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ブランの治癒魔法
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ホーンの容態が落ち着いたところで、エメリンは屋敷に帰る事になった。エメリンは領主である父親に絶えず監視されていて、少しでも部屋からいなくなるときびしくしかられるというのだ。
ベノーは別の用心棒仲間に自分の仕事の引き継ぎを頼みに行っていて、小屋の中にいるのはケガ人のホーンとフィン、姿隠しの魔法で姿を消したブランだけになった。
フィンはブランに言った。
「ブラン。ホーンさんの状態、どう?」
ブランは美しい姿をあらわしてベッドに飛び乗ると、ホーンの身体の状態を確認して答えた。
『ええ。熱もだいぶ下がって容態が落ち着いたわ。これなら治癒魔法ができるだわよ』
ブランは小さな前足をちょこんとホーンの胸に置いた。ホーンの身体が輝きだす。ブランの治癒魔法だ。
ブランはフウッと息を吐いてからフィンに言った。
『フィン。この人間のケガは治癒したわ』
フィンは嬉しくなってブランを抱き上げ頬ずりしながら言った。
「ブランありがとう!」
しばらくしてベノーが帰ってきた。ベノーはおぼんを手に持っていて、その上には粗末なスープと固いパンが乗っていた。どうやら用心棒の食事はすべてこれらしい。
ベノーはフィンにスープの器と固いパンを手渡して食べるように言うと、ベノー自身はホーンを抱き起こしてスープを食べさせていた。ホーンはケガが治癒し熱も下がったため、少しだがスープを飲んだ。ベノーはホッと息を吐いた。フィンは固いパンをかじりながらベノーに質問した。
「ベノーさんは何でホーンさんにそこまで優しくできるの?」
ベノーはホーンをベッドに横たえながら言った。
「用心棒仲間だからというのもあるがな。だがそれよりも、明日は我が身だからさ。俺たち用心棒は常に危険ととなり合わせだ。死んでいった仲間も沢山いる。もし俺が死にかけたら、仲間に看取ってもらいてぇし、俺が命がけで稼いだ金を息子に渡してもらいてぇんだ」
ベノーは疲れたように笑ってから、部屋に帰るぞと言った。
翌日フィンとベノーが小屋の様子を見に行くと、ホーンは見違えるほど元気になっていた。その後やって来たエメリンもホーンの回復をとても喜んでくれた。
二日後すっかり回復したホーンは、用心棒仲間とエメリンに見送られながら、家族の元に帰って行った。
フィンはホーンの抜けた穴を埋めるべく、用心棒として働いた。用心棒の仕事は、危険な夜襲がなければ、屋敷の警備と自身の鍛練が主な仕事だ。
ベノーは鍛錬の訓練の時、フィンの相手をしてくれた。ベノーは模擬刀をフィンに手渡して言った。
「用心棒には武闘術も必要だが、剣もできなきゃいけねぇ。フィン、お前剣はできるか?」
「兄から剣の指導を受けたけど、才能無いっていわれました」
ベノーはフィンに模擬刀を打ち込んで来いと指示した。フィンとベノーの身長差はかなりのものだった。フィンは言われた通り、ベノーに模擬刀を打ち込む。ベノーが模擬刀でフィンの剣を受け、体重をかけてきた。フィンはベノーの力を逃して、再度続け様に剣を打ち込んだ。
しばらく模擬刀の打ち合いが続き、ベノーが手をあげた。打ち込みやめの合図だ。フィンは模擬刀をおろして言った。
「なんだフィン。剣の基礎もしっかりしているじゃないか。何故お前の兄さんは剣の才能が無いなんて言ったんだ?」
ベノーはしばらく首をかしげてから、つぶやくように言った。
「そうか兄さんは、フィンが真剣で人を傷つけられない事を知っていたから才能が無いと言ったんだな」
ベノーは腰をかがめてフィンの目をしっかり見て言った。
