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フードの男
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フィンの目の前に現れたフードの男は、さもおかしそうに口元に笑みをたたえていた。フィンはそんなフードの男の態度が気に入らず、語気を荒げて言った。
「何がおかしいんだ!お前は一体何者なんだ!?何故召喚士になれなかった者をそそのかして霊獣ハンターにする」
フィンは話しているうちに腹の底からフツフツの怒りが湧いてきた。このフードの男なのかわからないが、フィンの元クラスメイトのグッチはそそのかされて霊獣ハンターになり、そして魔物になって死んだ。フードの男とかかわりさえしなければ今も生きていたはずだ。
フィンはフードの男に掴みかかりたい衝動を必死に抑えていた。だがフードの男は、フィンの怒りが面白いのか笑顔で答えた。
「貴方は何故そんなに怒っているのですか?貴方は美しい霊獣と契約できた幸運な人ではないですか」
「お前は何故霊獣を憎むんだ!」
「憎む?おかしな事を言いますね。私はこの世の誰よりも霊獣を、そして精霊を愛しているのです」
「嘘だ!お前にそそのかされた奴は霊獣ハンターになり、霊獣にひどい事をしたんだぞ!?」
「それは考え方の相違です。霊獣ハンターたちは皆霊獣を心から愛し崇拝しているのです。だから、」
そこでフードの男は言葉を切り、ニヤリと笑った。だがその口はみるみる耳まで裂けた。大きく開いた口の中にはサメのような鋭いキバがびっしりと生えていた。フィンは土鉱物魔法で手甲と足甲を出現させると、右手の拳をフードの男の左頬にめり込ませた。だがフードの男はビクともせず、そのまま立ち尽くしていた。フィンはまるで巨大な岩を叩いたような衝撃を感じた。
フィンが殴った事により、男のフードが外れて顔があらわになった。だがその顔は人間のものではなかった。顔はつるりと丸くとがっていて、目は小さく横にあった。まるでサメ人間だ。フィンは驚きのあまりヒュッと息を飲んで言った。
「お前は人間なのか?」
「はい、私はれっきとした人間です。貴方の言うところの召喚士のなり損ないですよ。ですが私はある方から大いなる力を授かったのです。この力で私は霊獣たちに真の幸福を与えたいのです」
「霊獣の真の幸福だと?」
「ええ。貴方は学校で勉強したはずですよ?霊獣の真の幸福とは、人間に隷属する事です。人間と契約し、人間に奉仕する事が霊獣の真の幸福なのです。私はその手伝いをしているのです」
フィンはフードの男、改めサメ男の考え方にぼう然としてしまった。フィンこそサメ男に言いたかった。お前は召喚士養成学校で一体何を教わってきたのかと。
霊獣と精霊は、召喚を行った召喚士が可愛くてしょうがないのだ。自身と契約した召喚士を守りたくて、幸せにしたくて仕方ないのだ。フィンにはそれが、書物の中だけではなく、霊獣ブランと契約して肌で感じる事ができた。だからサメ男の言い分は全く的外れなのだ。だがサメ男は自分の考えが正しいと信じて疑わないのだ。
フィンがどうしたらよいか考えあぐねていると、リリーが叫んだ。
「フィン!フードの男から離れて!フレイヤ!捕縛火魔法!」
『ええ。わかったわ』
フィンの後ろにいたリリーとフレイヤがサメ男の前に出る。フィンは素早くその場から離れた。
リリーの指示に従い、フレイヤは強力な火魔法を発動した。炎はサメ男の周りを取り囲んだ。炎の輪はサメ男を拘束するかに思えた瞬間、サメ男の背中からコウモリのような翼が生えた。サメ男は上空に飛び上がった。
『逃すか!』
フレイヤは炎の向きを上に変え、サメ男を追いつめようとした。フレイヤの炎の火の粉が勢いよく周囲に飛び散った。リリーが叫ぶ。
