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期待の国家魔法使い

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 レムーリア国の魔法省長官ラザールは我が目を疑った。オーバン国王直属魔法団長セバスティアンが受験生に惨敗してしまったからだ。

 文官がノックもせずにラザールの執務室に飛び込んで来て言った。

「申し上げます。受験生の力量をはかるために実技試験に潜入していたセバスティアンどのを負かしたのは、バレットという受験生です。筆記試験は恐ろしいほど字が汚く、誤字脱字ばかりでしたが、解答内容は申し分ありません。新しい魔法論文は、小型の太陽を作り出す魔法で、今までに類を見ない高等魔法です!」

 文官の言葉に、ラザールは身体中の震えを覚えた。これはとんでもない逸材を発掘してしまったという武者震いだ。

 ラザールは、自身も魔法の道を実直に歩み続け、魔法省長官にまでのぼりつめた男だ。バレットという魔法使いが、我がレムーリア国にいてくれたという事はぎょうこうだった。ラザールは文官に質問した。

「バレットの指導魔法使いは誰だ?」

 バレットはレムーリア国の魔法学校の卒業生ではない。民間で直接魔法使いに指導を受け、魔法使いの免許皆伝を受けた後、冒険者として実務経験を五年以上続けた後に国家魔法使いの受験資格を得たのだ。

 文官はごくりとツバを飲み、もったいぶってから答えた。

「はい。指導魔法使いは、召喚士ゾラ、勇者レオリオ両名にございます!」
「!。何だと、伝説の召喚士ゾラに勇者レオリオだと?!」

 召喚士ゾラと勇者レオリオといえば、この国で知らぬ者はいない存在だ。確かに勇者レオリオには後継者がいるという話しは聞いていたが、まさかこれほど若い青年だったとは。

 ラザールは笑いが止まらなかった。勇者レオリオの後継者という逸材が、これから国家魔法使いとして自分の下につくのだ。バレットの実力ならどのような高い役職でもこなす事ができるだろう。

 そうだ、憎たらしい若造のセバスティアンを降格させて、後がまにバレットをつかせようか。セバスティアンは自身が魔法の実力に長けているからといって、ラザールにも大きな顔をして目障りだったのだ。

 そうだそれがいい。バレットほどの実力の者を側におけばオーバン国王陛下もさぞお喜びになるだろう。ラザールは顔が笑いそうになるのを必死でこらえながら文官に言った。

「これからバレットにねぎらいの言葉をかけに行く。そのまま今後の役職についても打診しておく。そうだな、国王直属魔法団長に任命しようと考えている」

 文官は驚いた声をあげた。

「ええ、セバスティアンどのはどういたすのですか?」
「セバスティアンは受験生に負けだのだぞ?魔法団長の任はちと重すぎた。降格させて少しいとまをやろう」

 ラザールはそれだけ言うと執務室を後にした。



 
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