「フィン。お前はいい奴だ。初対面のホーンの治療を一生懸命やってくれて、助けてくれた。俺はお前が死ぬのを見たくない」
ベノーの真剣な表情に、フィンは黙ってしまった。
ベノーは別の用心棒仲間に自分の仕事の引き継ぎを頼みに行っていて、小屋の中にいるのはケガ人のホーンとフィン、姿隠しの魔法で姿を消したブランだけになった。
フィンはブランに言った。
「ブラン。ホーンさんの状態、どう?」
ブランは美しい姿をあらわしてベッドに飛び乗ると、ホーンの身体の状態を確認して答えた。
『ええ。熱もだいぶ下がって容態が落ち着いたわ。これなら治癒魔法ができるだわよ』
ブランは小さな前足をちょこんとホーンの胸に置いた。ホーンの身体が輝きだす。ブランの治癒魔法だ。
ブランはフウッと息を吐いてからフィンに言った。
『フィン。この人間のケガは治癒したわ』
フィンは嬉しくなってブランを抱き上げ頬ずりしながら言った。
「ブランありがとう!」
しばらくしてベノーが帰ってきた。ベノーはおぼんを手に持っていて、その上には粗末なスープと固いパンが乗っていた。どうやら用心棒の食事はすべてこれらしい。
ベノーはフィンにスープの器と固いパンを手渡して食べるように言うと、ベノー自身はホーンを抱き起こしてスープを食べさせていた。ホーンはケガが治癒し熱も下がったため、少しだがスープを飲んだ。ベノーはホッと息を吐いた。フィンは固いパンをかじりながらベノーに質問した。
「ベノーさんは何でホーンさんにそこまで優しくできるの?」
ベノーはホーンをベッドに横たえながら言った。
「用心棒仲間だからというのもあるがな。だがそれよりも、明日は我が身だからさ。俺たち用心棒は常に危険ととなり合わせだ。死んでいった仲間も沢山いる。もし俺が死にかけたら、仲間に看取ってもらいてぇし、俺が命がけで稼いだ金を息子に渡してもらいてぇんだ」
ベノーは疲れたように笑ってから、部屋に帰るぞと言った。
翌日フィンとベノーが小屋の様子を見に行くと、ホーンは見違えるほど元気になっていた。その後やって来たエメリンもホーンの回復をとても喜んでくれた。
二日後すっかり回復したホーンは、用心棒仲間とエメリンに見送られながら、家族の元に帰って行った。
フィンはホーンの抜けた穴を埋めるべく、用心棒として働いた。用心棒の仕事は、危険な夜襲がなければ、屋敷の警備と自身の鍛練が主な仕事だ。
ベノーは鍛錬の訓練の時、フィンの相手をしてくれた。ベノーは模擬刀をフィンに手渡して言った。
「用心棒には武闘術も必要だが、剣もできなきゃいけねぇ。フィン、お前剣はできるか?」
「兄から剣の指導を受けたけど、才能無いっていわれました」
ベノーはフィンに模擬刀を打ち込んで来いと指示した。フィンとベノーの身長差はかなりのものだった。フィンは言われた通り、ベノーに模擬刀を打ち込む。ベノーが模擬刀でフィンの剣を受け、体重をかけてきた。フィンはベノーの力を逃して、再度続け様に剣を打ち込んだ。
しばらく模擬刀の打ち合いが続き、ベノーが手をあげた。打ち込みやめの合図だ。フィンは模擬刀をおろして言った。
「なんだフィン。剣の基礎もしっかりしているじゃないか。何故お前の兄さんは剣の才能が無いなんて言ったんだ?」
ベノーはしばらく首をかしげてから、つぶやくように言った。
「そうか兄さんは、フィンが真剣で人を傷つけられない事を知っていたから才能が無いと言ったんだな」
ベノーは腰をかがめてフィンの目をしっかり見て言った。
「フィン。お前はいい奴だ。初対面のホーンの治療を一生懸命やってくれて、助けてくれた。俺はお前が死ぬのを見たくない」
ベノーの真剣な表情に、フィンは黙ってしまった。
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