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パンターとブラン

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 ブランは顔をあげて上を見ると、大声で泣き出した。いつもは大嫌いなバレットが来てくれて、心底安心したのだ。ブランは魔法具のペンダントで、隠していたフィンを出現させた。黒ヒョウのパンターは、フィンの横に立ち仔細にケガの状況を確認した。ブランは心から安どした。パンターは偉そうで嫌いだが、潜在魔力はブランのはるか上だ。きっとフィンを助けてくれるだろう。

 だがパンターはブランをギロリとひとにらみした。そして風魔法でブランの首輪を破壊して言った。

『小娘!元の姿に戻れ!』

 ブランはビクリと身体を震わせて、パンターの指示通りにした。一回転して、元の白猫の姿に戻る。パンターは変わらずブランをにらみながら厳しい声で言った。

『いいかブラン。フィンは非常に危険な状態だ。俺たちが少しでもミスをおかせばフィンは死ぬ』

 ブランはヒュッと息を飲んでから、泣き出した。バレットとパンターが来てくれればフィンは間違いなく助かると信じていたのだ。だがパンターは、フィンが死んでしまうかもしれないと言っている。ブランがシクシク泣いていると、パンターからゲキが飛んだ。

『泣くな!泣いてフィンが助かるのか?!今はフィンの治療に集中しろ』

 ブランは鼻をすすりながらうなずいた。パンターは厳しい顔でブランに言った。

『いいかブラン。一度しか言わん。俺はこれから、フィンの身体中に刺さった針を風魔法で粉砕する。そしてフィンの損傷した体内を治癒魔法で治す。ブラン、お前はフィンの身体の表面を治癒魔法で治せ。もし治癒魔法が遅くて大量出血すると、フィンは死ぬ。わかったな』

 ブランはブルリと身体を震わせてからうなずいた。パンターの合図と共にフィンの身体中に刺さっていた針は瞬時に消えてしまう。その直後、フィンの身体から勢いよく血が吹き出した。ブランは渾身の魔力でフィンの傷口を塞いだ。パンターから激しい言葉が飛ぶ。

『ブラン!一か所に意識を集中するな!フィンの身体全体の修復を行うのだ!』

 ブランは意識を集中した。このような大がかりな治癒魔法を発動させたのは初めてだった。心臓がバクバクと高鳴り、頭はズキズキと痛かった。もしこの治癒魔法が失敗すれば、フィンが死んでしまうのだ。ブランはあふれ出しそうな涙を必死にこらえた。今泣いてもなんの解決にもならない。ブランは歯を食いしばりながら治癒魔法を発動し続けた。

 どれだけ時間が経っただろうか。ブランには途方もない長い時間に感じられた。パンターが詰めていた息をゆっくりと吐き出した。そして初めて聞くような柔らかな声で言った。

『ブラン、治癒魔法を止めろ。治療は完了した』

 ブランはハッとしてフィンの顔にすり寄ると、フィンの名を何度も呼んだ。

『フィン!フィン!目を開けて!』
『無理だ、血が抜けすぎてる。しばらくすれば目を覚ますだろう』

 パンターの言葉にブランは緊張の糸が切れてしまった。ブランは、フィンの名を呼び続けながら泣きじゃくった。パンターはため息をついて言った。

『お前たちに防御魔法を張る。バレットが魔物を倒すまでそこにいろ』

 パンターは、ブランとフィンの周りに風防御魔法を張ってくれた。そして自身の契約者の所まで行ってしまった。ブランは防御魔法の中から、バレットとグッチを見た。そうなのだ、フィンが助かってもグッチを倒さなければブランたちは完全に助かったとはいえないのだ。

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