目指しておりますが、たまに長いのがあるかもしれません。  (*^^*)  タイトルは雰囲気です。誰かから聞いた話ではありません。私の作ったフィクションとなってます。たまにファンタジーものや、中世ものもあります。

Dark Night Princess

べるんご
ホラー
古より、闇の隣人は常に在る かつての神話、現代の都市伝説、彼らは時に人々へ牙をむき、時には人々によって滅ぶ 突如現れた怪異、鬼によって瀕死の重傷を負わされた少女は、ふらりと現れた美しい吸血鬼によって救われた末に、治癒不能な傷の苦しみから解放され、同じ吸血鬼として蘇生する ヒトであったころの繋がりを全て失い、怪異の世界で生きることとなった少女は、その未知の世界に何を見るのか 現代を舞台に繰り広げられる、吸血鬼や人狼を始めとする、古今東西様々な怪異と人間の恐ろしく、血生臭くも美しい物語 ホラー大賞エントリー作品です

処理中です...