101 / 298
パンターとブラン
しおりを挟む
ブランは顔をあげて上を見ると、大声で泣き出した。いつもは大嫌いなバレットが来てくれて、心底安心したのだ。ブランは魔法具のペンダントで、隠していたフィンを出現させた。黒ヒョウのパンターは、フィンの横に立ち仔細にケガの状況を確認した。ブランは心から安どした。パンターは偉そうで嫌いだが、潜在魔力はブランのはるか上だ。きっとフィンを助けてくれるだろう。
だがパンターはブランをギロリとひとにらみした。そして風魔法でブランの首輪を破壊して言った。
『小娘!元の姿に戻れ!』
ブランはビクリと身体を震わせて、パンターの指示通りにした。一回転して、元の白猫の姿に戻る。パンターは変わらずブランをにらみながら厳しい声で言った。
『いいかブラン。フィンは非常に危険な状態だ。俺たちが少しでもミスをおかせばフィンは死ぬ』
ブランはヒュッと息を飲んでから、泣き出した。バレットとパンターが来てくれればフィンは間違いなく助かると信じていたのだ。だがパンターは、フィンが死んでしまうかもしれないと言っている。ブランがシクシク泣いていると、パンターからゲキが飛んだ。
『泣くな!泣いてフィンが助かるのか?!今はフィンの治療に集中しろ』
ブランは鼻をすすりながらうなずいた。パンターは厳しい顔でブランに言った。
『いいかブラン。一度しか言わん。俺はこれから、フィンの身体中に刺さった針を風魔法で粉砕する。そしてフィンの損傷した体内を治癒魔法で治す。ブラン、お前はフィンの身体の表面を治癒魔法で治せ。もし治癒魔法が遅くて大量出血すると、フィンは死ぬ。わかったな』
ブランはブルリと身体を震わせてからうなずいた。パンターの合図と共にフィンの身体中に刺さっていた針は瞬時に消えてしまう。その直後、フィンの身体から勢いよく血が吹き出した。ブランは渾身の魔力でフィンの傷口を塞いだ。パンターから激しい言葉が飛ぶ。
『ブラン!一か所に意識を集中するな!フィンの身体全体の修復を行うのだ!』
ブランは意識を集中した。このような大がかりな治癒魔法を発動させたのは初めてだった。心臓がバクバクと高鳴り、頭はズキズキと痛かった。もしこの治癒魔法が失敗すれば、フィンが死んでしまうのだ。ブランはあふれ出しそうな涙を必死にこらえた。今泣いてもなんの解決にもならない。ブランは歯を食いしばりながら治癒魔法を発動し続けた。
どれだけ時間が経っただろうか。ブランには途方もない長い時間に感じられた。パンターが詰めていた息をゆっくりと吐き出した。そして初めて聞くような柔らかな声で言った。
『ブラン、治癒魔法を止めろ。治療は完了した』
ブランはハッとしてフィンの顔にすり寄ると、フィンの名を何度も呼んだ。
『フィン!フィン!目を開けて!』
『無理だ、血が抜けすぎてる。しばらくすれば目を覚ますだろう』
パンターの言葉にブランは緊張の糸が切れてしまった。ブランは、フィンの名を呼び続けながら泣きじゃくった。パンターはため息をついて言った。
『お前たちに防御魔法を張る。バレットが魔物を倒すまでそこにいろ』
パンターは、ブランとフィンの周りに風防御魔法を張ってくれた。そして自身の契約者の所まで行ってしまった。ブランは防御魔法の中から、バレットとグッチを見た。そうなのだ、フィンが助かってもグッチを倒さなければブランたちは完全に助かったとはいえないのだ。
だがパンターはブランをギロリとひとにらみした。そして風魔法でブランの首輪を破壊して言った。
『小娘!元の姿に戻れ!』
ブランはビクリと身体を震わせて、パンターの指示通りにした。一回転して、元の白猫の姿に戻る。パンターは変わらずブランをにらみながら厳しい声で言った。
『いいかブラン。フィンは非常に危険な状態だ。俺たちが少しでもミスをおかせばフィンは死ぬ』
ブランはヒュッと息を飲んでから、泣き出した。バレットとパンターが来てくれればフィンは間違いなく助かると信じていたのだ。だがパンターは、フィンが死んでしまうかもしれないと言っている。ブランがシクシク泣いていると、パンターからゲキが飛んだ。
『泣くな!泣いてフィンが助かるのか?!今はフィンの治療に集中しろ』
ブランは鼻をすすりながらうなずいた。パンターは厳しい顔でブランに言った。
『いいかブラン。一度しか言わん。俺はこれから、フィンの身体中に刺さった針を風魔法で粉砕する。そしてフィンの損傷した体内を治癒魔法で治す。ブラン、お前はフィンの身体の表面を治癒魔法で治せ。もし治癒魔法が遅くて大量出血すると、フィンは死ぬ。わかったな』
ブランはブルリと身体を震わせてからうなずいた。パンターの合図と共にフィンの身体中に刺さっていた針は瞬時に消えてしまう。その直後、フィンの身体から勢いよく血が吹き出した。ブランは渾身の魔力でフィンの傷口を塞いだ。パンターから激しい言葉が飛ぶ。
『ブラン!一か所に意識を集中するな!フィンの身体全体の修復を行うのだ!』
ブランは意識を集中した。このような大がかりな治癒魔法を発動させたのは初めてだった。心臓がバクバクと高鳴り、頭はズキズキと痛かった。もしこの治癒魔法が失敗すれば、フィンが死んでしまうのだ。ブランはあふれ出しそうな涙を必死にこらえた。今泣いてもなんの解決にもならない。ブランは歯を食いしばりながら治癒魔法を発動し続けた。
どれだけ時間が経っただろうか。ブランには途方もない長い時間に感じられた。パンターが詰めていた息をゆっくりと吐き出した。そして初めて聞くような柔らかな声で言った。
『ブラン、治癒魔法を止めろ。治療は完了した』
ブランはハッとしてフィンの顔にすり寄ると、フィンの名を何度も呼んだ。
『フィン!フィン!目を開けて!』
『無理だ、血が抜けすぎてる。しばらくすれば目を覚ますだろう』
パンターの言葉にブランは緊張の糸が切れてしまった。ブランは、フィンの名を呼び続けながら泣きじゃくった。パンターはため息をついて言った。
『お前たちに防御魔法を張る。バレットが魔物を倒すまでそこにいろ』
パンターは、ブランとフィンの周りに風防御魔法を張ってくれた。そして自身の契約者の所まで行ってしまった。ブランは防御魔法の中から、バレットとグッチを見た。そうなのだ、フィンが助かってもグッチを倒さなければブランたちは完全に助かったとはいえないのだ。
0
お気に入りに追加
771
あなたにおすすめの小説
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる