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リリーのモヤモヤ
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リリーは自身の契約精霊のフレイヤと共に、日夜霊獣ハンターの情報を探していた。そして、元クラスメイトで、リリーの想い人でもあるフィンとも定期的に通信魔法具で連絡を取り合っていた。
リリーとフィンは、数度の霊獣ハンターとの交戦で、一つの手がかりをつかんだ。それは召喚士のなり損ないを、霊獣ハンターに勧誘する謎のフードの男の存在だ。フードの男は、召喚士になれなかった者たちの耳元でささやくのだ。霊獣に復讐したくはないかと。
霊獣たちを苦しめている全ての霊獣ハンターが、フードの男にそそのかされた者たちではないにしろ、まずはフードの男の手がかりを探す事にしたのだ。
そんな時、リリーの契約精霊フレイヤに霊獣ウルラから連絡が入った。ウルラとは、霊獣保護団体の代表ゴルの契約霊獣だ。ゴルからリリーとフィンに依頼が舞い込んだのだ。
リリーはフィンに定期連絡を入れた。すると、フィンは開口一番にこう言った。
「セミル?」
リリーは驚いて二の句がつけなかった。リリーはフィンに通信魔法具の手鏡を贈った。フィンが手鏡をどう使おうと勝手だが、フィンはリリー以外にも連絡を取る人間がいた事に少しショックを受けてしまったのだ。
フィンは、セミルという人物と、リリーを間違えた事に気づいてすぐに謝ってくれた。セミルとは誰だろう、名前からすると男性のようだ。リリーは心の動揺を悟られないように、つとめて冷静をよそおって応えた。
リリーとフレイヤは、ゴルから受けた新たな依頼をフィンとブランと受ける事にした。リリーたちは王都の冒険者協会の前に集まった。大きくなったブランの背中から降りたフィンは、少し会っていなかっただけなのに、たくましくなったように思えた。
リリーはフィンに気づかれないように、ブランにコソリと質問した。セミルとは誰かと。ブランはあっけらかんと、チンケな魔法使いと答えた。どうやらブランやリリーが心配するような人物ではないようだ。リリーはホッと息をついて安心した。
リリーがフィンに会ったのは、あの事があってから初めてだった。リリーとフィンのクラスメイト、グッチの死だ。リリーは何度もグッチの夢を見てうなされていた。フィンは大丈夫なのだろうか。フィンはグッチに殺されかけ、生死の境をさまよったのだ。
フィンは優しい笑顔でリリーに言った。
「リリー、ウルラとゴルさんから連絡があったね。依頼者の所に行こう」
リリーとフィンに依頼をした相手は、王都から三日かかるカシルの街にいるのだ。リリーはいつも遠出する時と同じように、辻馬車に乗ろうとした。だがフィンとブランに提案されたのだ。
大きくなったブランにフィンとリリーが乗って行けば、辻馬車を使うより早く行けると。リリーはフィンたちの意見に同意した。リリーの契約精霊のフレイヤは、リリーが目的地に着いてから召喚すれば移動できるため、ここでひとまず別れる事になった。
白猫の霊獣ブランは大きなライオンほどの大きさになった。フィンはブランの背にまたがると、リリーに手を差し出した。リリーをブランの背に乗せようとしてくれているのだ。
リリーは恥ずかしい気持ちを悟られないように、フィンの手を取った。するとリリーは強い力で持ち上げられ、ブランの背に乗せてもらった。ブランの背中は温かくフワフワして気持ちよかった。
リリーの耳元にフィンが声をかけた。
「リリー。ブランが早く走ると振り落とされてしまうから、僕が支えるね?」
フィンはリリーにそう断ると、リリーの腰に手を回したのだ。リリーは悲鳴をあげそうだった。フィンの左手が、リリーの腰を抱きしめたのだ。フィンは右手でブランの首かざりのくさりを握った。するとブランは風のような速さで走り出したのだ。
リリーは心の中でひたすら叫び続けていた。フィンのたくましい胸板に今自分は背中を密着させているのだ。フィンの温かさと、規則正しい心音が聞こえる。リリーはひたすら自身の高鳴る心音をフィンに悟られない事を願った。
いったいどのくらいの距離を走ったのだろうか、夕日は沈み辺りは暗くなった。フィンがリリーに言った。
「今日はここで野宿しよう」
リリーはやっとブランの背から降りる事ができた。リリーはよろよろとブランの背中から降りると、その場にくずおれた。そして鼻から鼻血がポタポタとたれてきた。それを見たフィンとブランは慌てて、リリーの心配をしてくれた。
リリーは召喚呪文の詠唱をして、自身の契約精霊のフレイヤを呼び出した。
フレイヤは自分の契約者が鼻血を出して倒れている事に驚いたが、リリーの鼻血の原因に思いいたったのかニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
リリーは自身の契約精霊をにらみながら言った。鼻血を止めてと。フレイヤは優しい笑顔になり、隠しの魔法を解いて、冷たい水の入ったポットと布を取り出した。そしてリリーの顔に水で冷やした布をかけ、リリーの鼻の上部をつまんだ。フレイヤが優しげな声で言った。
『大丈夫よリリー。これで鼻血は止まるわ?』
リリーはフレイヤにひざ枕をしてもらいながら力なくうなずいた。
リリーとフィンは、数度の霊獣ハンターとの交戦で、一つの手がかりをつかんだ。それは召喚士のなり損ないを、霊獣ハンターに勧誘する謎のフードの男の存在だ。フードの男は、召喚士になれなかった者たちの耳元でささやくのだ。霊獣に復讐したくはないかと。
霊獣たちを苦しめている全ての霊獣ハンターが、フードの男にそそのかされた者たちではないにしろ、まずはフードの男の手がかりを探す事にしたのだ。
そんな時、リリーの契約精霊フレイヤに霊獣ウルラから連絡が入った。ウルラとは、霊獣保護団体の代表ゴルの契約霊獣だ。ゴルからリリーとフィンに依頼が舞い込んだのだ。
リリーはフィンに定期連絡を入れた。すると、フィンは開口一番にこう言った。
「セミル?」
リリーは驚いて二の句がつけなかった。リリーはフィンに通信魔法具の手鏡を贈った。フィンが手鏡をどう使おうと勝手だが、フィンはリリー以外にも連絡を取る人間がいた事に少しショックを受けてしまったのだ。
フィンは、セミルという人物と、リリーを間違えた事に気づいてすぐに謝ってくれた。セミルとは誰だろう、名前からすると男性のようだ。リリーは心の動揺を悟られないように、つとめて冷静をよそおって応えた。
リリーとフレイヤは、ゴルから受けた新たな依頼をフィンとブランと受ける事にした。リリーたちは王都の冒険者協会の前に集まった。大きくなったブランの背中から降りたフィンは、少し会っていなかっただけなのに、たくましくなったように思えた。
リリーはフィンに気づかれないように、ブランにコソリと質問した。セミルとは誰かと。ブランはあっけらかんと、チンケな魔法使いと答えた。どうやらブランやリリーが心配するような人物ではないようだ。リリーはホッと息をついて安心した。
リリーがフィンに会ったのは、あの事があってから初めてだった。リリーとフィンのクラスメイト、グッチの死だ。リリーは何度もグッチの夢を見てうなされていた。フィンは大丈夫なのだろうか。フィンはグッチに殺されかけ、生死の境をさまよったのだ。
フィンは優しい笑顔でリリーに言った。
「リリー、ウルラとゴルさんから連絡があったね。依頼者の所に行こう」
リリーとフィンに依頼をした相手は、王都から三日かかるカシルの街にいるのだ。リリーはいつも遠出する時と同じように、辻馬車に乗ろうとした。だがフィンとブランに提案されたのだ。
大きくなったブランにフィンとリリーが乗って行けば、辻馬車を使うより早く行けると。リリーはフィンたちの意見に同意した。リリーの契約精霊のフレイヤは、リリーが目的地に着いてから召喚すれば移動できるため、ここでひとまず別れる事になった。
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リリーは恥ずかしい気持ちを悟られないように、フィンの手を取った。するとリリーは強い力で持ち上げられ、ブランの背に乗せてもらった。ブランの背中は温かくフワフワして気持ちよかった。
リリーの耳元にフィンが声をかけた。
「リリー。ブランが早く走ると振り落とされてしまうから、僕が支えるね?」
フィンはリリーにそう断ると、リリーの腰に手を回したのだ。リリーは悲鳴をあげそうだった。フィンの左手が、リリーの腰を抱きしめたのだ。フィンは右手でブランの首かざりのくさりを握った。するとブランは風のような速さで走り出したのだ。
リリーは心の中でひたすら叫び続けていた。フィンのたくましい胸板に今自分は背中を密着させているのだ。フィンの温かさと、規則正しい心音が聞こえる。リリーはひたすら自身の高鳴る心音をフィンに悟られない事を願った。
いったいどのくらいの距離を走ったのだろうか、夕日は沈み辺りは暗くなった。フィンがリリーに言った。
「今日はここで野宿しよう」
リリーはやっとブランの背から降りる事ができた。リリーはよろよろとブランの背中から降りると、その場にくずおれた。そして鼻から鼻血がポタポタとたれてきた。それを見たフィンとブランは慌てて、リリーの心配をしてくれた。
リリーは召喚呪文の詠唱をして、自身の契約精霊のフレイヤを呼び出した。
フレイヤは自分の契約者が鼻血を出して倒れている事に驚いたが、リリーの鼻血の原因に思いいたったのかニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
リリーは自身の契約精霊をにらみながら言った。鼻血を止めてと。フレイヤは優しい笑顔になり、隠しの魔法を解いて、冷たい水の入ったポットと布を取り出した。そしてリリーの顔に水で冷やした布をかけ、リリーの鼻の上部をつまんだ。フレイヤが優しげな声で言った。
『大丈夫よリリー。これで鼻血は止まるわ?』
リリーはフレイヤにひざ枕をしてもらいながら力なくうなずいた。
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