ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される

生存者の救出

　ユリスは下の階に降りる階段を見つけ駆け降りた。下の階は天井が崩れ、がれきが落ちて足の踏み場もなかった。ユリスは大声を張りあげて叫んだ。

「誰かいませんか！？助けに来ました！どうか声を出してください」

　ユリスは大声を出しながら、注意深く進んだ。少しのもの音も聞き逃さないように神経を集中した。

　うう、と人のうめき声が聞こえる。ユリスはがれきの下に生存者を見つけた。ユリスは魔法でがれきを持ち上げると中の人を引っ張り出した。その人は使用人と思われる男性だった。ユリスは男性に話しかけた。

「どこか痛いところはありますか？」
「うう、痛い、足」

　ユリスが男性の足を見ると、右足の傷口から骨が飛び出していた。開放骨折だ。このまま雑菌が入ると危険だ。ユリスは男に断ってから足を思いっきり引っ張った。男は苦痛に悲鳴をあげた。ユリスは骨折した足を整復すると、一気に治癒魔法をかけて傷口をふさいだ。

　ユリスは師匠のセミルからあらゆるケガの治療を学んだ。それが今役に立っているのだ。ユリスは男に肩をかしながら立ち上がらせた。男は何とか立つ事ができた。

　ユリスは使用人の男に頼み、生存者を探す手伝いをしてもらった。ユリスと使用人は手分けして生存者を探し、治癒魔法をしていった。

　ユリスたちが救出した屋敷の使用人たちの数が増え、ケガ人たちは続々と屋敷の外に避難して来た。

　ユリスはケガ人たちを、ケガのひどい順に治療していった。最初にユリスが助けた男の使用人が声をかけて来た。

「魔法使いさま、このケガ人を診ていただけませんか？ケガはひどくないのに、目を覚まさないんです」

　ユリスがケガ人の女性を見ると、確かにケガはしていないようだが、顔がピンク色だった。これは煙を吸った症状だ。ケガが無いので一見心配なさそうだが、じゅうとくな場合は死んでしまう。ユリスは厳しい声で男に言った。

「この人はとても危険な状態です。同じ症状の人たちを速やかに連れて来てください」

　ユリスの言葉に、使用人の男は慌てて仲間と共に走っていった。ユリスはすぐさま治療を開始した。人間が吸っている空気は、火事や不完全な燃焼により変化して人間に有害なものになってしまう。

　ユリスは風魔法で新鮮な空気を作り出し、患者の女性の肺に送り込む。しばらくすると女性の顔色が元に戻ってきた。ユリスはフゥッと安どのため息をはいた。だが気を引き締めなければいけない。煙を吸って意識のない患者は続々と運ばれて来た。

　緊急性をようする患者がひと段落すると、一人の女性がユリスに哀願した。

「魔法使いさま、どうか娘をお救いください」
　
　ユリスが女性を見ると、ぐったりした女の子を抱きかかえていた。娘の首すじには、深々とえいりなガラスが突き刺さっていた。ユリスはうなずいて女の子を横たわらせた。

　ユリスが女の子の治療を開始しようとすると、野太い男の声で横やりが入った。

「おい、魔法使い！そんな小娘よりわしを治療せんか！」

　ユリスが声の方を見上げると、ごうまんな態度の男が立っていた。