ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される

フィン対魔法使い

　フィンの足元にいるブランがぼやいた。

『フィン、すぐに剣を盗られちゃっただわよ』
「そうだね。これは考えないとね」

　フィンはそう言うと鉄生成魔法を解除した。すると魔法使いの手に持っていた大剣はサラサラと鉄の砂になって消えた。魔法使いは怒りに叫び声をあげた。

「俺の剣が？！小僧、いますぐ剣を作れ！さもないと殺すぞ！」

　フィンはうんざりした気持ちで魔法使いを見た。悪い人間はどうしてこうも自己中心的なのだろう。フィンは両手足に手甲と足甲を出現させてブランに言った。

「ブラン、僕はやっぱり武闘がいいや。植物魔法で僕を高く飛ばして？」
『フィン、魔法使いに近づくんだから充分注意するだわよ？』
「うん、わかった」

　フィンがブランに返事をすると、フィンの足元からすごい勢いで植物のツタが伸びてきた。フィンはツタに掴まって上空に飛び上がった。空中で一回転し、魔法使いの背後に着地した。

　魔法使いは慌てて振り向き、フィンに火魔法を投げつけた。フィンは手甲で火魔法を殴った。火魔法は無効化された。

　驚いて逃げようとする魔法使いの腹に、後ろ回し蹴りを入れた。魔法使いはふっ飛んで倒れた。どうやらこの魔法使いも体力があまり無いようだ。

　フィンが倒れた魔法使いに駆け寄って拘束しようとすると、魔法使いがフッと消えた。姿隠しの魔法を使ったのだ。

　いけない。フィンが急いで魔法使いが倒れた辺りに走りよろうとすると、空間の穴が開いて消えた。魔法使いに逃げられてしまったのだ。フィンはため息をついた。

　ブランがフィンの側に駆け寄って言った。

『悪い魔法使いはどこに行ったのさ？』
「ごめん、逃げられちゃった」
『仕方ないだわよ。でも操られていた魔法使いを保護できたのさ』
「そうだね、ブラン」

　フィンはふと思った事をブランに聞いた。

「ねぇブラン。さっきの魔法使いの声、どこかで聞いた事ない？」
『？。アタシは気づかなかっただわよ？』
「そうかぁ、僕の勘違いかなぁ。あの声、どこかで聞いたような気がするんだけど」

　フィンは思い出せないので、この疑問は一旦置いておく事にした。フィンとブランは植物のツタでグルグル巻きにされている三人の魔法使いに近づいた。

　三人の中の一人のお面を取ってみると、やはり若い魔法使いだった。もしかするとマテウスの言っていた卒業生なのかもしれない。フィンがジッと魔法使いたちを見つめていると、後ろからドヤドヤと騎士団がやって来た。

　騎士団の一人がフィンとブランに声をかけた。

「召喚士どのとその霊獣よ、助太刀感謝する」

　フィンは笑って答えた。

「いいえ。皆さんはおケガはなかったですか？」

　騎士は笑って首を振った。どうやら騎士団の中に、ケガ人はいないようだ。フィンはホッと胸をなでおろした。

　別の騎士が倒れている魔法使いに近づいて言った。

「よくも俺たちに攻撃してくれたな！」

　騎士は倒れて意識の無い魔法使いを足げにしようとした。フィンは叫んで止めた。

「やめて下さい！この人たちは操られていただけなんです。この人たちは悪くないんです！悪いのは、」

　フィンは空を見上げた。上空ではセミルが魔法使いの集団と戦っていた。