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ユリスのひとり言

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 ユリスは騎士団の病院の屋根の上でひなたぼっこをしていた。一人でぼんやりと考える時間が欲しかったからだ。

 フィンとブランはマリンと一緒に市場に買い物に行ってしまった。冒険者ボッスに姿を変えたセミルは、騎士団長たちとしきりに会議をしている。イエーリの悪事の真相を暴くためだ。

 メディーナ魔法学校の校長室の床下から、校長の白骨遺体が発見された。この事からメディーナ魔法学校はしばらく休校する事になった。バンスの他にイエーリの仲間がいないか調べるために、教師や関係者が厳しい取り調べを受けた。

 今のところ食堂に勤める調理人たちが魔法薬で操られていた事がわかった。魔力の強い生徒に魔法薬を飲ませるためだろう。

 ユリスは事の次第を兄であるレオンスに話した。レオンスはすぐに魔法大臣と連携をとり、新たな校長の派遣とメディーナ魔法学校の改善に動いてくれた。

 レオンスはメディーナ魔法学校に、イエーリによって殺害された校長の銅像をたてようと提案してくれた。ユリスはとても良い考えだと思った。

 メディーナ魔法学校の校長は貴族だけではなく町民も農民も魔力のある者は魔法使いになるチャンスを与えたいという方針だった。きっとこれからもその信念は受け継がれていくだろう。

 ユリスはハァッとため息をついた。フィンとブランのおかげで城を出てから色々な事が起こった。

 フィンとブランと一緒に冒険者の依頼をこなした事。魔法使いセミルに弟子入りして、魔法の修行をした事。実際には体力の向上だったわけだが。

 セミルたちと共に凶悪な魔法使い集団のせん滅の依頼を受けた事。内情を知るために魔法学校に潜入した事。思いがけずマテウスとマリンと友達になれた事。

 ユリスはこれまでに体験した事を思い出して微笑んだ。とても楽しかった。ユリスはいつも一人でいた。それが、フィンと泥だらけになって修行して帰るとセミルが沢山の食事を作ってお帰りと言ってくれる。

 だが楽しかった時間もこれで終わりだ。フィンとブランはレムーリア国に帰らなければいけない。師匠であるセミルだとて、赤髪のセミルの事を知っている者が多いシュロム国では暮らしにくいだろう。

 これからユリスは一人になってしまう。それがとても寂しかった。城を出ようと決めた時は、一人になる事は気にならなかった。

 城での生活はいつも孤独だったからだ。だが、あたたかい仲間たちとの暮らしを経験してしまったため、一人になる事がこの上もなく寂しく感じてしまうのだ。ユリスは自ちょう気味に笑った。

 
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