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トグサとヤン

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 ユリスはトグサの作業場にある、イスや飾り箱をたんねんに見回している。フィンはユリスが何をしようとしているのかわからず質問した。

「ねぇユリス。一体何をするの?」
「何をって、僕はトグサさんの作品も、ヤンさんの作品も気に入ったから購入したいんだよ」
「それだけ?二人のケンカを中断して?」
「ねぇ、フィン。この飾り箱とっても素敵だね?」

 ユリスはフィンの話しをあまり聞いていないようで、美しい彫刻がほどこされた飾り箱を撫でた。ユリスは花のデザインが細かく彫られている飾り箱と、植物のデザインがほどこされた小さなイスを手に取った。

 ユリスはフィンに向きなおって言った。

「フィン。僕はこれから王都の城下町に行ってくるよ」

 ユリスの発言に、フィンはポカンと口を開けてしまった。ユリスは空間魔法を出現させると、穴の中に入っていってしまった。フィンは空間魔法が消えた空間をぼんやり見ていた。

 一時間くらいして、ニコニコ顔のユリスが空間魔法の穴から顔を出した。ユリスはフィンに、早くトグサとヤンを連れて来いという。

 ユリスにせかされ、フィンが機嫌の悪い二人を連れて来ると、ユリスはにっこり笑ってトグサに小さな麻袋を渡した。トグサがいぶかしがりながら麻袋の中身を見て叫んだ。

「何だ!金貨じゃないか!」

 トグサとヤンは驚いて金貨を見つめていた。ユリスが笑顔で言った。

「この金貨は、トグサさんのイスと、ヤンさんの飾り箱を売った代金です」
「バカな!私のイスやテーブルは町で銅貨五枚でしか売れないのだぞ!」
「それはトグサさんが町に売ったからです。町の人たちは生活家具としてイスやテーブルを購入します。ですが僕が売りに行った所は、貴族御用達の家具屋なのです。貴族たちはイスやテーブルが無いから買うのではありません。美しい芸術品的価値も含めて購入するのです。家具屋が言ってましたよ、ぜひ定期的に作品をおろしてほしいって」

 ユリスの言葉を、トグサとヤンがぼう然と聞いていた。その後金貨五枚の内訳が、トグサのイスが金貨二枚、ヤンの飾り箱が金貨三枚だった。と、ユリスが余計な一言を言ったため、トグサとヤンは再びケンカを再開してしまった。

 ケンカするほど仲がいいという言葉があるから、トグサとヤンはきっと仲がいいのだろうとフィンは思った。

 トグサとヤンはこの作業場で、これからも家具や飾り箱を作っていくようだ。ヤンは自分の好きな物を作る事ができ、自分の作品が認められた事がとても嬉しかったようだ。そんなヤンをみている父親のトグサも誇らしげだった。
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