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ユリスの決意

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 ユリスが目を覚ますと、そこは見た事のない部屋のベッドの上だった。ユリスは起きようとしたが、身体がなまりのように重かった。

 ユリスは友達のフィンとブランと戦って、魔力切れを起こして倒れてしまったのだ。ユリスがぼんやりとしていると、控えめなノック音がした。ユリスがはい、と答えると赤い髪の男が入って来た。

 ユリスの魔法の先生、赤髪のセミルだ。セミルはぶっきらぼうに言った。

「身体の調子はどうだ?」
「はい。身体がまるでなまりのように重たいです」
「それがお前の魔力の限界なんだ。よく覚えておけ。今回は友達のフィンとブランが相手だったから命が助かったが、もし相手が敵ならばお前は死んでいた」
「はい」

 ユリスは召喚士と霊獣との魔法戦をぼんやり思い出した。霊獣の魔法はユリスの予想以上だった。セミルがためらいがちに言った。

「何か食べられそうか?」
「すみません。あまり食欲がないです」
「それでも少しは食べろ」

 セミルはヒョイと手まねくそぶりをした。するとコーンスープの乗ったおぼんが飛んできた。おぼんはユリスのひざの上に乗った。ユリスは重たい身体を無理矢理起こし、スプーンでスープをすくって食べた。温かでとても優しい味がした。

 ユリスがスープを食べ終えると、おぼんは宙に浮いてドアの外に行ってしまった。セミルはユリスがスープを食べ終えるまで、ベッドの横のイスに座っていた。セミルが口を開いた。

「ユリス。お前はフィンとブランが戦いを中断している時、何度も攻撃を遅らせたな?」
「はい。フィンとブランは新しい攻撃魔法をしようとする度に、何か話していたので」
「ああ、そうだな。友達のフィンとブランにケガをさせないためだな。ユリス、お前に一つ確認する事がある。お前は、もし敵と魔法で戦う時、相手を傷つける覚悟はあるのか?」

 ユリスはドキリとした。敵を傷つける、もしかすると相手は死んでしまうかもしれない。セミルはユリスにその覚悟があるのかと聞いているのだ。ユリスが何も言えずに黙っていると、セミルが再び話し出した。

「ユリス、お前は将来シュロム国の王になる兄の手助けをしたいから強い魔法使いになりたいと言ったな?」
「・・・。はい」
「一国の王ともなれば敵もさぞ多かろう」
「はい」
「・・・。俺の魔法の先生は、俺に魔法を教える前に、最初に言った。おおいなる力を持つ者は、責任がともなう。魔法使いは人よりも優れた存在だ。魔法は助けを必要とする者のために使うものだ。おのれの欲望のために使ってはならない。この禁を破った者は破滅する」

 ユリスは何と言っていいかわからず黙っていると、セミルが再び話し出した。

「ユリス、お前はもっと強い魔法使いになる。俺よりもな。だがお前の力はお前のものであってお前のものでは無い」

 ユリスはセミルの言葉の意味を理解し、彼に言った。

「師匠、僕は誓います。僕は自分の持てる力を、助けを求める人のために使います。守る者のためなら、敵を倒す事もためらいません」

 セミルはうなずいてから言った。

「もう寝ろ。明日から修行を始める。一晩で魔力を回復しておけ」

 ユリスははい、と答えた。魔力の回復を早めるためには呼吸が重要だ。自然界にある魔力を体内に取り込むのだ。ユリスは目を閉じ、ゆっくりと呼吸をした。


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