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セミルのひとり言

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 セミルは防御ドームの外で、フィンたちとユリスの魔法戦を見ていた。セミルは若いユリスの魔法の才能に驚いた。ユリスは的確な判断で、フィンの指示する霊獣ブランの攻撃魔法を回避していった。

 セミルは反対に、フィンとブランの方が心配になった。ブランは霊獣なので潜在魔力はぼう大なため魔力切れの不安はない。だがブランはユリスとの対戦の最中、何度もフィンを見ている。フィンはそのつどブランに何か言っている。

 模擬とはいえ、今は魔法戦の真っ最中だ。片時もよそ見をするヒマなどないはずなのに、フィンとブランは何とも緊張感がない。

 フィンとブランの戦い方は、ブランがフィンのフォローにまわり、フィンが敵に接近して武闘で相手を倒すものだ。今回はユリスが魔力切れするまで魔法攻撃をし続けるよう頼んでいる。いくらいつもの攻撃スタイルと違うからといって対応が遅すぎる。

 ユリスはフィンとブランにケガをさせないよう、攻撃魔法のタイミングをずらしていた。フィンが肩入れするだけあって、ユリスはとても優しい少年なのだ。

 セミルはユリスの類まれなる魔法の才能を見た。だが同時にユリスの弱点も見えた。ユリスには魔法で人を傷つける覚悟がない。相手は友達のフィンとブランだから手加減してしまう気持ちは理解できる。しかし凶悪な敵に対してもこの調子では命に関わる。

 セミルはあごに手を置いてふむ、と考えこんだ。ユリスがブランの巨大な土人形に捕まった。ユリスは氷魔法で自分ごと土人形を凍らせ、カミナリ魔法で土人形を破壊した。

 ユリスは肩で激しく息をしながら地面に降りた。そろそろだな、とセミルは呟いた。ユリスの魔力がもうすぐ底をつきる。

 セミルがフィンとブランを見ると、二十体もの土人形を作ってユリスに差し向けていた。セミルは霊獣の魔力の底しれなさに苦笑した。霊獣は本来一つのエレメントの魔法しか使わない。ブランは土魔法だ。

 魔法使いが霊獣に勝負をいどむ場合、四つのエレメントが使える利点を駆使するしか道はない。セミルが考えにふけっていると、ユリスがバタリと倒れた。ユリスの前には二十体の土人形が迫っている。

 セミルは空間魔法を発動させ、ユリスの目の前に姿を表した。襲いかかろうとする二十体の土人形に手をかざす。土人形はピタリと動きを止め、元の土に戻った。ブランの魔法を強制解除したのだ。

 セミルは倒れてまま動かないユリスを抱き上げて驚いた。ユリスはとても軽かった。フィンとブランがセミルの側に駆け寄って来る。

 フィンはセミルの意図をくみ取って、自分たちをユリスと戦わせてくれた事に感謝してくれた。だがセミルにはフィンとブランの大きな課題が見えて口ごもった。

 
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