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黒い影
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レイチェルができたてのバーガーが入った袋を抱えて、アパートに戻ろうとしていると、誰かにあとをつけられている気配がした。
最初はいつものガラの悪い男かと思った。次の日も学校がある事だし、早く片づけてしまおうと思ったレイチェルは、つけている相手が自分を見失わないようにゆっくりと速度を変えずに歩き続けた。
レイチェルが人気の無い路地まで追跡者を誘導してから立ち止まった。相手がレイチェルの近くまで来た事を確認してから、ゆっくりと振り向いた。
「ナンパならお断りよ?ケンカなら買ってあげる」
レイチェルの目の前にニメートール近い大男が立っていた。その男は奇妙な羊のかぶり物をしていた。
羊男。レイチェルは背筋に電流が走ったような感覚を覚えた。レイチェルは親友の仇を討つために、ひたすら特訓をしてきた。ついにその時が来たのだ。
羊男は無言でレイチェルにナイフを振り上げた。レイチェルは素早く羊男と距離を取ると、背中にしょっていたリュックサックにハンバーガーの袋をつめこんだ。形が潰れてしまうだろうが仕方ない。
レイチェルは次に、リュックサックの底にしまってある拳銃を取り出して構えた。
不思議と恐怖は感じなかった。これでエイミーの仇を討てるのだと考えると、感動で涙があふれてきそうになった。
羊男は意味のわからない叫び声をあげながらレイチェルにかけて来る。レイチェルは狙いをさだめて引きがねを引いた。
パンパンと爆竹が弾けるような音がする。全弾羊男に命中したが、羊男の速度は弱まらなかった。
アレックスのように射撃の腕が高ければ、振り上げるナイフを持った手を撃ち抜く事ができるだろうが、レイチェルの腕では大きな胴体に当てるだけが精一杯だった。
仕方なく拳銃をリュックサックにしまうと、腰のベルトから四本のナイフを取り出した。
レイチェルは念動力でナイフを空中に浮かせると、羊男に攻撃するように念じだ。
四本のナイフは、まるで意志を持ってでもいるように、羊男の周りを飛び回った。羊男は空飛ぶナイフを嫌がって、手に持つナイフではたき落とそうとするが、ナイフは羊男の攻撃をスルリとよけて、首や腹に突き刺さった。
羊男はギャァと響き渡るような大声を出すが、倒れる事はなかった。つまりレイチェルの攻撃はちっとも羊男にきいていないのだ。
レイチェルはため息をついてから、クルリときびすをかえし走り出した。羊男はレイチェルの後について来る。
レイチェルは自身の身体に念動力をかけて、フワリと身体を浮かせ、近場の建物の屋根に飛び上がった。
レイチェルは屋根づたいに走り出す。羊男は地上からレイチェルを追いかける。
レイチェルはポケットから携帯電話を取り出してコールした。
「どうしたの?レイチェル」
すぐさまおだやかなアレックスの声がする。レイチェルは心がじんわりと暖かくなるのを感じた。レイチェルは一人ではない、心強い仲間がいるのだ。
「帰り道懐かしい人に会ったの。誰だと思う?」
「レイチェルの会いたかった人?」
「当たり!今ナイフを振り上げて、熱烈に私を追いかけてきてるの」
「まぁ、彼は貴女の大ファンなのね?!私もあいさつしたいわ。今どこ」
「32ストリートを走ってる」
「わかったわ。キティと車で向かうわ。彼に貴女を見失わせないでね?」
「ええ。待ってるわ」
レイチェルは電話を切ると、胸が浮き立つような気持ちになった。文字通りレイチェルはフワリと建物の屋根から降りて、羊男に手を振った。
「私の仲間も貴方に会いたいって!ぜひ紹介したいの」
レイチェルはそれだけ言うと、フワリと飛び上がりながら、羊男と距離を保ち続けた。
最初はいつものガラの悪い男かと思った。次の日も学校がある事だし、早く片づけてしまおうと思ったレイチェルは、つけている相手が自分を見失わないようにゆっくりと速度を変えずに歩き続けた。
レイチェルが人気の無い路地まで追跡者を誘導してから立ち止まった。相手がレイチェルの近くまで来た事を確認してから、ゆっくりと振り向いた。
「ナンパならお断りよ?ケンカなら買ってあげる」
レイチェルの目の前にニメートール近い大男が立っていた。その男は奇妙な羊のかぶり物をしていた。
羊男。レイチェルは背筋に電流が走ったような感覚を覚えた。レイチェルは親友の仇を討つために、ひたすら特訓をしてきた。ついにその時が来たのだ。
羊男は無言でレイチェルにナイフを振り上げた。レイチェルは素早く羊男と距離を取ると、背中にしょっていたリュックサックにハンバーガーの袋をつめこんだ。形が潰れてしまうだろうが仕方ない。
レイチェルは次に、リュックサックの底にしまってある拳銃を取り出して構えた。
不思議と恐怖は感じなかった。これでエイミーの仇を討てるのだと考えると、感動で涙があふれてきそうになった。
羊男は意味のわからない叫び声をあげながらレイチェルにかけて来る。レイチェルは狙いをさだめて引きがねを引いた。
パンパンと爆竹が弾けるような音がする。全弾羊男に命中したが、羊男の速度は弱まらなかった。
アレックスのように射撃の腕が高ければ、振り上げるナイフを持った手を撃ち抜く事ができるだろうが、レイチェルの腕では大きな胴体に当てるだけが精一杯だった。
仕方なく拳銃をリュックサックにしまうと、腰のベルトから四本のナイフを取り出した。
レイチェルは念動力でナイフを空中に浮かせると、羊男に攻撃するように念じだ。
四本のナイフは、まるで意志を持ってでもいるように、羊男の周りを飛び回った。羊男は空飛ぶナイフを嫌がって、手に持つナイフではたき落とそうとするが、ナイフは羊男の攻撃をスルリとよけて、首や腹に突き刺さった。
羊男はギャァと響き渡るような大声を出すが、倒れる事はなかった。つまりレイチェルの攻撃はちっとも羊男にきいていないのだ。
レイチェルはため息をついてから、クルリときびすをかえし走り出した。羊男はレイチェルの後について来る。
レイチェルは自身の身体に念動力をかけて、フワリと身体を浮かせ、近場の建物の屋根に飛び上がった。
レイチェルは屋根づたいに走り出す。羊男は地上からレイチェルを追いかける。
レイチェルはポケットから携帯電話を取り出してコールした。
「どうしたの?レイチェル」
すぐさまおだやかなアレックスの声がする。レイチェルは心がじんわりと暖かくなるのを感じた。レイチェルは一人ではない、心強い仲間がいるのだ。
「帰り道懐かしい人に会ったの。誰だと思う?」
「レイチェルの会いたかった人?」
「当たり!今ナイフを振り上げて、熱烈に私を追いかけてきてるの」
「まぁ、彼は貴女の大ファンなのね?!私もあいさつしたいわ。今どこ」
「32ストリートを走ってる」
「わかったわ。キティと車で向かうわ。彼に貴女を見失わせないでね?」
「ええ。待ってるわ」
レイチェルは電話を切ると、胸が浮き立つような気持ちになった。文字通りレイチェルはフワリと建物の屋根から降りて、羊男に手を振った。
「私の仲間も貴方に会いたいって!ぜひ紹介したいの」
レイチェルはそれだけ言うと、フワリと飛び上がりながら、羊男と距離を保ち続けた。
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