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フレイヤ潜入

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 フレイヤは霊獣ハンターたちにどやされながら古ぼけた廃墟のような所に連れてこられた。廃墟のようなドアが開いて、人相の悪い男が出てきて言った。

「おお、精霊を捕まえたのか?へぇ、綺麗じゃねぇか」

 廃墟から出てきた男はフレイヤを見て好色な笑みを浮かべてフレイヤに触れようとした。フレイヤは嫌悪で背筋が寒くなった。だがフレイヤを連れてきた霊獣ハンターがその男の手をさえぎって言った。

「止めろ。こいつは大事な商品だぞ」

 フレイヤに触ろうとした男は、チッと舌打ちしてから手を戻した。フレイヤはホッと息をついた。もしこのいやらしい男に触られたら、思わず魔法具の指輪の魔法を発動してしまいそうだったからだ。

 フレイヤは霊獣を閉じ込めておく部屋に連れて行かれた。そこには三頭の霊獣と、鳥かごが置いてあった。霊獣たちは皆、フレイヤと同じ首に魔法具の首輪をしていた。この魔法具をしていては、彼らの魔法は発動できないだろう。フレイヤが部屋の隅のイスに腰かけると、霊獣ハンターの男が部屋のカギをしめて出て行った。

 フレイヤは、男が完全に立ち去ったのを見計らってから霊獣たちに声をかけた。

『皆聞いて、私はフレイヤ。あなたたちを助けにきたの』

 それまでフレイヤが入ってきても何の変化も見せなかった霊獣たちが顔をあげた。犬の霊獣がフレイヤに言った。

『助けに来たっていったって、君は人間の魔法具をしているじゃないか』

 つまりフレイヤが自分たちを助ける事はできないと言っているのだ。フレイヤは力強い声で言った。

『大丈夫。私には契約者と仲間がいるの。もうすぐ私たちを助けに来てくれるわ』

 フレイヤの言葉に霊獣たちは一斉に顔をあげた。ガゼルの霊獣が言った。

『じゃわ私たち助かるの?』
『ええ。皆契約者の所に帰れるわ』

 ガゼルの霊獣が叫ぶように言った。

『またエリスに会えるの?!嬉しい!』

 それを聞いたアナグマの霊獣も喜んだ。

『ボク早くローラに会いたい!』

 フレイヤはうなずいて言った。

『ええ、皆で逃げましょう。ここにいる霊獣たちはあなたたちだけなの?』

 その場にいる霊獣たちは皆うなずいた。フレイヤもうなずいてから、黙って一言も発しない鳥かごに話しかけた。

『あなたリナリアね?』

 そこで初めて鳥かごのカナリヤが初めて口を開いた。

『何で私の名前を知ってるの?!』
『ライラに頼まれたの。あなたを助けてって』
『ライラ!あの子は大丈夫?!』
『ええ、無事よ?だけどあなたにとても会いたがっていたわ』
『ライラ、私もあの子に会いたい』
『ええ、帰りましょう。ライラの所に』

 リナリアは鳥かごからフレイヤを見上げてからシクシクと泣きだした。フレイヤはリナリアが落ち着いてから質問をした。

『ねぇリナリア。霊獣ハンターたちはあなたたちを金持ちに売ろうとしているようだけれど、売られた霊獣たちはいるの?』

 リナリアはいいえと答えた。霊獣ハンターたちは、リナリアたち捕らえた霊獣に、契約者との契約を解除しろと要求してきたのだ。金持ちの中には霊獣と契約したがる者もいるため、霊獣と召喚士の契約解除が不可欠なのだ。勿論リナリアたちは抵抗している。そのためリナリアたちを金持ちに売る事ができずにいるらしい。リナリアたちが契約解除に抵抗してくれていたから救出が間に合ったのだ。

 リナリアはフレイヤにポツリポツリと話をしだした。その内容は、すべて契約者のライラの事ばかりだった。ライラは臆病でさみしがり屋だけどとっても優しいの、と。フレイヤは、霊獣ハンターを締め上げて怒鳴り散らしているライラを思い出していた。とてもリナリアの言う臆病な性格だとは思えなかったが、その事は黙っていた。

 霊獣たちは自分たちが助かるかもしれないと思ってか、少しずつ会話をし出していた。フレイヤは心に誓った。必ずここにいる霊獣たちを救出し、契約者の元に帰すと。

 
 

 


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