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シュロム国王
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フィンはユリスと共に、大きなドアの前に立った。このドアの向こうにシュロム国王がいるのだ。フィンはゴクリとツバを飲み込んだ。門の前に立っていた兵士がおごそかに扉を開けた。広い室内の奥に、玉座に腰をかけたシュロム国王がいた。
ユリスはフィンの手を引きながら、シュロム国王の前に来ると片膝をついてこうべをたれた。フィンもそれにならう。ユリスは静かな声で言った。
「父上この度の拝謁感謝いたします」
シュロム国王はおおらかにうなずいて言った。
「ユリスよ、この者がそなたの想い人か?」
「はい父上。この者はフィン、召喚士にございます」
ユリスがフィンに目配せする。フィンはうなずいて素早く召喚呪文を詠唱した。淡い輝きと共に、契約霊獣の白猫ブランが姿を表す。シュロム国王はきょうたんの声をあげた。
「おお、何と美しい。これが霊獣なのか」
ユリスは低頭したまま答える。
「はい、父上。フィンの契約霊獣ブランは白猫ですが、土魔法を使う高貴な霊獣にございます」
「うむ。ではユリス、そなたはディアナ王女との婚約を解消して、この娘と一緒になりたいというのだな?」
ユリスははい、とうなずいた。シュロム国王はギロリとフィンに視線を向けた。フィンは身体がブルリと震えた。フィンはゴクリとツバを飲み込んでから答えた。
「恐れながら国王陛下。ユリス王子との結婚をお許しいただけないでしょうか」
シュロム国王はううむ、とうなってから口を開いた。
「うむ、よいだろう。ユリス、そなたとフィンの結婚を許可する。だが、この城を出る事は許さん。城の離れに屋敷を建ててやる。そこで暮らすが良い」
国王の言葉にユリスは叫んだ。
「父上!フィンは冒険者です。この城に閉じ込めるのは後生です。どうかお考え直しください!」
「いいやならぬ!ユリス、お前は病弱なのだぞ!王子の中でお前が一番出来損ないなのだからな!」
シュロム国王の言葉を低頭して聞いていたフィンはフツフツと怒りが湧いてきた。いくら父親といえど、シュロム国王はフィンの友達を愚弄したのだ。フィンはスクッと立ち上がり、国王に向かって叫んだ。
「恐れながら国王陛下!貴方は何故息子をおとしめるような事を言うのですか?!ユリスは努力の末、優秀な魔法使いになりました!そして今もシュロム国をうれい、自身を磨くために城を出ようとしている息子を、何故喜んでくれないのですか!」
となりのユリスはフィンを見上げて驚いた顔をして、しきりにフィンの手を引っ張って座らせようとした。だがフィンは、再び低頭して国王に謝る事などできなかった。フィンが国王をにらんでいると、シュロム国王は深いため息をついて言った。
「ユリス。そなたを愚弄するような事を言ってすまなかった。余はそなたを手元から離したくなかったのだ。ユリスの母ユリアナは美しかったが病弱な女だった。ユリスを生んですぐに亡くなった。余はユリアナの生き写しのユリスが大切だったのだ。ユリスが病弱なのを良い事に、王子の責務である剣技の修行もさせなかった」
「父上・・・」
「ユリス。そなたの魔法の師が言っておった。そなたはシュロム随一の魔法使いだと。余はそなたを誇りに思う」
国王の初めての言葉にユリスは戸惑っているようだった。シュロム国王は第七王子ユリスをうとましく思っていたのではなかったのだ。愛しているからこそ、剣を持たせず城の中で大切に育てていたのだ。ユリスは立ち上がり父親である国王に言った。
「偉大なる父上。私は自分の力を試すために城を出て世界を見たいのです。そしてこの国の助けになる者になりたいのです」
シュロム国王はユリスの願いを聞き入れてくれた。
ユリスはフィンの手を引きながら、シュロム国王の前に来ると片膝をついてこうべをたれた。フィンもそれにならう。ユリスは静かな声で言った。
「父上この度の拝謁感謝いたします」
シュロム国王はおおらかにうなずいて言った。
「ユリスよ、この者がそなたの想い人か?」
「はい父上。この者はフィン、召喚士にございます」
ユリスがフィンに目配せする。フィンはうなずいて素早く召喚呪文を詠唱した。淡い輝きと共に、契約霊獣の白猫ブランが姿を表す。シュロム国王はきょうたんの声をあげた。
「おお、何と美しい。これが霊獣なのか」
ユリスは低頭したまま答える。
「はい、父上。フィンの契約霊獣ブランは白猫ですが、土魔法を使う高貴な霊獣にございます」
「うむ。ではユリス、そなたはディアナ王女との婚約を解消して、この娘と一緒になりたいというのだな?」
ユリスははい、とうなずいた。シュロム国王はギロリとフィンに視線を向けた。フィンは身体がブルリと震えた。フィンはゴクリとツバを飲み込んでから答えた。
「恐れながら国王陛下。ユリス王子との結婚をお許しいただけないでしょうか」
シュロム国王はううむ、とうなってから口を開いた。
「うむ、よいだろう。ユリス、そなたとフィンの結婚を許可する。だが、この城を出る事は許さん。城の離れに屋敷を建ててやる。そこで暮らすが良い」
国王の言葉にユリスは叫んだ。
「父上!フィンは冒険者です。この城に閉じ込めるのは後生です。どうかお考え直しください!」
「いいやならぬ!ユリス、お前は病弱なのだぞ!王子の中でお前が一番出来損ないなのだからな!」
シュロム国王の言葉を低頭して聞いていたフィンはフツフツと怒りが湧いてきた。いくら父親といえど、シュロム国王はフィンの友達を愚弄したのだ。フィンはスクッと立ち上がり、国王に向かって叫んだ。
「恐れながら国王陛下!貴方は何故息子をおとしめるような事を言うのですか?!ユリスは努力の末、優秀な魔法使いになりました!そして今もシュロム国をうれい、自身を磨くために城を出ようとしている息子を、何故喜んでくれないのですか!」
となりのユリスはフィンを見上げて驚いた顔をして、しきりにフィンの手を引っ張って座らせようとした。だがフィンは、再び低頭して国王に謝る事などできなかった。フィンが国王をにらんでいると、シュロム国王は深いため息をついて言った。
「ユリス。そなたを愚弄するような事を言ってすまなかった。余はそなたを手元から離したくなかったのだ。ユリスの母ユリアナは美しかったが病弱な女だった。ユリスを生んですぐに亡くなった。余はユリアナの生き写しのユリスが大切だったのだ。ユリスが病弱なのを良い事に、王子の責務である剣技の修行もさせなかった」
「父上・・・」
「ユリス。そなたの魔法の師が言っておった。そなたはシュロム随一の魔法使いだと。余はそなたを誇りに思う」
国王の初めての言葉にユリスは戸惑っているようだった。シュロム国王は第七王子ユリスをうとましく思っていたのではなかったのだ。愛しているからこそ、剣を持たせず城の中で大切に育てていたのだ。ユリスは立ち上がり父親である国王に言った。
「偉大なる父上。私は自分の力を試すために城を出て世界を見たいのです。そしてこの国の助けになる者になりたいのです」
シュロム国王はユリスの願いを聞き入れてくれた。
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