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再会

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 バネッサはアレックスにいわれた通り、林に隠れながら息を殺していた。すると、領主の屋敷から人が出て来るのがわかった。バネッサが目を凝らしてその人物たちを見ると、それはフィンとクララだった。

 バネッサはたまらず林から駆け出していた。バネッサはとても怒っていた。バネッサの言う事を聞かず、勝手に領主の所に行ってしまったバカな妹。きつくしかってやらなければ。バネッサは走りながら力のかぎりクララの名を呼んだ。

 そこでクララは自分を呼ぶ声に気づいてバネッサの方を振り向いた。クララも大声でバネッサを呼んだ。

「お姉ちゃん!」

 バネッサはクララに駆け寄ると、思いっきりクララの頬っつらをひっぱたいてやろうとした。だが、バネッサはクララを抱きしめていた。ギュウギュウと力のかぎり。バネッサは涙ながらに言った。

「クララのおバカ!何で勝手に領主の屋敷に行ったの!」
「だって私、お父さんとお母さんのお店を守りたかったの。お姉ちゃんにとっても大切なお店でしょ?」
「確かにお父さんとお母さんの思い出の詰まった大切なお店よ!だけど、この世界にクララより大切なものなんて一つもない!」

 クララは途端に、泣き出して言った。

「お姉ちゃん、ごめんなさい」

 バネッサは泣じゃくるクララを抱きしめ、涙に濡れるしょっぱい頬に沢山のキスをした。バネッサはクララの頭を優しく撫でながら、クララの小さな頃を思い出していた。

 バネッサとクララは歳がとても離れた姉妹だった。バネッサは酒場の仕事で忙しい両親から妹の世話をまかされていた。遊びたいさかりのバネッサにとって小さな妹は、少しうとましい存在だった。いつもバネッサにべったりくっついて、わがままばかり言っていたからだ。

 だが両親が相次いで亡くなると、バネッサにとっての家族はクララだけになった。バネッサは両親の店を守るために、若き酒場の女主人になった。幼い妹は、けなげにバネッサの仕事を手伝ってくれた。

 バネッサと妹のクララは二人で必死に店の酒場を守り続けた。その時になってバネッサは妹の存在の大きさに気づいた。亡き両親の店は、バネッサとクララにとって大切なものになった。

 だが、店なんかよりも今この手に抱きしめている妹のクララの方よっぽど大切なのだ。バネッサは心に誓った、クララを絶対に手放さないと。

 バネッサとクララが再会を喜びあっていると、屋敷の使用人たちを連れたアレックスとバレットが戻って来た。冒険者の彼らが戻って来たと言うことは、女領主との決着がついたという事だろう。

 バレットはフィンを見つけると嬉しそうに近寄って声をかけた。バレットとフィンは兄弟なのだそうだ。おそらく血のつながりはない。だがとてもお互いを思い合い、大切にしている事がうかがえた。まるでバネッサとクララのようだ。

 アレックスは泣いている年配女性たちにしきりに声をかけていた。クララがコソリとバネッサに耳打ちをする。どうやら若い娘たちの世話をしていたらしい。

 娘たちを逃がさないように見張り、娘たちを女領主にささげていた者たち。バネッサは彼女たちに怒りを覚えるが、いざ自分が彼女らと同じ立場になったら、どう行動できるのかわからなかった。

 その後グラブの街に一番近い大きな街から騎士団がやって来た。騎士団は、女領主は死んでしまったため、女領主の使用人たちを連行して行った。女領主の遺体も騎士団が持ち去った。今後この一帯を治めるため新たな領主が来るのだろう。

 捕らえられた沢山の娘たちは、ひとまずグラブの街に行く事にした。その後自分たちの故郷に帰す事になった。バネッサはクララの手をしっかり握りながら、長い悪夢がようやく終わりをつげたのを知った。

 

 

 

 
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