「フレイヤ!火拘束魔法解除!森が火事になっちゃう」
リリーの言葉にフレイヤは火魔法を解除した。
「何がおかしいんだ!お前は一体何者なんだ!?何故召喚士になれなかった者をそそのかして霊獣ハンターにする」
フィンは話しているうちに腹の底からフツフツの怒りが湧いてきた。このフードの男なのかわからないが、フィンの元クラスメイトのグッチはそそのかされて霊獣ハンターになり、そして魔物になって死んだ。フードの男とかかわりさえしなければ今も生きていたはずだ。
フィンはフードの男に掴みかかりたい衝動を必死に抑えていた。だがフードの男は、フィンの怒りが面白いのか笑顔で答えた。
「貴方は何故そんなに怒っているのですか?貴方は美しい霊獣と契約できた幸運な人ではないですか」
「お前は何故霊獣を憎むんだ!」
「憎む?おかしな事を言いますね。私はこの世の誰よりも霊獣を、そして精霊を愛しているのです」
「嘘だ!お前にそそのかされた奴は霊獣ハンターになり、霊獣にひどい事をしたんだぞ!?」
「それは考え方の相違です。霊獣ハンターたちは皆霊獣を心から愛し崇拝しているのです。だから、」
そこでフードの男は言葉を切り、ニヤリと笑った。だがその口はみるみる耳まで裂けた。大きく開いた口の中にはサメのような鋭いキバがびっしりと生えていた。フィンは土鉱物魔法で手甲と足甲を出現させると、右手の拳をフードの男の左頬にめり込ませた。だがフードの男はビクともせず、そのまま立ち尽くしていた。フィンはまるで巨大な岩を叩いたような衝撃を感じた。
フィンが殴った事により、男のフードが外れて顔があらわになった。だがその顔は人間のものではなかった。顔はつるりと丸くとがっていて、目は小さく横にあった。まるでサメ人間だ。フィンは驚きのあまりヒュッと息を飲んで言った。
「お前は人間なのか?」
「はい、私はれっきとした人間です。貴方の言うところの召喚士のなり損ないですよ。ですが私はある方から大いなる力を授かったのです。この力で私は霊獣たちに真の幸福を与えたいのです」
「霊獣の真の幸福だと?」
「ええ。貴方は学校で勉強したはずですよ?霊獣の真の幸福とは、人間に隷属する事です。人間と契約し、人間に奉仕する事が霊獣の真の幸福なのです。私はその手伝いをしているのです」
フィンはフードの男、改めサメ男の考え方にぼう然としてしまった。フィンこそサメ男に言いたかった。お前は召喚士養成学校で一体何を教わってきたのかと。
霊獣と精霊は、召喚を行った召喚士が可愛くてしょうがないのだ。自身と契約した召喚士を守りたくて、幸せにしたくて仕方ないのだ。フィンにはそれが、書物の中だけではなく、霊獣ブランと契約して肌で感じる事ができた。だからサメ男の言い分は全く的外れなのだ。だがサメ男は自分の考えが正しいと信じて疑わないのだ。
フィンがどうしたらよいか考えあぐねていると、リリーが叫んだ。
「フィン!フードの男から離れて!フレイヤ!捕縛火魔法!」
『ええ。わかったわ』
フィンの後ろにいたリリーとフレイヤがサメ男の前に出る。フィンは素早くその場から離れた。
リリーの指示に従い、フレイヤは強力な火魔法を発動した。炎はサメ男の周りを取り囲んだ。炎の輪はサメ男を拘束するかに思えた瞬間、サメ男の背中からコウモリのような翼が生えた。サメ男は上空に飛び上がった。
『逃すか!』
フレイヤは炎の向きを上に変え、サメ男を追いつめようとした。フレイヤの炎の火の粉が勢いよく周囲に飛び散った。リリーが叫ぶ。
「フレイヤ!火拘束魔法解除!森が火事になっちゃう」
リリーの言葉にフレイヤは火魔法を解除した。
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