202 / 298
フィンの患者
しおりを挟む
フィンはベノーとエメリンを見て言った。
「ベノーさん、エメリンお嬢さん。ホーンさんの治療を僕にさせてくれませんか?僕は薬師の先生から薬草の知識と、患者さんの治療方法を学んだんです」
フィンの言葉にベノーとエメリンはハッとした顔になった。エメリンが叫ぶように言った。
「お願い、フィン。ホーンさんを助けて!」
「おい、フィン。俺は何をしたらいい?」
フィンはエメリンには、しゃふつしたお湯と清潔な布を頼んだ。ベノーには、以前ブランに作ってもらった干した薬草を煎じてもらう。
フィンは先ずホーンの包帯を解いて傷口を確認した。ベノーの言った通り、傷口は膿んで悪臭がした。フィンはエメリンが持ってきてくれたお湯をかけ、膿を洗い落とした。傷口には、ブランが土魔法で作ってくれたドクダミをすりつぶして傷口にぬり、布をあてて包帯をした。
ベノーが煎じてくれた薬湯をホーンに飲ませる事にする。寝たまま薬を飲ませようとすると、誤えんしかねないので、ベノーにホーンの身体を支えてもらって、薬湯を飲ませた。
薬湯を飲ませ終えると、冷たい水でしぼった布で、ホーンのひたいと脇の下を冷やした。
どれほど時間が経ったのだろうか。ベノーは疲労からか、床に座ったまま船をこいでいた。エメリンも疲れたようにベッドにもたれかかっていた。
フィンはエメリンのような令嬢が、一用心棒であるホーンのために何故ここまでしてくれるのか不思議に思って質問した。
「エメリンお嬢さん。貴女は何故ホーンさんのためにここまでしてくれるんですか?」
フィンの質問に、エメリンは悲しげな笑顔で答えた。
「もちろんホーンさんが私の住んでいる屋敷を守ってくださっているからというのもあるわ。でも、それだけじゃないの。私の行いは贖罪なの」
「・・・。贖罪?」
「ええ。私には血のつながらない母と兄がいたの。住み込みで働いてくれる使用人の母子だったわ。私は小さい頃に母を病気で亡くしていたから、その人が私のお母さんのようだった。その母子と過ごす時間は、私にとってかけがえのない時間だった。だけど、」
そこでエメリンの顔は泣きそうにこわばった。エメリンはコクリとツバを飲み込んで話しを続けた。
「ある時母親が病気になったの。私はお父さまにお医者に見せてと泣きながら頼んだわ。だけどお父さまはあろう事か、その母子を屋敷から追い出してしまったの。私は風のうわさで母親が亡くなった事を知ったわ。子供は一人ぼっちで生きなければいけなくなった」
フィンはエメリンに言った。
「死んでしまった母親って、ドミニクのお母さん?」
フィンの言葉にエメリンはギクリと身体をこわばらせた。エメリンはフィンに言った。
「フィンはドミニクに会ったの?」
「はい。武闘大会に出場していました」
「ドミニクは、きっと私を怨んでるわ。お母さんを見殺しにしたんだもの」
「そんな事ないです!」
フィンの大声にエメリンはびっくりした顔になった。フィンは言葉を続けた。
「ドミニクはとても強くて思いやりのある人です。僕思うんです。ドミニクが毎回武闘大会に参加するのは、エメリンお嬢さんに気づいてほしいからじゃないかって」
エメリンは美しい大きな瞳からポロポロと涙を流し、ありがとうと言った。
「ベノーさん、エメリンお嬢さん。ホーンさんの治療を僕にさせてくれませんか?僕は薬師の先生から薬草の知識と、患者さんの治療方法を学んだんです」
フィンの言葉にベノーとエメリンはハッとした顔になった。エメリンが叫ぶように言った。
「お願い、フィン。ホーンさんを助けて!」
「おい、フィン。俺は何をしたらいい?」
フィンはエメリンには、しゃふつしたお湯と清潔な布を頼んだ。ベノーには、以前ブランに作ってもらった干した薬草を煎じてもらう。
フィンは先ずホーンの包帯を解いて傷口を確認した。ベノーの言った通り、傷口は膿んで悪臭がした。フィンはエメリンが持ってきてくれたお湯をかけ、膿を洗い落とした。傷口には、ブランが土魔法で作ってくれたドクダミをすりつぶして傷口にぬり、布をあてて包帯をした。
ベノーが煎じてくれた薬湯をホーンに飲ませる事にする。寝たまま薬を飲ませようとすると、誤えんしかねないので、ベノーにホーンの身体を支えてもらって、薬湯を飲ませた。
薬湯を飲ませ終えると、冷たい水でしぼった布で、ホーンのひたいと脇の下を冷やした。
どれほど時間が経ったのだろうか。ベノーは疲労からか、床に座ったまま船をこいでいた。エメリンも疲れたようにベッドにもたれかかっていた。
フィンはエメリンのような令嬢が、一用心棒であるホーンのために何故ここまでしてくれるのか不思議に思って質問した。
「エメリンお嬢さん。貴女は何故ホーンさんのためにここまでしてくれるんですか?」
フィンの質問に、エメリンは悲しげな笑顔で答えた。
「もちろんホーンさんが私の住んでいる屋敷を守ってくださっているからというのもあるわ。でも、それだけじゃないの。私の行いは贖罪なの」
「・・・。贖罪?」
「ええ。私には血のつながらない母と兄がいたの。住み込みで働いてくれる使用人の母子だったわ。私は小さい頃に母を病気で亡くしていたから、その人が私のお母さんのようだった。その母子と過ごす時間は、私にとってかけがえのない時間だった。だけど、」
そこでエメリンの顔は泣きそうにこわばった。エメリンはコクリとツバを飲み込んで話しを続けた。
「ある時母親が病気になったの。私はお父さまにお医者に見せてと泣きながら頼んだわ。だけどお父さまはあろう事か、その母子を屋敷から追い出してしまったの。私は風のうわさで母親が亡くなった事を知ったわ。子供は一人ぼっちで生きなければいけなくなった」
フィンはエメリンに言った。
「死んでしまった母親って、ドミニクのお母さん?」
フィンの言葉にエメリンはギクリと身体をこわばらせた。エメリンはフィンに言った。
「フィンはドミニクに会ったの?」
「はい。武闘大会に出場していました」
「ドミニクは、きっと私を怨んでるわ。お母さんを見殺しにしたんだもの」
「そんな事ないです!」
フィンの大声にエメリンはびっくりした顔になった。フィンは言葉を続けた。
「ドミニクはとても強くて思いやりのある人です。僕思うんです。ドミニクが毎回武闘大会に参加するのは、エメリンお嬢さんに気づいてほしいからじゃないかって」
エメリンは美しい大きな瞳からポロポロと涙を流し、ありがとうと言った。
0
お気に入りに追加
771
あなたにおすすめの小説
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる