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目的地
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レイチェルは後ろを振り返り、キティに合図する。キティはコクリとうなずいてから、アレックスに何か言った。アレックスは静かに車を減速させる。
羊男はむくりと起き上がると、再びレイチェルの乗っているジープを追いかけだした。
これまでは計画通りだ。羊男との戦闘に、一般の人たちを巻き込んではいけない。羊男に追いかけられた場合。誰もいない場所まで誘導する手はずになっていたのだ。
そのためには羊男に付かず離れずでついてきてもらわなければいけない。レイチェルは羊男が自分たちを見失わないように、さりとて車に追いつかれないように、神経をすり減らせながらじっと観察していた。
どれほど時間が経っただろうか。キティの弾むような声がした。
「レイチェル!もうすぐ目的地だって!」
「ええ、わかったわ」
これからレイチェルたちと羊男の戦いが始まるのだ。レイチェルはかわいたくちびるを無意識になめた。
アレックスが車を停車させた場所は、森の中にある広い平地だった。ここならば誰もやってこないだろうと、以前から目星をつけていた場所だ。
レイチェルは念動力を身体にまとわせてフワリとジープの荷台から降りると、アサルトライフルを構え発砲した。
レイチェルの間近まで迫っていた羊男に当たる。だが羊男はゆっくりとレイチェルに向かってくる。舌打ちするレイチェルのとなりに、アレックスが立った。
彼女の手にはショットガンが握られていた。アレックスはショットガンを構えると、全く身体をぶれさせずに数回発砲した。
羊男はついにあお向けに倒れた。レイチェルたちの後ろでキティの元気な声がする。
「二人ともどいてぇ!危ないよぉ?」
レイチェルとアレックスが左右に離れると、キティがトコトコ歩きながら、手榴弾のピンを抜いていた。
キティはまるでキャッチボールするかのように手榴弾を放り投げた。手榴弾は見事羊男に当たり、爆発した。
手榴弾ももちろんアレックスが作り出したものだ。アレックスはどういうつてか、軍関係者と知り合って、色々な武器を触らせてもらい、レクチャーを受けているらしい。
手榴弾は力の弱いキティにはピッタリの武器だ。万一手榴弾が誤爆しても、キティならすぐに再生できる。
羊男はぴくりとも動かなかった。レイチェルはライフルで狙いを定めながら、ゆっけりと黒コゲになった羊男に近づいた。アレックスが不用意に近づくなとたしなめる。レイチェルは大丈夫だと言って、足を進めた。
どうしても自分の目で確かめたかったのだ。憎き羊男の死を。レイチェルが羊男を見下ろした途端、羊男はガバリと起き上がった。
レイチェルは短く舌打ちをした。これは罠だったのだ、レイチェルを自分に近づけさせるための。
レイチェルは羊男の腹にライフルを打ち込もうとしたが、それよりも早く羊男が手に持ったナイフがレイチェルに振り下ろされようとしていた。
レイチェルがこれからくる痛みを覚悟すると、小さなものがレイチェルにしがみついてきた。遅れてキティに抱きつかれたのだとわかった。
「キティ!!」
レイチェルの身体からぼとりと落ちたキティの背中には、深々とナイフが突き刺さっていた。レイチェルは途端に、親友のエイミーの姿を思い出し、叫び声をあげた。
羊男はむくりと起き上がると、再びレイチェルの乗っているジープを追いかけだした。
これまでは計画通りだ。羊男との戦闘に、一般の人たちを巻き込んではいけない。羊男に追いかけられた場合。誰もいない場所まで誘導する手はずになっていたのだ。
そのためには羊男に付かず離れずでついてきてもらわなければいけない。レイチェルは羊男が自分たちを見失わないように、さりとて車に追いつかれないように、神経をすり減らせながらじっと観察していた。
どれほど時間が経っただろうか。キティの弾むような声がした。
「レイチェル!もうすぐ目的地だって!」
「ええ、わかったわ」
これからレイチェルたちと羊男の戦いが始まるのだ。レイチェルはかわいたくちびるを無意識になめた。
アレックスが車を停車させた場所は、森の中にある広い平地だった。ここならば誰もやってこないだろうと、以前から目星をつけていた場所だ。
レイチェルは念動力を身体にまとわせてフワリとジープの荷台から降りると、アサルトライフルを構え発砲した。
レイチェルの間近まで迫っていた羊男に当たる。だが羊男はゆっくりとレイチェルに向かってくる。舌打ちするレイチェルのとなりに、アレックスが立った。
彼女の手にはショットガンが握られていた。アレックスはショットガンを構えると、全く身体をぶれさせずに数回発砲した。
羊男はついにあお向けに倒れた。レイチェルたちの後ろでキティの元気な声がする。
「二人ともどいてぇ!危ないよぉ?」
レイチェルとアレックスが左右に離れると、キティがトコトコ歩きながら、手榴弾のピンを抜いていた。
キティはまるでキャッチボールするかのように手榴弾を放り投げた。手榴弾は見事羊男に当たり、爆発した。
手榴弾ももちろんアレックスが作り出したものだ。アレックスはどういうつてか、軍関係者と知り合って、色々な武器を触らせてもらい、レクチャーを受けているらしい。
手榴弾は力の弱いキティにはピッタリの武器だ。万一手榴弾が誤爆しても、キティならすぐに再生できる。
羊男はぴくりとも動かなかった。レイチェルはライフルで狙いを定めながら、ゆっけりと黒コゲになった羊男に近づいた。アレックスが不用意に近づくなとたしなめる。レイチェルは大丈夫だと言って、足を進めた。
どうしても自分の目で確かめたかったのだ。憎き羊男の死を。レイチェルが羊男を見下ろした途端、羊男はガバリと起き上がった。
レイチェルは短く舌打ちをした。これは罠だったのだ、レイチェルを自分に近づけさせるための。
レイチェルは羊男の腹にライフルを打ち込もうとしたが、それよりも早く羊男が手に持ったナイフがレイチェルに振り下ろされようとしていた。
レイチェルがこれからくる痛みを覚悟すると、小さなものがレイチェルにしがみついてきた。遅れてキティに抱きつかれたのだとわかった。
「キティ!!」
レイチェルの身体からぼとりと落ちたキティの背中には、深々とナイフが突き刺さっていた。レイチェルは途端に、親友のエイミーの姿を思い出し、叫び声をあげた。
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