ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される

反撃

「ははは！鬼ごっこは終わりか？小僧ども！」

　フィンたちが後ろを振り向くと、仮面をかぶった十一人の魔法使いがいた。仮面をつけた魔法使いの親玉イエーリは、さもおかしそうに言った。

「おい、さっきまでのいせいはどうした？俺たちを倒すんじゃなかったのか？」

　イエーリの横に立っていた仮面の魔法使いが言った。

「もう面倒だからこいつら殺しちゃいましょうよ？校長」
「今はボスだろ！お前わざとやってるだろうバンス！」

　イエーリは横の男をバンスと呼んだ。バンスとはメディーナ魔法学校の教師だ。フィンはそこでやっと、以前戦った仮面の魔法使いが教師のバンスだという事に気づいた。そしてバンスがイエーリを校長と呼ぶという事は、メディーナ魔法学校の校長はイエーリという事になる。

「そうか、バンス先生だったんですね？」
「そうだよ、グリフィン」

　バンスはニヤニヤ笑いながら仮面を外した。そこにはフィンとクゼリの魔法戦をけしかけた教師がいた。フィンはバンスに言った。

「いいんですか？バンス先生、僕らに素顔を見せちゃって」
「いいのいいの、どうせお前ら殺すから。あ、そういやぁグリフィン。お前魔法を無効化できる剣を作れたなぁ」
「はい、作れますよ」

　バンスはニヤリと笑ってからイエーリに言った。

「ボス、グリフィンだけは生かしておきましょう。このガキの作る武器は魔法を無効化できるんです」
「ほぉ。そんな武器が手に入れば無敵だな。よしグリフィン、ユーリと契約霊獣を殺されたくなければ剣を作れ。さもなければ友達のユーリの足が吹っ飛ぶぞ」

　フィンは仮面をつけたイエーリとバンスをにらんで言った。

「貴方たちは人の命を何とも思わない悪い魔法使いだ、そんな人間には死んだって渡さない！」

　フィンの言葉にイエーリはおかしそうに笑って言った。　

「そう言っていられるのも今のうちだ。どうせお前たちは人質の人形たちがいて手も足もでまい」

　フィンはイエーリに質問した。

「イエーリさん、貴方は仮とはいえメディーナ魔法学校の校長だったんでしょ？学生たちが自分の魔力を必死にみがこうとする姿を見て何も思わなかったんですか？」
「はぁ？生徒のガキ共を見て？あわれだなぁと思っていたよ。たいして魔力も無いくせに、無駄な努力をして。まぁ、多少魔力の強い奴らは少しは役に立ったがな。俺の手足となる人形として」

　フィンは理解した。イエーリもバンスもどうしよもない悪党なのだ。彼らは捕まって自分を見つめなおす時間が必要なのだ。フィンがとなりのユリスを見ると、彼は小さく呪文を唱え続けていた。イエーリたちに気づかれずに。

　辺りはだんだんと霧が濃くなっていく。すでに目の前のイエーリたちがかすむほどに。フィンはユリスに言った。

「ユリス、もうそろそろ？」
「うん。準備はできた」

　ユリスの返事にフィンはうなずきイエーリに言った。

「イエーリさん。セミルをここに呼んでも後悔しませんか？」
「ああ、いいとも。セミルは人は殺さないと公言している偽善者だからな。人質の前では無力だ」

　フィンはよくわかりましたと答えてから、大声で叫んだ。

「セミル！もういいよ！」