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人殺し霊獣

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 その依頼をリタから聞いた時、フィンは耳を疑った。フィンは不安を隠せないままリタに聞いた。

「リタ、その話は本当なの?」

 リタは鎮痛な顔でうなずいた。リタは王都にある冒険者協会の美人受付だ。フィンと白猫の霊獣ブランが、新たな依頼を探しに冒険者協会に来た時にリタに声をかけられたのだ。

 最近王都の外れで殺人が起きている。その殺人はどうやら霊獣の仕業らしいという事。フィンはにわかに信じる事ができなかった。

 フィンは霊獣ブランと契約して召喚士になってから、多くの霊獣に出会った。その霊獣たちは、皆心があたたかく慈悲深かった。そんな霊獣が人間を殺すなど考えられなかった。

 その霊獣には霊獣の考えがあるのかもしれない。フィンはこの依頼を受ける事にした。フィンは通信魔法具で、友達の召喚士リリーとその契約精霊フレイヤにも助力を求めた。

 城下町の待ち合わせ場所で、リリーは顔を青ざめた顔でフィンに言った。

「フィン。それは本当の話なの?」
「うん、リタから聞いたんだ。死体の側には動物の毛が落ちていたって。動物学者の先生に見てもらったら、どうやらライオンの毛らしいんだ。だけど、この城下町にライオンがうろついているなんておかしいだろ?」
「サーカスから猛獣が逃げたんじゃないの?」
「いや、死体は猛獣に噛み殺されていたんじゃないんだ。・・・、魔法で殺されているんだ。死体は皆火魔法で焼き殺されていた」

 リリーはショックを受けた顔をしてから悲しそうに言った。

「私たちもこの依頼受けるわ。もし本当に霊獣の仕業なら、その霊獣に会ってみたい」

 フィンはうなずいた。フィンも同じ気持ちだったからだ。


 フィンはブランに大きくなってもらい、リリーと一緒に飛び乗った。フレイヤとは現地で落ちあう事にする。

 フィンたちは最初の殺人事件があった場所に到着した。そこは王都のはずれの住宅街だった。フィンたちは最初に死体の見聞をした医者を訪ねた。

 医者は高齢の老人だった。フィンが殺された死体の死亡診断書を見ると、死体の年齢は推定三十歳くらいの男性、高身長、やせ形、死因は焼死だった。死体の側にはライオンと思われる猛獣の体毛が落ちていたと書かれていた。

 フィンは医者に質問した。

「先生。この死体の身元はわかったんですか?」
「いいや。わからずじまいで無縁仏として葬ったよ」
「持ち物は何かありましたか?」
「ああ。持ち物は剣に、魔法具が数点あった。どうも冒険者のようないでたちだったなぁ」

 死体は冒険者。フィンはなおの事疑問がわいた。殺したのが霊獣だと仮定して、何故冒険者を襲ったのだろうか。

 フィンたちは他の被害者の死体の確認をすべく、検死をした医者をたずね続けた。被害者は全員で五人いた。皆冒険者のようないでたちで、焼死していた。

 被害者は皆どこの誰かわからなかったが、唯一最後の五人目には知人がいた。フィンたちは五人目の死体の知り合いに会いに行く事にした。

 その知人は冒険者だった。フィンたちはブランに乗って、再び王都に戻った。冒険者協会のリタに事前に連絡を入れていたので、その冒険者にすぐに会う事ができた。

 その男はゴンザという身体の大きな冒険者だった。ゴンザはフィンの質問にのんびり答えた。どうやら見た目に反しておだやかな人物のようだ。

「ああそうだ。俺が王都のはしっこまで行って用心棒の依頼をしていた時だ。近くで人死にが出たって言うから、依頼主に危険が及ばないか心配で死体を見に行ったんだ。そしたら、見た事ある顔だから驚いちまってなぁ。いや、そんなに親しい奴でもなかったよ。ある依頼で一緒になったんだ。うーん、剣の腕はそんなでもなかったなぁ。だが、悪知恵が働くというか、金のためなら何でもするって感じの奴だった。名前は確か、タンナ」

 ようやく被害者の一人の身元がわかった。

 
 
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